第29話 罰ゲーム
「エアスラッシャー・クリエイト!」
俺の放った風魔法で、コボルトが切り刻まれる――
魔法を使うことには慣れてきたが。
魔物がバラバラに刻まれて、血が飛び散る場面はいまだに慣れない。
西の森の。ゴブリンの住処よりも更に奥で、俺達はコボルト狩りをしていた。
しかし……
いちいちステータスを確認しないと、レベルが上がっているのか分からないのがめんどくさいよな。
「ゲームみたいにレベルアップ音が、頭の中で鳴れば分かりやすいんだが……」
鳴ったら鳴ったで、うるさいだけか……
「ファイアボール・クリエイション!」
「風牙・刺突閃!」
一人でブツブツ言っている間に、ルナとアリスが残りの敵を討伐していた。
「ふぅ……」
『お疲れ様です、クロード様』
「あぁ、お疲れ」
「クロ……だいぶなれた」
「そうだな、倒れなくなったしな」
最初の頃は、魔力が全然無かったのに……
魔法を使いまくってたからな……
魔力が増えたおかげで、倒れなくなったのはいい。
「クロードの魔法、ホントに強いわよね……ほとんど一撃じゃない」
「まぁ……そうだが」
アリスはそう言うが、逆に強さを実感できないんだよな。
魔法を当てれば敵がどんどん倒れるからな……
成長しているのかしていないのかわからない。
ステータスはアップしているが……強い敵と戦わないと駄目かな。
「これ以上は、奥に進まないほうがいいわね」
「なにかあるのか?」
「敵が強くなるし、帰る時は暗くなるわよ」
「そうか、じゃこの辺で帰るか」
「ん……かえる」
アリスの言うとおり暗くなる前に、俺達は森を出ることにした。
そういえばポーションを飲むことを、すっかり忘れてたなぁ……
そう思いながら自作のアイテムバッグから、ポーションを二つ程取り出す。
「買う時は殆んど上の空だったから、気にしなかったが。これは……飲むのに勇気がいるな……」
手に持った緑色と青色のポーションを持ちながら、そうつぶやく。
「ん……?」
ルナが不思議そうに、俺の持っているポーションを見ている。
「飲むか? ルナ」
「うん……」
俺は緑色のポーションをルナに渡して、自分は青色のポーションを飲む事にした。
ちなみに青は魔力ポーションだ――
「ゴクゴク……お、普通に美味いな」
青色の液体だから少し抵抗があったが。
飲んでみるとスッキリと爽やかな味をした、スポーツドリンクみたいだった。
この色で何でこんな味になるのか不思議だ。
しかし体感できないぞ……魔力回復してるのかこれ?
そんな考え事をしているとルナが――
「ん……ゴク……ゴク……うっ!」
「え……?」
「うっ……えぇぇぇ……」
口から緑色の液体を吐き出した。
「うぉ!? ル、ルナ……大丈夫か?」
『ルナ!?』
突然の出来事に、俺は慌てる……
ソフィアもビックリしていた。
「ちょっと、どうしたの……」
俺達の少し前を歩いていたアリスが、慌ててルナの元へ駆け寄り。
「大丈夫? ルナ……」
そう言ってルナの顔を見て、ポーチから布を出してルナの口を拭いていた。
「うぐ……うぅ……」
ルナは涙目になっていた――
「す、すまんルナ……そんなに不味かったのか?」
ルナは俺の顔をチラッと見て、自分の持っている緑色の液体を見た後。
「ん……」
その物体を俺に渡してきた――
これは飲めっていう意思表示なのかな……
あんなのを見た後に、飲みたくはないんだが。
美少女の吐瀉シーンなんか初めて見たぞ……
「クロード……飲んでみなさい」
アリスが俺に向かってそう言う。
「アリスは……飲んだことがあるのか?」
「えぇ、あまり飲みたくない味ね……」
う……そんな事を言われると、ますます飲みたくないんだが…
ルナが涙目で俺を睨んでいるので、渋々飲むことにした。
「ゴク……ゴク……ぐっ……」
こ、これは……苦い……とんでもなく苦い……
草とか葉っぱとか、そんなのを凝縮したような……
薬草なのかこれ……?
とてつもなく苦い青い汁だ……
「うぐ……ゴクゴク……ぐぅ……」
俺は我慢をしながら飲んだ――
飲みきった頃には、俺も涙目になった。
まるで罰ゲームだった……
「クロ……」
「ルナ……ごめんな……」
俺はルナを優しく抱き寄せ、頭を撫でながら謝罪した。
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「今さらなんだが……通行料とか取られないのか?」
兵士にギルドカードを提示した後。門を通り過ぎながら、アリスに尋ねる。
「入国する時は取られるわよ。この国で作ったギルドカードだから、滞在扱いで必要ないだけでしょ」
「そうか……」
「もちろん行商人とかは通行する度、払わないといけないけどね」
「行商人か……アイテムバッグとかいう便利な物があるのに、商売になるのか?」
どれ程の量まで入るのかは分からないが……
自分の魔力量で容量が増えるみたいだしな。
そんな物があれば行商が成り立たない気がする。
いや……それを使っての行商なのか……
「アイテムバッグを使用できるのは、冒険者だけよ。ギルドカードを提示しないと購入できないしね」
「へ~……なら冒険者は行商できないとか?」
「行商するには、商人ギルドに登録が必須だからね。どちらか片方しか登録できないわよ」
なるほど、ギルドも色々あるんだな。
そんな話をしながら俺達は帰宅した――




