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狐の花嫁  作者: 篠田葉子
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結婚しました。

結婚したのは19歳のときで、渡辺さんをもらった石高全部差し出して抱えたのも同じ年。

つまり居候のところに嫁いだってことになるんだな~って思いながら書いてました。

お見合いからしばらくは、三成さまの仕事の都合でちょっとごたごたはしたけど、上月城を落とした後、信長様に報告と中国攻略についての打ち合わせのため、安土城にご帰還され、その時に秀長さまの媒酌の下、ようやく正式に婚姻を結んだ。


正直、官僚のイメージが強かったし、他の武将の人たちと比べると線が細いように思えたけど・・・えっと、うんまぁ、次の日の朝、起きれなくなるくらいにはすごかったです。


しかしそんなラブラブな日々は当然長くは続かず・・・また秀吉さまと一緒に中国へと出張、ではなくて遠征に行ってしまった。



そして嫁ぐ前から思ってはいたのですが、この時代の人たちは非常に筆まめです。

まぁ連絡手段が文しかないわけだから当然と言えば当然なのかもしれないですが。


三成さまも遠征に出てから、わりとこまめに文を下さるようになりました。

内容はほとんど業務報告に近いですけど。

まぁらしいな~と受け取った手紙を繰り返しにやける顔を必死で引き締めながら眺めてますけどね!


内容はらしいのですが、こまめに文を出すイメージがなかったので最初は不思議に思ったのですが、すぐに解消されました。

上司である秀吉さまが非常に筆まめで、ことあるごとに奥方であるおねさまに文を出しているのです。

そして見合いを勧めたくらい気にかけている三成さまにも一緒に文を書くよう勧めたということでした。


別に私は気にしないからいいですけど、そういうことってわざわざ文に書かなくていいと思うんですよ、三成さま。と最初に頂いた手紙を読み返してそんなことを思う。


頂いた手紙はすべてきちんと取ってある。

保存用の箱だってわざわざ新調したくらいだ。

職人さんに「三成様から頂いた文を入れておく箱を作ってちょうだい」とお願いしたら、黒い漆塗りの箱に金でススキ野原に二匹の狐がいる絵が描かれた物を作ってくれた。

可愛くてお気に入りの品だ。


もちろん頂いた手紙にはきちんとお返事を書いている。

たくさん人が死んだと書かれた文に貝殻を粉にして焼いて水を加えたものをその場に撒くようにしてくださいね。消毒作用があるので、疫病が流行りにくくなります。と返事を書いたものの、届くまでに時間がかかるので正直あんまり意味はないような気もする。


竹中重治殿が亡くなったという悲しみに満ちた文も来た。

一度だけお会いしたことがあるけど、女性的な美人さんだった。

戦をしているのだからそんなこともあるだろうけど、誰かが死ぬというのはやはり嫌なものだ。

しかし秀吉さんの部下の竹中さんって半兵衛さんしか知らないけど、そんな人もいたんだなぁ。

・・・あれ?勘兵衛だったっけ?




現在嫁として嫁いだ彼女は三成の居城に住んでいる。

しかしその居城は実は現在非常におかしなことになっている。


三成は中国征伐の功績で秀吉から500石の知行をもらったが、その全てを与えて渡辺勘兵衛を抱えたため、そこに居候していることになる。

そしてそこに嫁である彼女も新たな居候としてやってきたというわけだ。


もらった知行すべてを与えるという度量を持つ三成に惚れこんでいた三成の家臣たちは始めは自分たちの殿の素晴らしさがちゃんと分かる女か?!と警戒したが、すぐに彼女が三成にべた惚れであることが判明し、見る目のある娘だ!と受け入れた。


家臣たちに受け入れられてからは積極的に働きだした。

関ヶ原フラグをへし折る活動の一環として、旦那が遠征に行っている同士であるといっておねたちと親交を深めたり、領地の農業改革を行ったり、近江・堺の商人とも親交を深めた。

また商人達の仲介で、ティーカップやマグカップを売りこんだりもした。


関ヶ原フラグをへし折ろう!と決意したのはいいものの、日本史にさほど詳しくないため、とりあえず資金や味方を増やすところから始めよう!となったのだ。


売り込みの結果、いつの時代でもマニアはいるもんだな~という感想を抱くことになるとは、その時には予想すらしていなかった。


どさくさにまぎれて信長の顔を(遠くからだが)見ることにも成功。


さすが美形一族と名高い織田家の当主様だな~。

フィギュアスケーターの子孫とは、遠い親戚なんだって言われればまぁ確かにって気はするけど、オーラが全然違うな~。

カッコイイおじさまだけど、怖いから近付きたくないな~。なんて思いながら物陰から隠れて見物していたのを実家から付いてきた家臣たちが呆れたように見ていたことに気付きつつスルーしていた。



そんなこんなをしながらも義父上や義兄上、留守番の家臣たちと協力しつつ、時折九九を教えたりなんかもしてお仕事に励んでいたある日、おね様たちとお茶会をするべく出向いたら、なんだか気分が悪くなってしまった。


「おぇ・・・」

「だ、大丈夫かい?」

「な、なんとか・・・」


変な物食べたりとかしてないはずなんだけどな~。

胃が気持ち悪い・・・


「・・・ねぇあんた、月のものはちゃんときてるのかい?」

「へ?ちゃんときて・・・あれ?」


私が用意したお茶菓子を食べながら、まつ様が訊ねてきた。

唐突に何を?と思いつつ、記憶をたどってみると・・・あれ?


「おめでただね」

「へ?」

「おやまぁめでたいことじゃないか!」

「あれ?」


中国征伐に出かけたのがあの日で、最後にエッチしたのがあの日で、今が・・・


「あれ~???」



結婚したその年のうちに妊娠するとはさすがに思ってませんでした。

が、いくら悪阻がほとんどなかったからと言って妊娠に気付かないなんてありえない!と侍女たちからお説教を喰らいました。

すみません、本気で気付きませんでした。


とりあえず、三成さまに文でお知らせしようと思います。

喜んでくれるといいな~。


あら?そういえば私と結婚したって秀吉さまと秀長さま以外でご存じの方っているのかしら?

特に紹介とかされた覚えないんだけど。



竹中重治さんはもちろん半兵衛さんです。

ちなみに結婚した年と第一子の生まれた年が一緒なのも史実です。

早いな!と調べててツッコミを入れました(笑)

その後もコンスタントに子宝に恵まれ、三男三女もうけます。

頑張れ嫁(笑)

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