第23話 みゃおぅ
俺が訳の分からないまま混乱していると――
「ちょっとクロード、一人で喋ってないで説明して」
と言ってアリスが説明を求めてきた。
「あ……あぁ、すまない……えっと……」
「まず、ソフィアって……誰?」
そこからか……
名前教えてなかったっけ……と思いながら説明をした。
「女神……聞いてないわよ……」
「アレ? 言ったはずだぞ俺……」
確か三人に説明したはずだ。
「神王って名前の神様が、クロードの中にいるとしか聞いていないわよ」
そうだったっけ……
アリスが複雑そうな顔をしながら、俺の胸のあたりを見て。
「女神……要注意ね」
『むむ……』
何故かそんな事を言った。
俺の中のソフィアも唸っていた。
「と、とりあえずアリス……ちょっとソフィアと心の中で話すから……まってくれ」
「わかったわ……」
傍から見たら、俺がずっと独り言を喋っているだけなので。
混乱しないようにアリスをひとまず制して。
心の中で、ソフィアと話をすることにした。
『さて、ソフィア……魔王っていう存在は血を吸うのか?』
『私に聞くよりも、本人に尋ねられた方が良いかと思いますが……』
それもそうだった。
そう思いながらルナに質問をする。
「ルナ……ルナは俺の血を吸ったのか?」
「あぐ……むぐ……もぐ……ん?」
パンを食べながら首を傾げている。
『吸っていない様なんだが……』
『隠しているだけだけなのかもしれませんよ』
う~ん……
まだルナと出会って数日しか経っていないが。
こんな事が起きたのは、今朝が初めてだしなぁ……
『いやちょっとまてソフィア。ソフィアが俺の中に居たのなら……ルナが血を吸っていたら気付いたんじゃないのか?』
『それは……そう……なのですが……』
俺が目を瞑っていても視えるようになったとか言ってたからな。
ルナがそんな事をしていたら気付いたはずだ。
俺がそう考えているとソフィアが……
『クロード様……申し訳ありません……』
『え……?』
『確かにクロード様が目を瞑っていても、クロード様の事は視えます。ですが……クロード様が意識を沈めれば、私も眠る事が出来ましたので……』
あぁ、一応眠れるのか……
というか寝てたんだなこれは。
それは仕方がないな、ずっと起きていて貰うのも可哀想だし。
『それはまぁ……しょうがないな、うん』
『申し訳ございません……』
『いやいや、気にしてないからソフィアも謝らないでくれ』
ソフィアは巻き込まれて俺に付いてきただけだ。
俺の中にいるとはいえ、別に俺に命令権が有るわけじゃない。
『クロード様が起きられる少し前に、私も起きたのですがルナは……クロード様の首に抱きついて寝ていましたね』
そうだったな……
ということは……
「無自覚か……」
「どういうこと?」
俺の言葉にアリスが説明を求めてきたので、先ほどの会話をアリスに教える。
「…………」
アリスは黙ったままルナの方を見た後。
ルナの居る場所へ向かい――
「ルナ」
「ん……? ぁが……ぁぁ……あ」
ルナの口を無理やりこじ開けた。
ちょっと可哀想だった……
そして、ルナの口から手を離し。
「貴女吸血鬼だったの?」
「な……ふざけるな! ワタシは魔王だ!」
なんてやり取りを始めた。
「吸血鬼じゃないのなら、何でクロードの血を吸ったの!」
「そんな事は知らない!」
そんな二人のやり取りを見ながら。
これは……どうなんだろな……
別に隠していたわけじゃない気がするな。
ルナ本人も、自分が血を吸った事を覚えているようには見えないし。
『嘘をついてる様には見えませんね……』
「そうだな……」
ソフィアの言葉に肯定する。
そこでふと、気になったことをソフィアに聞く。
「ソフィア……最初にルナを見た時、魔王だってわかったんだよな。それはルナの事を知っていたからじゃないのか?」
『違います、神界には相手の事を知らせる大神王様の御力が有ります。その御力が、私の目の前に居るのは魔王という存在だと……教えてくれました』
「それは便利だな……だがそれで、ルナが吸血鬼だというのは判明しなかったのか?」
『申し訳ありません……相手は魔王だという、お知らせだけに集中していて……そこまでは確かめていませんでした。それに……』
「それに?」
『相手の年齢も判らないので、ルナが見た目通りの若さなら……自分は吸血鬼だという自覚が無かったのかもしれません』
なるほど……
そう考えれば納得はできるな。
「でも普通……親に教えられないか?」
子供が吸血鬼なら親も吸血鬼だろうし。
そう思っているとソフィアが……
『クロード様……忘れられたのですか……』
「うん? 何をだ?」
悲しそうな声でソフィアが……
『ルナが冥王の事を……初めて喋った時の事です』
冥王……たしか俺の力を狙ってるやつだったか。
あの時ルナは……
「めいおうは……クロのちからをうばって……すべてをてにいれようとしている……」
「おかあさまも……おとうさまもころされた……もう……だいすきなひと……しんでほしくない……」
あ……そうだった……
ルナの親は冥王に殺された。
その時ルナが小さかったのなら。
全てを教えられる前に……
「あぁ……くそっ。自分の記憶力のなさにムカついた……」
『クロード様……』
「すまんソフィア。アリスを止めてくる」
『はい』
俺は、二人が言い争っている場所に向かう。
「貴女は吸血鬼なのよね? ハッキリなさい!」
「ふじゃけりゅにゃ! わりゃひはみゃおぅりゃ!」
アリスが、ルナの口を両手で引っ張っていた。
「おいおい……アリス落ち着け」
俺はアリスからルナを引き剥がし抱き寄せる。
ルナは涙目になっていた。
「んぐ……う……ぅぅ」
「クロード……」
「アリス……もういいんだ……」
俺はルナを抱き寄せたままアリスに言う。
「ルナが血を吸いたいなら、俺は別に構わない」
「でも……体は何とも無いの?」
そう言われてみれば……
朝起きた時の体の怠さって、血を吸われたからなのか……
魔法の使いすぎなのかと思ってたが。
「あぁ……大丈夫だ、少し体がだるいが別に問題はない」
「そうなの……」
「もしルナが吸血鬼だとしたら、血を欲するのは仕方がないからな……俺はルナの事が好きだし、何も問題はない」
「そう……」
俺はそう言ってアリスを説得した――




