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第146話 呪い

クロードです。可愛い女の子達にチヤホヤされていたら、鎧に呪われました。

しかも鎧を脱ぐことが出来ません。魔法なら何とかなるかなと思って、ルナさんに頼んでみましたが。

彼女曰く、鎧の魔法耐性がとても高いらしくて、ねがいの魔法が効かなかったそうです。


なんということでしょう。

確かに見た目はカッコいいです。遊びでならこんなに厳つい格好をしていても何も問題ありませんが、そうでないのなら大問題です。

兜まで被ってしまっては、中の人が全く見えません。

漆黒の全身鎧に身を包み、顔が見えない兜をつけて、背中には黒いマントをはためかせる。

どうみても悪者です。こんな姿で外出したら、憲兵に職質される自信があります。


それ以前の問題として、食事とか用を足す時とかどうするんだよ!! と叫んだら。

兜の口の部分と下半身のアレの部分が、なぜか消滅しました。

微妙に便利な機能付きのようです。これなら、まぁいいか……なんて思いません。

だって今は消えた部分が復活して、再び完全武装されているのですから。



「ふざけんなコンチクショウ!!!」


俺は漆黒の両手剣を振り下ろして、鎧を飾ってあった台座を真っ二つにする。


「一生着てろってかっ!? 死ぬまでこの格好でいろってことかっ!?」


「お、落ち着くのじゃ」


「そうよ、落ち着きなさいよ。暴れてもどうにもならないでしょ?」


「そ、そうだな……」


確かに暴れていても解決にはならない。白亜やクレアの言う通り、まずは落ち着いて解決策を探そう。

そう考えて地下室を隈なく探索してみたが、何の成果も得られなかった。

仕方がないので、クレアからこの屋敷が安めで貸し出されている理由を聞いた。

といっても何百年も前の話らしいので、話を聞いただけでは解決できるとも思えなかったが。


この屋敷に住んでいたのは、さる王族のお姫様と一人の騎士だった。

どこの国の姫なのかわからないけれど、この場所は王の隠し別荘だったみたいだ。

別に二人で住んでいたからといっても、お互いが恋中だったわけではない。

本人たちの思惑はともかく、対外的にも姫と騎士だったわけだからな。


ならばなぜ、二人きりで住んでいたのかというと。

その国は荒れていて、城の中で暮らすのはとても危険だったらしい。

ある家臣は王の命を狙ったり、またある貴族は、民を先導して国の疲弊を目論んだ。

これは敵対国の諜報員の謀略だったそうだが、まぁその辺りはどうでもいい。


王には沢山の子供が居た。自分が命を狙われるだけならば、身辺をさらに強化するだけでよかった。

しかし、自分の子供達の安全を確保するには、信頼できる兵士達だけではとても手が回らない。

長考の末に王が辿り着いた考えは、王位を継げる子供達を、世界中にあった自分の別荘でそれぞれ匿うこと。

そしてそれを実際に実行した。けれど、王女や王子達の中には運が悪い者がいた。ここに居た姫もその中の一人だ。


姫と騎士はこの屋敷に隠れ住み、国が安定するまで耐え忍んでいたわけだが。

あるとき、一人の国の兵士が二人の下へと尋ねてきた。

兵士は王の命令で、王女の安全を確認しに来ただけだったそうだ。それだけでは別に変ではない。

しかし姫を護っていた騎士には、違和感が付き纏った。情勢が安定したわけでもないのに、姫の居場所を兵士に伝えるのか? と。


一度疑ってしまえば、次々と悪い予感がする。

ここに王女が居ることを、敵にバレてしまったのではないか……

確証はない。だけどここでじっとしていたら、姫が命を狙われる危険がある。

その考えに至った時、騎士の行動は迅速だった。姫に最低限の旅の準備をさせて、二人は逃げることになった。

なぜならば、城からの応援は期待できないからだ。しかし、二人のその行動は完全に悪手だった。


「二人を街から引き離すことが、目的だったのか」


「えぇ。いくら護衛の騎士が一人だったといっても、その騎士はかなりの腕達者だったわけ。かといって、街中にゾロゾロと兵士を連れていくわけにはいかないでしょ」


街の外に逃げ出した二人は、あっという間に敵国の兵士に取り囲まれた。

敵の狙いは姫を捕らえることだったのだが、護っていた騎士が強すぎて手が出せなかった。

人質を取ることも出来ず、騎士を倒すことも出来ない。

それならば、自分達が不利になる前に二人とも殺してしまおう。

こうして、魔法の集中砲火を浴びて二人は死んでしまったらしい。

この鎧の魔法耐性が異常に高いのは、その騎士が護れなかった姫への……想いがこもっているのかもしれない。


「しかし……やたら詳しすぎないか?」


何百年も前の事なのに、さすがに騎士の行動原理まで把握しているのは、如何にも作り話ではないかと疑ってしまう。


「だって、本人に聞いたんだもの」


「えっ?」


「ここで住み始めた時、毎晩毎晩騎士の亡霊が彷徨っていたからね。いい加減うざくなったから、マリアにお願いして、魔大陸から持ってきたお父様の魔王鎧(まおうがい)に封じ込めたのよ」


「うぇっ!? この鎧、お前の親父の物なのか?」


「そうよ」


親父の遺品に何をしているんだと思ったが、問題はそれじゃない。

つまりこの鎧には、騎士の怨念が宿っているというわけだ。


「どうしてそんな鎧を飾っていたんだよ!」


「飾っていたわけじゃないわよ。早く成仏してくれるように祀っていたわけだけど、まさかこんな場所に置かれている鎧を着る人がいるなんて、わかるわけないじゃない!」


「ぐぅ……」


ぐぅの音しか出ない。

女の子達にノセられたとはいえ、鎧を着てしまったのは俺の責任だ。

三人の女の子達を確認をすると、みな落ち込んだ表情になっている。


「トリアナに相談してみるか……」


この世界の女神ならば、何か解決策を知っているかもしれないと思って、俺達は彼女の下へと移動した。




◆◇◆◇




ソフィアが寝ている部屋前に行くと、トリアナが何か難しい顔をしながら悩んでいた。

俺は声をかけるために彼女の前まで歩いて行く。歩く度に足音がゴツゴツと鳴っていたが、トリアナは全く気づく様子がない。


「トリアナ」


「うわっ!? もしかしてクロちゃん? どうしたのその格好……」


「これには深いわけがありまして……脱げないのです」


「なにしてるのさ……」


「で、話があるんだが」


「うん。やっぱり呪われてるね」


「そうなんだよ、呪いで脱げらいらしくてさ」


「えっ?」


「えっ?」


なぜか話が微妙に合わないので、まずはトリアナに喋ってもらうことにした。

彼女の話によると、ソフィアに元気が無いのは、どうやら呪いを受けてしまっているらしい。


「ソフィアに……呪いが……」


「うん。まさかクロちゃんが、冥王と接触してたなんて夢にも思わなかったよ」


「初めて会ったのはルシオールだったが、まさかあれが冥王だなんて思わなかったしな」


どんな風に知られたのかはわからないが、冥王はかなり前から俺達の事を知っていたみたいだ。

俺が居ない間にリアを誘拐して、俺の魔力を奪おうとしていたくらいだからな。

幸いなことに、リアには操られていた時の記憶が無かった。


「あの時、冥王はソフィアに触れていなかったけど、どうやって呪われたんだ?」


「ソフィアちゃんから聞いたのだけど、冥王のことを串刺しにしてたんでしょ?」


「あれか……」


「記憶の混濁も起きてるから、なんとかしないとまずいかも」


「記憶の混濁?」


「うん。一部だけど……前世の記憶を思い出しかけてるみたい……」


前世の記憶……

黒乃のことをつぶやいたのは、それが原因か。


「今は、ボクの力でだいぶマシにはなってるけど……」


「トリアナの力だけじゃ、治せないのか?」


俺の質問に、トリアナは力なく頷く。

他に方法が無いのかと問い詰めたら、霊草があれば、どうにかできるかもと教えられた。


「霊草ってどんなのだ?」


「えっとね。魔力が高い場所に生えている透明な草なんだけど、霊が多い場所でも生えてるかもしれない」


すっげぇ嫌な場所に群生しているらしいが、嫌がっている場合でもない。

しかしそんな物は見たことも聞いたこともないし、さっそく手詰まりになってしまう。

クレアや他の女の子達にも聞いてみたが、誰一人として存在を知っている者がいなかった。




マリアやアリスにも聞いてみたほうがいいかもしれない。もしかしたら、エレンさんが知っている可能性もある。

自分の呪いを解く方法も知りたかったが、俺にはソフィアのほうが大事だ。

俺は一縷の望みをかけて、マリアたちが帰宅するのを待つことにした――

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