第37話 密談
「なぜ……俺の部屋で一緒に寝るんだ?」
夜も更けて、そろそろ寝ようとしたら。
ルナがリアを連れて来て、一緒にベッドに入ってこようとした――
「ワタシの配下だから当然だ」
「えと……よろしくおねがいします」
何が当然でよろしくなのかわからないが……
「エレンさんか、アリスの所で寝るんじゃなかったのか?」
「クロさまのところがいいです……」
ルナはリアを洗脳でもしたんだろうか……
『クロード様は……何もしませんよね』
《僕は……信じているよ》
何もしねぇよ!
もうロリコン総論は聞き飽きた……
「はぁ……リアがそれでいいのなら、さっさと寝るぞ」
「ん……」
「はい」
ルナとリアが、俺を挟んでベッドに潜り込んでくる。
「あれ? リア、尻尾はどうしたんだ?」
リアの背中を見たら、誇張していた太い尻尾が消えていた。
「しっぽは、まほうで消せます」
「消せるのかよ!?」
『便利ですねぇ……』
《それは、すごいね》
何かこのセリフ、ソフィアに向けても思った気がするぞ。
「人間にみえるようにと、おかあさんが教えてくれました」
「何で、今まで消してなかったんだ?」
「くびわをつけられてから、まほうが使えませんでした」
「そうか……」
オッサン達もそんな事を言ってた気がするな……
あっちは手錠だったが――
「クロ……おやすみ」
「おやすみなさい、クロさま」
「おやすみなさいませ、クロード様」
「あぁ、おやすみ」
《おやすみ、蔵人》
《お前はちょっと待て》
《え? 何?》
《話すことがある》
俺は目を瞑ったまま、黒斗と会話を始めた――
《話……?》
《あぁ。旅のことだ》
《旅のこと……?》
《正確には、俺の魔法を含めた旅のことだな》
冒険者ギルドに登録したが、全然冒険には出なかったからな。
街の付近で、アリスと祭壇巡りなどはしていたが。
どれもその日の内に、戻って来ることが出来る場所だった。
《黒斗は俺からしたら、先輩みたいなもんだからな。旅での……この魔法の注意とか、いろいろ聞きたい》
《旅での魔法の注意……そうだねぇ……異世界人が最も苦労するのは、多分食べ物かな》
《食い物……?》
《この世界のことはよくわからないけど。旅で持って行く食べ物は基本、干し肉みたいな食べ物とか……まず腐りにくい物中心だと思う、それに水の確保も重要だよね》
《確かに、そうだよな》
《入れていると食べ物が腐らない、魔法のカバンとかあれば別だけどね》
《そんなもの無いみたいだな、魔力で容量が増えるカバンはあったが》
《僕が居た異世界でも、似たようなものはあったね。願いの魔法で、冷蔵庫みたいなカバンを創った事もあるけど……》
《あぁ、俺も創ったなそれは》
《腐っちゃうんだよね……》
そう。確かに冷えたり、腐りにくくなったりはしたが。
いつまでもカバンに入れていると、腐っていた。
《カバンの中の、時を止められればいいんだが……》
《僕にもできなかったね……それは》
何でも出来るように見えて、便利な魔法なんだが。
結構出来ないことも多い、俺の願いが足りないのかもしれないが……
《ルナに願えばできると言われて、試してはみたんだが……時間を止めるカバンはできなかったな》
《それは僕のせいかもしれない……ルナに……願えば何でもできる魔法だって、言っちゃた事があるしね》
《そうか……》
《僕も……願えば全てかなうと教えられたけど……僕の力が足りなかったのか、できないことも多かったよ》
俺の考えと同じか……
《そういえば……お前は誰に、この魔法を教えられたんだ?》
《僕は、神さまに教えられたよ》
神様か……
ソフィアが言ってたような、創造神とかその辺りなのかな。
《食べ物を、創ったことはある?》
《いや、ないな》
この世界に来た時は運に恵まれていて、ギルさんのお世話になってたし。
食べ物に困ることはなかった。
《僕はやったことがあるけど、あまりお勧めできないね》
《何か問題があったのか?》
《味も普通に感じたし、食べる事はできたのだけど……お腹壊しちゃったんだよね》
《それは嫌だな……》
食あたりにでもなったのだろうか……
《水魔法は普通に飲めたよ。ただし、攻撃系水魔法はダメだね》
《違いがわからないぞ……》
《蔵人に分かりやすく説明すると、この世界で飲んだ水をイメージかな……そうすれば、ちゃんと飲める水が創造できると思う》
《なるほどな……》
《多分だけど……己の分を超える力は、それなりの対価が必要なんだと思う》
《それなりの対価?》
《そう……僕がルナに力を分け与えるのに、僕の生命を使ったようにね……》
《そうか……》
神の如き力を使うには、それ相応の対価を消費する……
強くなる為とはいえ、俺も気をつけないとな。
「あの……クロさま……」
「うん……?」
黒斗とずっと話をしていると、リアが俺に話しかけてきた。
「ずっと……だれとお話しているのですか……?」
「な……」
《え? 僕の声が聞こえるの?》
「はい……きこえます」
なんだとう……
《おい黒斗、どういう事だ》
《僕に聞かれてもわからないよ》
《お前の声は、俺にしか聞こえないんじゃなかったのか》
《僕もそう思っていたのだけど……》
「あの……?」
「あぁ、すまん……どう言えばいいのだろうか……」
『クロード様、どうかなされましたか?』
やばいな、ソフィアまで起きてしまった……
ルナはぐっすり寝ているようだが、あまり騒ぐと起きてしまう。
《黒斗、どうするんだこれ……》
《落ち着いて、ルナが起きて僕の存在がバレるとまずいから》
確かにどう説明すればいいのか、わからないよな。
「悪いが……ここでは説明することができないんだ……」
「そうですか……」
『ソフィア。ルナと少し離れれば、会話をルナに聞かれなようにできるか?』
『できると思います。クロード様がお風呂に入っている時、私とクロード様の会話は……ルナには聴こえていないみたいでしたから』
『そうか。風呂場での愛の語り合いを、ルナが知らなかったのはそれか』
《そんな場所で何をしているの……君たちは》
別に変な事はしていないぞ。
湯に浸かりながら、ソフィアを口説いていただけだ。
黒斗が出てくるようになってから、全然口説けなくなったがな。
「なら、ルナを起こさないように一階の客室に行こう。そこで、できる限りの説明をする」
「はい」
俺とリアはベッドから出て、部屋の外へと向かった――




