第34話 ◯◯奴隷
朝食を終え、部屋で旅の準備を色々していた時。
エレンさんが部屋にやってきて、俺に頼み事をしてきた――
「子供の奴隷が……ですか?」
「はい、子供の奴隷です」
エレンさんの頼み事は。
貴族の家に囚われている、奴隷の救出の手伝いだった。
「でも、この世界では奴隷が存在しているのは普通の事ですよね?」
「そうなのですが……この国では、愛玩用奴隷を取り扱うことは禁止されています」
愛玩……
そっち系も居るのか。
愛玩用の子供奴隷か……胸糞悪いな。
「救出と言われても……どうするのですか? まさか貴族の家に襲撃とか?」
「いえ。私達はギルバートさんの補佐として、その貴族の家に同行します」
「補佐……」
「そうです、ギルバートさんがその貴族とお会いになっている時は……私たちは部屋の外で待たされる事になるので、その時に行動を起こします」
「なるほど……」
ギルさんが時間を稼いでる間に……
俺とエレンさんが別行動をして、奴隷を救出するのか。
しかし、そんなに自由に動けるものなんだろうか……
相手は貴族の家だ、警備も厳重だろうしな。
『クロード様、手伝ってあげてください』
《うん、僕からもお願い》
わかってる、断るつもりなんかない。
何も、今すぐ旅に出るわけでもないしな。
「お手伝いして、頂けませんか?」
「いえ、俺で良ければ手伝いますよ」
「ありがとうございます」
エレンさんがお礼を言いながら、俺の手を優しく握ってきた。
やばい……エレンさんの笑顔が眩しすぎて照れる。
「それでは、ギルバートさんの所へ行きましょう」
「は、はい……」
俺は何故かエレンさんに手を繋がれたまま、一階まで降りていった。
『む……』
《あは、これからデートに行くみたいに見えるね》
そんな事言うなよ恥ずかしい……
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「クロード……エレンと……何をしているのかしら?」
「むぅ……」
一階に降りてきた俺達は、 客間のソファに座っていたアリスに呼び止められた。
ルナも、うなりながらこっちを見ている――
「いや……これは……」
「これから……クロードさんと、デートに行ってきますね」
俺が、手を繋がれている状況の言い訳を考えていると。
エレンさんが笑顔でそんな事を宣言した――
「デートですって!?」
「にゃんだと!」
アリスが怖いくらい睨んでいるんだが……
あとルナ……噛んだのか?
《ルナ……かわいい……》
お前は……
いやまぁ……たしかに可愛かったが。
「嘘ですよ。これからクロードさんに、お仕事を手伝って貰うのです」
「仕事……?」
「ワタシもいく……」
「ごめんなさいルナさん。クロードさんの他には、連れて行くことが出来ないので」
「ルナ、アリスと一緒に留守番を頼む」
「むぅ……わかった」
仕事内容だけに、ルナを連れて行きたくないしな。
ルナには渋々納得してもらった――
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貴族の家の前で、ギルさんが待っていた。
「おう坊主、すまないな」
「いえ、大丈夫です」
俺達はこれ以上の会話を切り上げた。
ギルさんの横に、案内人の執事らしき人が居たからだ。
「では……ご案内いたします」
「おう、頼む」
案内人の執事に従って、俺達は屋敷の中へ入って行った。
「失礼致します、旦那様……ギルバート・バーンシュタイン様をお連れしました」
「入れ……」
執事が屋敷の主人の部屋の扉をノックし、ギルさんを通す。
「お連れの方は、こちらでお待ちください」
執事がそう言って、ギルさんと一緒に部屋の中へ入って行った。
「それで……これからどうするんです?」
「はい、この屋敷の地下の方へ行きます」
「場所はわかるんですか?」
「下調べは済んでいますので」
《準備いいね》
そうだな。
「何から何まで、準備がいいですね」
「内通の方が、いらっしゃったので」
「内通者ですか?」
「はい、この屋敷のメイドの方です」
「なるほど……」
しかし、どうやってそこまで行くのだろうか。
ここに来るまでも人が結構居たが……
「クロードさん、どこでもいいので私に触って下さい」
「へ……?」
『え……?』
「姿を隠す魔法を使うので、私に触れていれば……クロードさんの姿も、他人からは見えなくなります」
『そうですか……』
なるほどそういう事か。
妙なことを考えて一瞬焦った……
ソフィアも納得したようだ。
なら、エレンさんの手を握らせてもらおう。
さっきも握ってたしな、抵抗がない。
「ハイドミラージュ」
手を握ったエレンさんが魔法を唱えた。
「では、行きましょう」
「はい」
魔法で隠れているとはいえ、自分の姿は見えるから……
人が傍を通るとすごくドキドキするな……
別に、エレンさんの手を握っているからじゃないぞ。
誰に言い訳しているんだろうか……俺。
一人思考に入りながらエレンさんに従い。一階の奥の倉庫みたいな場所にある、地下への階段を降りていった。
異臭が凄いな……
それに、牢屋を見ると嫌な思い出が浮かび上がる。
見張りが居ないな……
盗賊のアジトの時も思ったが……
この世界の牢屋ってのは、見張りが居ないのがデフォなのか?
しばらく牢屋を見ながら考えていたら。
「クロードさん……私は奥を見てきますので、あちらの方の救出をお願いします」
「わかりました」
人が入っていた牢屋を指差して。
エレンさんは奥へと向かっていった。
くそ、鍵がかかっているな……
「クリエイト」
俺は魔法で鍵開けツールを創り出す。
魔法を鍛えたおかげで、頭の中での考えと。
この言葉だけで、だいたいの物が出せるようになった。
ちゃんと言葉にしたほうが、いい物が創れるけどな。
中々開かないな……
『開きませんね……』
ソフィアの声を聞きながら、カギをカチャカチャやっていると黒斗が……
《ねえ……なんでピッキングなの……?》
《あん? 鍵を開けるならこれだろ》
《カギを創り出せばいいじゃない》
《どんなカギなのか、わからないじゃないか》
《鍵穴を見ながら、想像すればできるよ》
《マジでか……》
俺はさっそくやってみる
「キー・クリエイト」
カギを出して鍵穴を回してみたが。
ガキンと引っかかって開かなかった――
《ダメじゃねぇか……》
《想像力が足りないんだよ》
なんだとう……
むぅん――
別の言葉が浮かび上がってきた。
「これか……」
俺は、その言葉を口に出す――
「マスターキー・クリエイト」
今度は、ガチャっと回って鍵が開いた。
「よし……」
俺は中に入り、手錠や足枷をされている人を助けた。
「いや~助かったぜ~、ありがとな兄ちゃん」
助けた人から礼を言われる。
それはまぁいいんだがな。
これはどういう事なんだ……
別にさ、囚われの美少女とか期待してたわけじゃないが……
いや、ホントだぞ? ホントに期待していなかったぞ?
子供奴隷だって聞いたからさ……
そっち想像するじゃん?
いや、こんな所でそんな扱いをされてる子供なんて……
俺もさ、見たくないけどさ。
でもな……
なんでオッサンなの……?
「あ~自由はいいな~、ほんとありがとな兄ちゃん」
そう、子供奴隷を助けに来た俺は。
なぜか四十くらいの中年のオッサンを助けていた――
「兄ちゃん兄ちゃん、他の奴らも助けてくれ」
「あ、はい……わかりました」
俺はオッサンに言われて、周りの牢屋に入っている他の人達も助けた。
「あぁ。助かったよ坊や」
「や~。ありがとう少年」
「ふん…礼を言うぞ小僧」
ねぇ? なんでみんなオッサンなの?
子供奴隷を助けに来たんだよね? 俺。
エレンさんにお願いされて、子供奴隷の救出に来た俺は。
目的地で次々と囚われていた人達を助けていった。
その全てが、何故か全員オッサンだった……
『元気な方達ですねぇ』
《これは、予想外だったよね》
予想外すぎるわ!――




