第13話 ディスケイト
何処かの森の奥深く。
「クロ! クロ!」
少女は涙を流しながら、血まみれの少年に声をかける。
「ごふっ……ごめんよ……ルナ……君を護りたかったけど」
「そんなことない! クロはずっとわたしをまもってくれた!」
血を吐きながら謝罪する少年に、少女は一生懸命応える。
「それでも……君や大魔王さまを……ずっと護りたかった……」
「うぅ……ひっく……ひっ……」
少年の言葉を、少女は泣きながら聞いている。
森の木々の間から見える城が、音を立てながら崩壊している。
その城を眺めながら、少年は決意をしたように――
「ルナ……お願いがある」
「なに……?」
「僕はもう長くない……そして……力も奪われるかもしれない」
「そんな……やだ……」
「けど……僕は残された最後の力を使って……君を逃がすよりも、辛い選択をさせようと思う……」
「やだ……やだよ……いっしょに、にげよう」
少年の言葉を、少女は涙ながらに否定する。
「聞いて……ルナ。アイツは……冥王はルナの中の力にも目をつけた……きっと逃げられない。だから……僕の生まれ変わり……いや……違う……僕と同じ力を持つ、転生体の元へ行くんだ」
「てんせいたい……?」
「うん……転生……きっと僕と同じ力を持った人が生まれる……僕みたいに前世の記憶を……思い出すかはわからないけど……君にその人を……見つける為の力を託す……」
少年はとても辛い顔をしながら。
「それは何年か何十年……もしかしたら何百年もの時間が過ぎるかもしれない……それでも……僕は君に生きて欲しい……そして……幸せになって欲しい……」
それは少年の想い、そして己の願望でもあった。
「クロ……」
「ごめんね……ルナの事……好きだけど……やっぱり元の世界に居た妹と……重ねてしまっていた……」
少年は元の世界に居た妹の顔を思い出しいるのか、少しの間目を閉じた。
そして再び目を開いた後、少女に向かって言葉を続ける――
「僕のこの力は危険過ぎる……半端な使い方じゃ駄目なんだ……神さまに託された願いを……僕は軽視していた……」
「僕は……力をつけるには…遅すぎたんだ……もっと早く……この力を理解していたら……対抗手段があったかもしれない……」
「それはただの希望なのかもしれない……だけど……何も知らないまま……冥王と相対し、絶望するよりはいい……」
「だから……お願いだルナ……とても辛い事だけど……何も知らないその人に、力の使い方を教えてほしい……」
「クロ……」
少年は涙を流し悲願する。
「もしかしたらその人は……とっても悪い人かもしれない……それでも……導いて欲しい……」
「わかった! わるいやつならなぐってでも、いうことをきかせる!」
「あはは……お願いね……」
少女の決意に、少年は微笑みがら少女を抱き寄せる――
そして、少女の可憐な唇に優しくキスをした……
「クロ……」
「大好きだよ……ルナ……」
「クロ! わたしも! わたしもだいすき!」
「うん……ありがとう……」
「冥王が近づいてくる…もう……時間が無いな……」
「クロ……」
少年はそうつぶやいた……
少女は少年の胸に必死で抱きついている。
少年は決心したように少女を抱き寄せたまま、その願いを詠唱する――
「朝宮黒斗……名を改め、クロト・ディスケイトの名の下に」
「僕が創造するべき力よ」
「万物をも生み出し、時間も空間もその概念すらも超越する力を」
「僕の生命と魔力を糧とし」
「ルナティア・フォルス・ツァーベルにその全てを捧げる」
「ディボート・クリエイション!」
辺り一面が白銀に輝き――
「ルナ……僕を好きになってくれて……ほんとうにありがとう……」
「クロ……」
そして二人は光りに包まれた――
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「……ロ……クロ……」
『クロ……ド様……ロード……』
俺を呼ぶような声が聞こえる……
「うぅ……ぁあ……ぅ……」
誰だ……俺を呼んでいるのは……
「うぁぁぁぁ……」
翌朝――
寝ていた俺は、叫び声を上げながら跳ね起きた。
「クロ……どうしたの?」
『クロード様、大丈夫ですか?』
ルナとソフィアが俺を心配して声をかけてくる。
「ぐうぅぅ……」
なんだ……
頭が割れるように痛い……
「ぐ……はぁ……はぁ……」
「あ……あぁ……だいじょうぶ……頭が痛いだけだ……二日酔いかな……」
昨日は、勧められるままお酒を飲み過ぎてしまった。
「クロ……わるいゆめでもみたの?」
『ずっと、うなされていましたよ』
「夢……思い出せないな……」
悪夢でも見たのだろうか……思い出そうとするが、頭がズキズキするだけで思い出せない。
『そうですか……』
「クロ……」
ルナが俺の頭を抱き寄せ、そして優しく撫でてくれた。
「ルナ……ありがとう」
「ん……」
朝食を終えた俺達はこれからの事を話し合う――
頭痛はすっかりしなくなっていた。
「これから、どうしようか」
「クロには……強くなってもらわないと」
ルナの言葉に俺は思案をする。
強くなれと言われても、どうすれば良いのだろうか。
魔物を倒して、レベルを上げるだけでいいのか……?
「レベル……レベルか……少し待ってくれ」
そこで俺は一つの魔法を考える。
ソフィアに見せてもらったステータス画面だ。
別にソフィアに見せて貰ってもいいだろうけど、自分で作ることにした。
言葉が思い浮かぶ――
「ステータス・クリエイト」
魔法を唱えると。目の前にステータス画面が出て来たので、それを見たのだが……
名前:クロード・ディスケイト
年齢:17歳
JOB:クリエイトマスター
LV:6
HP:900
MP:1200
物理攻撃力:650(装備補正)
魔法攻撃力:1100
物理防御力:700(装備補正)
魔法防御力:500(装備補正)
装備:ブロードソード ライトメイル
魔法:クリエイト
スキル:創造
称号:転生者 創造能力者 魔王の寵愛を受けし者 神王をその身に封印せし者
ディスケイトの名を継ぐ者 ロリコン 巫女好き 覗き魔 お姉さん好き
「なんだこれ……」
『これは……』
色々変わっているがちょっと待て。
称号がおかしい……
称号の後半に不名誉なものが有るのもあれだが……
「ディスケイトの名を継ぐ者って何だ……」
「ん……?」
俺のつぶやきにルナは首を傾げている。
「ルナも知らないのか……ソフィアは?」
『初めて見た時……何処かで聞いた事があった気がしたのですが……申し訳ございません、思い出すことが出来ません』
「そうか……」
気になる事は気になるが、分からない事を考えても仕方ない。
ステータスが上がっているが……魔法の上がり方が尋常じゃない。
という事は……
「ルナ、強くなる為には魔法を使えばいいのか?」
「うん……そう聞いた」
「聞いた? 誰にだ?」
「…………」
ルナは答えない。
答えたくはないのか……
「魔法を使えばどんどん強くなれる。考える事も……願う事も……魔法を使う事も大事」
「そうか……なら討伐系クエストを受けまくるか。金も貯まるし」
「ん……」
『あの……クロード様』
とりあえずの目標を決めた所でソフィアから声が掛かる。
「うん?」
『お願いがあります』
「お願い?」
『はい、この国の何処かで神聖な場所を探して貰いたいのです』
「神聖な場所……?」
『はい、クロード様の中から自力で出られないので……そのような場所があれば或いはと…』
「なるほど……」
いつまでも俺の中に閉じ込めるのは可哀想だしな……
俺はソフィアの提案を受ける事にした。
「神聖な場所か……どうやって探すか……」
『本当ならギルバートさんの仰られていた……聖王都ガラテアに向かいたいのですが……』
うん、どれ程の距離があるのか分からないしな。
金もないし……
「とりあえず……この国の教会にでも聞きに行くか」
『お願いします』
こうして俺達は教会に向かうことにした――




