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狐の花嫁  作者: 篠田葉子
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秀長のお見合い大作戦

石田さんは秀長さんの媒酌でその部下の娘と結婚したんだそうです。

嫁を秀長さんがみつくろってあげたのかなぁ?と思ったので、こんなタイトルになりました(笑)

羽柴秀長は困っていた。



兄の部下達が適齢期に入り、次々と嫁を娶っていくのに、一人女っ気もなく過ごしていた部下が一人。

その部下に先日兄である秀吉が「おみゃ~は嫁御ををもらわんのか?」と尋ねたところ、表情一つ変えずに「そうですね、仕事が忙しいんでその話はまた後で」と返されたのだという。


その様子に心配になった兄は「秀長よ、あいつに嫁を見つくろってやってくれんかの?」と言ってきた。


確かに顔は整っている方なんだが、いかんせん愛想がなく顔の筋肉もほとんど仕事を放棄しているような状態だし、言い方もキツいことが多い。

女嫌いでも男色家でもないようだが、優先順位としては低いようで、自力で嫁を見つけてくるのは難しいだろう。


身分がつり合って年頃の娘を何人か広い人脈の中から考えていたら・・・当の部下自身はあまり気にしていないようなんだが、その家臣たちや友人が彼にふさわしい女でないと認めない!というようなことをそれとなくこちらに言ってきて・・・すぐにまとまるだろうと思っていた話が意外に難航している。


そのことを最近入った部下の尾藤久右衛門が聞きつけ、ぜひともうちの娘をその部下――石田三成殿の嫁に!と言ってきたので、兄に取り入ろうというつもりだろうかと懸念を抱き、酒を酌み交わしながら話をすることにした。





尾藤久右衛門はあまり酒が強くなかったのか、気付けばかなり酔っぱらって、娘の話をし始めた。


「うちの娘はどうしてあんな風に育ったのだろう・・・

もう一人の娘である長女は普通の、むしろよく出来た娘に育ったというのに・・・」

「いや三成の嫁にしたいという娘御もよく出来た娘だと聞いておるぞ?

なんでも領民から『稲荷の姫さま』『稲荷姫さま』と慕われておるとか」



「石田殿の嫁を探してると聞きました。ぜひともうちの娘を!」と言ってきたので、なんか裏でもないだろうなと調べたところ、尾藤久右衛門の領地での評判はもとより、娘御の評判もとてもいいものだった。

それもそうだろう。尾藤殿が治めるようになってから領民の生活はぐっと豊かになったようだし、税収も税率を上げていないのに上がっているし、収穫量も上がっているという話しだ。

そしてそれは以前治めていた領地でもそうだったらしいんだが、どうもその娘さんが生まれてから、彼の治める地はよくなっていっているようなのだ。


「稲荷のお社がたまたま娘がやっていた畑の傍にあったため、拝んでは畑仕事を色々とやっていたらしいんですね。

その畑は他の畑よりも収穫量が多く、味もいいってなって・・・おまけにそれは前の領地でも同じだったって話が付いてきてくれた領民たちから広まって、気付けばそんな風に言われていたんですよ。

稲荷神は五穀豊穣の神だって言いますから、実りの神が遣わしてくださった姫なんだって言いだす奴まで現れて・・・

そりゃあね、うちの娘は今まで見たこともないようなモノを作り出したり、考えたりしますけどね。

狼とか従わせちゃったりしますけどね!

出来る限り普通の娘でいさせようと情報をあまり与えないようにしたり、新たな領地についても詳しく教えなかったりしたのに、無駄にしかなりませんでしたねぇ。

・・・普通の娘でよかったんですけどねぇ・・・どうしてこんな風に育っちゃったんだろう?」


なんだかおかしな単語が出てきたような気がするが、酔っぱらっているんだろう。

さっきから同じような話を繰り返しては酒を飲んでいる。


「前にいたところではそこの大館さまに気に入られるし、上の娘の夫ともそういう意味ではないが仲がいいし。

もしも信長様に気に入られたりしたら・・・!いやいや、それよりもその辺の男に気に入られ、嫁にと請われ、嫁ぎ先を乗っ取ったりしたら・・・!!」


どんな娘だ?!と聞きたくなったがぐっと我慢。

相手は酔っ払い、相手は酔っ払い。と呪文のように心の中で唱え、ずっと疑問に思っていたことを聞いてみる。


「なぜ三成に嫁がせようと?

聞かせてもらった話から察するに、かなりすごい娘のようだが」

「石田殿が娘の好みのど真ん中だからです」


きっぱりはっきり、さっきまでの酔っぱらい特有のちょっと間延びした口調から一転して言い切った。

あまりにも自信たっぷりな様子に目を白黒させ、おそるおそる訊ねてみる。


「本当か?三成は言っては何だが真面目すぎて融通が利かないことも多く、倦厭されることが多い男だぞ?」

「娘の好みくらいわかります。なんせ父親ですから」


・・・なんだろう、この妙な説得力は。


「問題は石田殿が気に入ってくださるかどうかだよなぁ・・・

うちの娘、能力的にはかなりすごいけど、女の魅力としては今一つだしなぁ。

顔もそんなにすごい美人でもないし」


ぶつぶつと独り言を言いながら酒を煽る尾藤殿の姿に、正直ちょっとその娘さんに対して興味がわき、三成との出会いの場を設けてやることにした。

お互いが気に入ったら結婚すればいいだろう。


うんうんと一人頷く秀長。

二人しかいないので気付かれにくかったが、結局のところ彼もまた酔っぱらっていた。



翌日、二人は二日酔いではあったものの、お互い見合いさせることは覚えていたようで――


「あ、三成。お前もそろそろ手柄も立てたことだし、嫁の一人もおらんといかんだろう。

見合いするぞ。ちなみにこれは兄上とわしの命令だから」

「はぁ・・・」


二日酔いに痛む頭を押さえながらの秀長の突然の命令に、三成はきょとんとした表情を浮かべた。


「・・・見合いか」


多分決定事項だろうな、命令なんだし。と思いはしたが、見合いに思いを巡らす。

けれどそれはすぐに清正の「お前がもたもたしてるから秀吉さまや秀長さまにお手間をかけることになったんだろうが!」という怒鳴り声や正則の「逃げられんように気をつけるんだな」という言葉、吉継の「そうか、ついに三成にも嫁が・・・!」という言葉によって台無しになった。


仕事を終え、家に戻ると家臣にも吉継に似たような反応などをされて騒がれた。



なんだというんだ、まったく。


若干不機嫌になりつつ床に就いた三成は眠りに落ちる直前、いつ見合いをするのか、誰の娘なのか、どんな娘なのかを聞き忘れたことに気付いたが、まぁいいか。で終わらせて眠った。

そしてそのまま忘れてしまい、見合いの当日になるまで思いだすことはなかった。


常識人の父からすると、非常識な娘の存在は胃が痛くなったりするようです(笑)

なんであんななんだろうとは思いますが、可愛い娘だと思ってます。

石田さんはまじめな人だからきっと娘の手綱をしっかりと握ってくれるだろうと期待もしてます。

さて、その期待が叶うかどうかはまた次回!

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