第32話 生まれてきた意味
時刻は深夜――
皆が寝静まった頃……
「っ……ルナ……うっ……」
「クロ……はぁ……はぁ……ん……ちゅ……」
ルナが、恍惚の表情をしながら俺に抱きついてくる。
吐息は甘く……その声は、魅力的な色気が混じっている――
「ルナ……っ……もう少し……ゆっくり……頼む……」
「クロ……クロ……ちゅ……ん……はぁ……」
「ちょ……ルナ……激しい……うっ……」
俺は、ルナを何とか落ち着かせようとするが。
ルナは我を忘れ、激しく俺を求めてくる――
「ルナ……ちょ……まてっ……ぐぅ」
「ん……ちゅぅ……ちゅぱ……がぶ」
「いっ! 痛い! いたたたたたた!」
「痛い! ルナ、噛んでる噛んでる!」
「はぁ……はぁ……ふぅ……ごちそうさま」
「うぅ……しくしく……」
ルナは満足そうに食事(吸血)を終え。
俺は痛みでしくしく泣いていた――
「クロ……ありがと……」
「あぁ……お粗末さま……」
別に俺たちは、変な事をしていたわけではない。
ルナが血を欲しがったから、提供していただけだ。
「はぁ……」
『…………』
《…………》
俺たちの一部始終を見守っていた二人が。
何かを言いたそうな雰囲気を醸し出していた。
あまり見られていて、気分の良いものじゃないが……
最近一人増えたから、余計キツイなこれ。
「何か……言いたい事でもあるのか?」
俺は面倒くさくなったので、二人に聴こえるように口に出してつぶやいた。
『いえ……その……何でもありません……』
ソフィアが何かを言おうとしたが、言葉を続けずに途中でやめた。
《僕は……妹の濡れ場シーンを……見てしまった気分かな……》
コイツは何を言っているんだ……
そんなことを考えていると、ルナが口を拭いて腕を組み。
「フッ……」
俺の胸元を見ながら……何故か不敵に笑っていた。
『な……何ですか? ルナ……』
「ソフィでは……クロをまんぞくにさせられない」
『な……』
え……
そういう話?
『わ、私だって外に出られれば!』
「まけ惜しみ……」
『そ、そんな事はありません! 外に出れば、私の魅力でクロード様を……』
「むだだ……クロはロリコンだからな」
『う……』
俺を満足って言うか、満足したのはルナだと思うが。
それに俺は別にロリコンじゃ……
あぁ……
もうどうでもいいや……
俺は、二人の言い争いをスルーする事にした。
《うぅ……ルナ……こんなに立派になって……》
お前はどこの母親だよ……
俺は面倒くさくなって、布団に潜り込んで目を瞑る――
ルナはソフィアと言い争いながら、ベッドに入ってきた。
《いいの? 二人を止めなくて》
《いい加減慣れたからな……どっちの味方をするのも面倒くさい》
《僕としては、ずっとルナの味方で居てくれると嬉しいんだけど》
《別に俺は……ルナを蔑ろにする気はないぞ》
《僕は……ルナと君が……幸せになってくれると嬉しいな……》
ならそんな悲しそうな声で言うなよ……
《お前は……それでいいのか?》
《うん、それが……僕の願いだよ……》
願い……
ねがいのまほう……
《お前……まさか……俺の……》
《それ以上は……考えなくていいよ》
《僕は……》
《そう……陽炎のようなものだ……》
《陽炎……?》
《ルナと……君の力が混ざり合って生まれた……ただの幻》
《君が強くなれば……僕はいつか消える……それが僕の運命なんだ》
《運命だと……そんなもの為にお前は生まれてきたのか?》
《生まれた意味……そうだね……》
《僕が生まれてきた……意味があるのだとすれば……》
《僕は……ルナの笑顔を護るために……生まれてきたのかもしれない》
ルナの笑顔か……
俺は目を開け、横に居るルナの顔を見る――
ルナはいつの間にか、ソフィアとの言い争いをやめて眠っていた。
俺はそっと、ルナの頭を優しく撫でた――
「ん……すぅ……すぅ……」
《本当に……それでいいのか?》
《君と僕は同じ存在だ……だけど…僕の生命はもう……終わってしまったんだ》
《けど……君の生命はまだ続いている……だから君は、現在を走り続けて欲しい……》
《僕という名の悔恨を……君という名の希望で切り開いて欲しい……》
過去を未来で切り開く……
そんな事…俺に出来るとは思えないが……
ねがいのまほう……
俺は、前にルナが言っていた事を思い出した。
「クロの力は何でも出来る、それがねがいのまほうだ」
あぁ……
そうだな……俺が願えばいいんだな、ルナ。
《わかった、俺はルナの為に走り続ける》
《だからお前も見ていろ……そう簡単に消えるなよ》
《その約束は守れないかもしれないけど……うん……ありがとう》
《そう簡単には消えない……何とか頑張ってみるよ》
《あぁ。それでいい》
俺はコイツと約束をした。
それは、守り通すことの出来ない約束なのかもしれないが。
全てはルナの未来の為の約束だ。
《なぁ……お前の名前を……聞いてもいいか》
《うん……》
《僕の名前はクロト……黒斗だよ》
《そうか……》
《俺の名前はクロード……蔵人だ》
俺達はお互いに名乗り合った……
頭の中で……お互いの名前が思い浮かんだ――




