第10話 冒険者登録をしよう
武具屋で羞恥プレイを経験した俺は、アリスの案内の下、冒険者ギルドに来ていた。
買い揃えた装備は。武器はブロードソードで、防具は軽鎧のライトメイルと呼ばれる物だ。
武器が3000防具が2000と中々の値段で。ギルバートさんから貰ったお金は全部使いきり、再び無一文になった。
低級冒険者用装備らしいけど、武器が結構高めの値段だった。
「あんまり人が居ないな」
ギルドの中に入ると、テーブルやイスがたくさん置かれている。
ここで休憩などが出来るようだったが、人が少なくて閑散としていた。
「真っ昼間から仕事もせずに、こんな所でたむろっていたら。お金なんて稼げないわよ」
「そりゃそうだ」
こんな風に、女の子を連れて冒険者登録に来たら。変な男に絡まれるとか、そんなイメージがあったんだけどな……
どうやらそんなイベントは起こらないようだ。
「クロ」
「ん?」
「お腹すいた」
ルナがお腹すいたと言ってくる。金を持っていなかったので、俺達は朝から何も食べていない。
それを聞いたアリスが。近くの屋台で何か軽いものを買ってきてくれると言って、お金を渡された。
「これは?」
「登録手数料よ。あそこで登録できるから」
「わかった。ありがとう」
アリスから、500と描かれた硬貨を受け取り。俺達は一旦別れる。
「冒険者登録をしたいのですが」
「わかりました。それではこちらの書類に、必要事項をご記入してください」
「はい」
綺麗なお姉さんを期待していたが、受付をしていたのはお兄さんだった。
二枚の用紙を手渡されて、書かれているものを見る。
一枚目は、名前や出身地など自分の事を書く書類で。
二枚目に長々と書かれていたのは、冒険者ギルドでの注意事項や、登録のための規約だった。
文字は……わかるな……
これも、俺の魔法の力なんだろうか?
用紙に自分の名前と年齢を書き、出身地はこの国にしておく。
一応受付の人に、今住んでいる場所でもいいのかと聞いたら。それでも構わないと言われたので、その通りにした。
あとは規約か。
こういうのって、あんまり読みたくはないんだけどな……
ずらりと並んでいる文字を見る。全部読む頃には、もの凄く目が疲れそうだ。
年齢制限が12歳からで、犯罪などを起こしたら、罰金の上に国で裁判か。
軽犯罪くらいなら、罰金だけで済むみたいだが。重犯罪だと、登録抹消の上に永久追放ね……
ん……? 特級登録契約ってなんだ?
「すみません。質問いいですか?」
「はい。なんでしょう?」
「この特級登録ってのは、なんですか?」
「これはですね。普通の人は、気にしなくてもいいのですが……」
冒険者ギルドでは、ランクというものがあり。最低ランクのFから、最高ランクのAまであるそうだ。
特級登録というのは、さらにその上の存在の、Sランクになるための手続きであり。登録するためには、国の王の紹介が必要らしい。
そんなわけで、Sランク所持者は希少な存在なので。受付のお兄さんも見たことがないと言ってきた――
「普通の冒険者なら、Aランクまでとなりますね」
「なるほど」
ギルドで仕事をこなしていけば。評価とともに、ランクを上げることができるそうだ。
Bランクになると、ギルドの方からランクアップ試験を持ちかけられて。それに受かればAランクになれるらしい。
Aランクにはかなり危険な仕事があるので、相当な実力が必要だと言われる。
まぁ、俺には関係ないな。
「それじゃ、お願いします」
「はい。それでは、しばらくお待ちください」
用紙を渡してしばらく待っていると、受付のお兄さんが戻ってきて。カードのような物を手渡される。
カードには、バルトディアの冒険者ギルドと書かれていて。この国のマークのような物も描かれていた。
ここに指を乗せてくれと言われたので、その通りにしたら。カードが薄っすらと光り。俺の名前の横に、Fと言う文字が浮かび上がった。
指紋認証なのか? 何気にハイテクだな……
「これで登録は完了しました。登録手数料は500ゴールドになります」
「はい」
お金を渡すと、仕事の受け方をレクチャーされる。
仕事をする時は、壁際に置いてあるクエストボードの張り紙を、係員に渡して受ける方法と。
受付の直ぐ側にある、受注書と呼ばれる分厚い本から仕事を選べるそうだ。
仕事内容にランク表示があるものは、自分と同じランクか、そのすぐ上のランクのものしか受けられない。
俺はルナと一緒に、クエストボードが置かれている場所まで行き。仕事を探すことにした――
「討伐とか採取とか、色々あるな……」
ルナと俺が、クエストボードに貼られた紙を見ていたら、アリスが戻ってきた。
「登録終わった?」
「あぁ、何の仕事をしようかなと」
「無難に下級モンスター退治とかでいいんじゃない? ゴブリンとか」
ゴブリン……
緑色のアレか? 気持ち悪そうだなぁ……
「最初は、スライムとかがいいんじゃないか?」
居るのかどうかはわからなかったが、弱そうなモンスターを提案してみる。
「私と一緒なら受けられるけど……駆け出しが相手にする魔物じゃないわよ」
アリスがそう言いながら、クエストボードの端の方に視線を向ける。
そこには……
――急募――
廃屋に住み着いたスライム退治Cランク。と書かれていた。
え……
Cランクって真ん中じゃん……そんなに強えの?
「スライムって、そんなに強いのか……」
「打撃は効かないし、魔法もそこそこ耐性があるからね。捕まったりなんかしたら、溶かされて食べられるわよ」
「うぇ……」
それは会いたくないな……
「服を溶かす体液を飛ばしてくるし、女の敵よ」
それは会ってみたい。
俺は心の中で、前言を撤回していた。
「じゃあ、ゴブリンで」
「西の森ね、行きましょうか」
クエストボードに貼り付けられていた、ゴブリン退治Fランクという張り紙を取る。
それを受付で見せたあと、俺達は西の森へと行くことにする――
「はいこれ、お昼」
「あぁ。ありがとう」
「ん……」
俺とルナは、アリスからサンドウィッチみたいな食べ物を受け取る。
果物で出来ている、飲み物も一緒に買ってきてくれたみたいだ。
「結構うまい」
「ん……おいしい」
中にはバターみたいなもので味付けをした卵と、野菜が挟まれている。
俺達がサンドウィッチを食べながら歩いていると。
先を進んでいたアリスが、門の所に居た兵士に挨拶をして。
そして、俺達は街を後にした――




