第31話 責任
風呂から出た俺は、ギルさんの晩酌に付き合って。
これからの事を話していた――
「本当に旅に出るのか?」
「はい、色々とやる事がありますし……ずっとこの国に居るわけにも行かないですから」
「そうか……」
住む場所を提供してもらい、色々お世話になっていたが……
いつ迄も甘えるわけにはいかないし。ソフィアの事もあるからな……
この国で、ソフィアを俺の中から出す方法を探したが。全く手掛かりが見つからなかった。
それ系に詳しそうな、エレンさんにも話を聞いて貰ったり。
アリスと一緒に、神殿や祭壇巡りをしてみたんだけどな。
神殿といば、この国へ来て最初に行った例の神殿だが……
二ヶ月前に行った時、なぜか神殿が消えていたんだ。
不思議に思い、神殿の場所を教えてくれた司祭に会いに行ったが……
その司祭も忽然と行方をくらましていた――
よく教会へ行っているエレンさんに、司祭のことを訪ねてみたら。
そんな司祭には会った事がないと言われて、俺達は諦めた。
ホントに何だったんだろうな……
「俺としては坊主に、ずっとここで暮らして貰いたかったんだが」
ギルさんが、キッチンの方へ視線を向けながらそうつぶやく。
キッチンでは、ルナとアリスとエレンさんが食器を片付けている。
「すみません……」
「あぁ。まぁ……気にするな、やる事があるなら仕方ないしな……坊主も強くなったし。若いんだからな、冒険するのも有りだ」
「ギルさんには、まだまだ勝てそうにないですけどね」
「そりゃそうだ、俺だって簡単に負けてやるわけにはいかない。いつでも戻ってこいよ坊主! また鍛えてやるからな!」
「はい、その時はお願いします」
そんな会話をしていると、アリス達が戻って来た。
「随分と盛り上がっていたけど……何の話?」
最後の方の俺達の会話を聞いたアリスが俺に訪ねてきた。
「あぁ。そろそろ旅に出ようかと……思ってな」
「え? ここを出て行くの?」
「この国に居てもソフィアを外に出せそうにないしな。他の国でいろいろ方法を探そうと思うんだ」
「そう……」
『クロード様……有難う御座います』
「ん……もちろん付いて行く」
《…………》
アリスが寂しそうな顔をするが、仕方ないからな。
ルナだけ置いていくわけにも行かないし、無論連れて行くつもりだ。
「なら……旅に出る準備をしなくちゃね」
「そうですねぇ……」
「は……?」
『え……』
「む……」
「なんだと……?」
アリスとエレンさんの意外な反応に。
俺とソフィアとルナとギルさんが、揃って声を上げた。
「おい……ちょっと待てアリス、お前も付いて行くつもりか?」
「当たり前じゃない、何を言ってるのよ兄さん」
「え……当たり前なのか……」
アリスの言動に、ギルさんが混乱している。
俺も、アリスがそんな事を言うとは思わなかった。
「別に、今生の別れってわけでもないんだから……お前も付いて行く事はないだろ」
ギルさんが、そう言って説得しているがアリスは――
「離れ離れになったら、正妻の座を奪われちゃうじゃないの」
「せ……正妻……?」
「ふん……当然だ。それはワタシのモノだ」
『違います、私のものです!』
ギルさんはますます混乱している。
ルナとソフィアも張り合っていた。
俺はというと――
あぁ……
そういえば……ハーレム宣言した事があったな……
遠い目をしていた――
《何か凄いことになってるね……君》
言われなくてもわかってる。
どうするべきか……
「エレンも付いて行くのか……?」
「当然です、ついてゆきます」
「と……当然なのか……」
俺の心の中の台詞を、ギルさんが言葉に出していた。
何故かアリスと一緒に、エレンさんも付いて来るとか言っているが。
どうする……俺?
「坊主……」
「は、はい」
「どういう事だ……?」
遠い目をして考え事をしている俺を、ギルさんが現実に引き戻した。
「えっと……それはですね……」
俺は覚悟を決め、ハーレム宣言した時の事をギルさんに話した――
「坊主……何だそのうらやま……いや、何でそんな事を言ったんだ」
「う……その……つい勢いでというか……」
「はぁ……」
ギルさんが俺の言葉を聞いて呆れたような溜息をつく。
うん、当然呆れるよな……
「まぁいい、アリス達も納得しているようだし……男ならちゃんと責任を取れよ」
《そうだね……責任は取らないとね》
「う……は、はい」
エレンさんの事は曖昧になっていたが。
俺は自分の言ったことの責任は取ると覚悟を決めた――




