第38話 サーチアイ再び
ルナを起こさないように部屋を出た俺達は。
一階の客室へと向かうために、廊下を歩いていた。
俺の後を着いて来ているリアは、眠そうな顔をしていた。
「わるいな、リア……俺達の会話で寝れなかったんだよな」
《ごめんね》
「いえ、だいじょうぶです。それより……おはなしを聞かせてください」
『私も、ちゃんと説明を聞きたいです』
『あぁ、わかってる』
他の人達を起こさにようにして、廊下をゆっくりと歩いていたら。
アリスの部屋から、誰かの声が漏れ聞こえてきた――
「あ……あぅ……あん……」
「え……?」
何だ今の声……
《どうしたの? 蔵人》
名前を呼ばれたが、俺は声の事が気になってしまって。
アリスの部屋の方へと向かう――
明かりが漏れてる……
扉が閉まりきってないのか……
「そぅ……そこ……ふぁっ……」
おいおい、これはもしかしてあれか……
「ここ? ここがいいの? エレン」
「ふぁっ……あっ……はぁっ……んぅ……」
まさかのアリス×エレンさんだと……
これは…キマシ……
俺はそっと、ドアの隙間から部屋の中を覗き込んだ。
そこには――
「ひぁっ……あっ……あんっ……やっ……」
「ぁあ……きちゃう……すごいぃ……んんっ……」
「結構こっているわねぇ……あと変な声だしすぎよ、エレン」
「はぁ……はぁ……ごめんなさぃ……」
エレンさんがベッドの上に寝ていて。
アリスが、エレンさんをマッサージしていた。
俺はそっと、アリスの部屋の前から離れた――
「クロさま?」
『クロード様……』
部屋の中を見えなかったリアは、不思議そうな顔をしていて。
ソフィアは呆れたように、俺の名前を呼んだ。
《覗きはよくないよ、蔵人》
「くっ……」
確かに覗きはよくないが、男なら見るだろ。
内容はがっかりパターンだったが……
というかエレンさん、声エロすぎだろ……
声だけ聞くと、完全に勘違いするわ!
俺はがっかりとした気持ちになりながら、一階へと降りていった――
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「クロさまの……」
『クロード様の……前世の御方ですか……』
「直前の前世……じゃないみたいだがな」
客室に来た俺達は、俺の中にいる黒斗の説明をしていた。
『そんな事は……いえ、クロード様の御力なら、そんな事も出来るのでしょうかね』
「俺だけじゃなく、ルナの力も関わっているらしい」
『それは、どういう事なのでしょうか?』
「黒斗が死ぬ前に、自分の力をルナに渡したらしい。そして……俺に眠っていた力と、ルナの力が混ざり合って生まれたそうだ」
『そんな事が、あったのですね……』
「だから、辛いことだが……ルナには言えないんだ……」
そんな話を聞いていたリアが……
「でも……ルナさまが……かわいそうです……」
《…………》
「黒斗の存在を、確認できない……ルナに伝えてもな……」
《うん……逢えないから……もっと悲しませてしまう》
「そう……ですか……」
俺も、伝えられるなら伝えたいが……
下手をすれば、俺の存在を否定される可能性もあるしな。
ルナが最初から、俺に好意を持ってたのは……
俺と、黒斗を重ねていたからなんだろうな……姿も声も一緒だし。
『私も、何も感じられませんでしたからね』
《それ、不思議なんだけど……同じ場所にいて、何で僕を感じられないんだろう》
《わからんが……ソフィアはまだ神として未熟だとか……そんな事を言ってたから、そのせいじゃないのか?》
《それはおかしいよ……いくら未熟だと言っても、相手は神さまなんだよ?》
「かみさま……」
確かに、人間の尺度で測れる存在ではないが……
リアも、ソフィアの声が聴こえていないみたいだし。
《だがその理屈なら、ルナにもお前の声が聴こえるはずなんだが……》
《ルナにも?》
《あぁ。ルナが言うには、俺と魂が繋がっているから……心なかで、俺達と会話できるとか言ってたぞ》
《魂……よくわからないけど、後から生まれた僕とは波長が合わないとか……》
《波長ねぇ……》
《ごめん、理由は本当にわからないや……》
俺も、魔王と神王の力の違いとか知らないしな。
《まぁとにかく……俺の中にいると、ソフィアは力が使えないみたいな事を言ってたし……俺の力のせいなのかもしれないな……》
《君の力のせい?》
《あぁ。たしか称号にも、そんな事を書いてた気がする》
《何の称号なのかな? それは》
俺は、この世界にきて創った魔法で。
自分のステータスを見た時の事を、黒斗に説明した――
《それ……完全に君のせいだよ……》
《え……?》
《よく考えてみてよ……神王をその身に封印せし者……だよ。字面から、思いっきり君が封印してるじゃないか……》
マジでか……
言われてみれば、確かにそんな字面だが。
ぐぬぅ……自分で気づかないとは間抜け過ぎる……
《封印じゃなく、その身に宿し者なら……君のせいじゃなかったよね》
《た……たしかに……》
《もしかしたら……俺が願えば、ソフィアはすぐに開放できるのか?》
《やってみる価値は、あると思うよ》
俺は、ソフィアを外に出す事を願ってみる――
この願いの魔法は、俺が願うとその形が頭の中に描かれてくる。
「だめだな……魔法が発動する気配すらない……」
《そっか……》
『クロード様?』
「ソフィア様ごめんなさい……」
俺はソフィアに、二度目の土下座をした。
『え? クロード様?』
「ごめんなさい、どうやらソフィア様が出られないのは……俺のせいみたいなんです……」
『クロード様、まずは説明をお願いします。それと、そのような行為はなさらないでください』
俺は黒斗と話し合った結果を、ソフィアに説明した。
『そういう事なのですね……』
「はい……そういう事みたいでした……」
『大丈夫です。クロード様なら、いつか出してくれると信じております』
「それは必ず叶える、俺も外で逢いたいからな……愛してるぞ、ソフィア」
『私もです……クロード様』
「ほぁぁ……」
俺達は二人の世界を作っていた。
リアが、俺達の愛の熱気にあてられていた。
俺の言葉しか聞こえてないから、俺のセリフにだが。
《前から気になってたけど、君って……この神さまのこと、すごく好きだね》
《当たり前だ、愛しているからな》
《ルナと……アリスさんとエレンさんは?》
《そりゃ勿論好きだが……》
《結構態度が……違う気がするんだよね……神さまの時だけ、やけにストレートになってるよ》
言われてみればそうだな……
アリスとエレンさんの好意には、いまだに照れるが。
ソフィアだけは、俺の方から愛を囁いている……
なぜだろうか……一目惚れというやつなのか?
ルナのことも好きだが……愛を囁いたことはないよな。
「クロさま……わたしのことは、すきですか?」
これはどう言えばいいんだ……
出会ったばかりの少女に、お前の事も好きだとか。
完全に見境なしの、ロリコン野郎になっちまうよな……
「リア……」
「はい」
「俺は……こういうのは……仲良くなってから……進展させるべきだと思うんだ」
「わかりました、クロさまにすきになってもらえるように。わたし……がんばります」
「そ、そうか……がんばれ」
「はい……がんばります」
《うまく、かわしたね》
《小さい女の子には、男は紳士であるべきだ》
《竜人だから……見た目通りの年齢とは、違うかもしれないけどね》
確かに、人間とは違うかもしれないが。
だが俺は、見境無しな獣ではない……と思う。
出会った初日に、こんな話になるとは思わなかったが。
そういえば――
「今さらなんだが、リアはなぜ黒斗の声が聴こえるんだ?」
「わかりません……」
《何か、特殊な能力を持っているのかな》
特殊能力か……
竜人が希少種すぎて、本などにも全然載ってなかったし。
サッパリわからん。
《蔵人、調べてみたら?》
《どうやってだ?》
《相手のステータスを見る魔法は、覚えてないの?》
《それは……試したことがあるんだが……》
《見えなかったの?》
《あ……あぁ……》
《何だか歯切れが悪いね……ちなみに僕は、サーチアイって魔法だったけど》
なんだと……
それは俺も試したが……全然違うものが見えたんだよな。
まさか、あんなものが見えるとは思わなかった……
ソフィアが言ってたように、俺の邪な気持ちのせいなのか?
それとも、魔力が足りなかったからなのか……
「試してみるか……リア、ちょっと俺の魔法で……お前の事を見せてもらいたい」
「はい、クロさまには……みられてもいいです」
返事が微妙に引っかかったが、俺は魔法を使うことにした――
やっぱり……
思い浮かぶのはこの魔法なんだな……
「サーチアイ・クリエイト」
《な……》
「う……」
『クロード……様また……』
俺は、リアに向けていた視線をすぐに逸らした。
うん、やっぱり服がスケスケになった……
しかも、リアは下着を着ていなかった――
《蔵人……何をしてるの……》
「いや……その……な……俺がコレを唱えると……なぜか……こんな効果になるんだ……」
《なんでだよ……》
それは俺が聞きたい……
『何故、こんなことを?』
「あぁ。リアが何故、黒斗の声が聴こえるのか調べようとな。相手のステータスを見る魔法を、黒斗に教えられたんだが……それがやっぱり、この魔法だったんだ……他意は無い……」
『そうなのですか……』
紳士振ってはみたが、やはり俺はそんな人間なのだろうか……
この後も、ソフィアとリアに黒斗の事を話して。
できるだけ配慮して貰うことにした。
結局リアの事は、わからなかった――




