第28話 偏るエンカウント率
ギルドに着いた俺達は色々な仕事を探していた――
ルナとアリスはクエストボードを眺め、俺は分厚い本みたいな受注書を見ていた。
クエストボードの仕事は討伐や採取など、主に街の外にある仕事で。
受注書の方は、街の中で行う仕事らしい。
「随分と真剣に見ているけど、何かしたい仕事でもあったの?」
ずっと本を見ていた俺に、アリスが不思議そうに訪ねてくる。
「いや……このポーション作成がな……すごい気になるというか……」
そう。俺が見ているページには……
生命力ポーションと、魔力ポーション作成の手伝いという仕事が紹介されていた。
元異世界人としては、気になるだろ普通……
どんな味がするのか……とか。
飲むと実際効果があるのだろうか……とかさ。
「また妙なものを気にするのね……アナタ、ポーション作れるの?」
「創ったことはないな……思いつきもしなかった。ただ味がすごい気になる」
「味が……?」
「飲んだことが無いからな……」
「魔法商店で、買えばいいじゃない」
道具屋じゃないのか……
魔法を使って作るのかな……
「うーん……考えてたら凄く飲みたくなった、買いに行こうぜ」
作ったことがないから、作成の手伝いなんか出来ないし。
味見できるとは限らないからな……買ったほうが早い。
「仕事はどうするの?」
「適当に討伐依頼でも受けてくれ……ルナ、頼む」
「ん……わかった」
ルナがボードに貼られていた紙をビッと剥がし、受付カウンターに持って行ってた。
今日の受付の人は、優しそうなおばちゃんだった。
綺麗な受付のお姉さんには、いつ出会えるんですか……
ギルドを出て魔法商店に来た俺は、この店の主人に向けて、思ってもいない言葉がつい出てしまった。
「お姉さん……」
「あらやだよ……こんなおばちゃんを掴まえてお、姉さんだなんて」
目の前に居る、如何にも魔女な格好をしたおばちゃんが、俺を見ながら照れている。
わかってたさ……こういう店は大体おばちゃんが経営しているってな……だけど期待してたんだよ……綺麗なお姉さんを……何で何処にも居ないんだ……
宿屋の受付も……ギルドの受付も……おばちゃんばかり……
若くて綺麗なお姉さんはどこですかああああぁぁ――
俺は心の中で魂の叫びを上げながら、ポーションを適当に買っていった。
おばちゃんは、おまけをしてくれた――
「はぁ……」
『クロード様、どうかなされましたか?』
俺のひっそりと吐いた、ため息を聞いて、ソフィアが声をかけてくる。
「いや……ちょっとお姉さんのエンカウント率についてな……」
『エンカウント……?』
「いやなんでもない……俺、早くソフィアに逢いたくなった……」
『クロード様……私も早くお逢いしたいです』
無意識にソフィアを口説きながら、俺は街の外に向かっていた――




