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狐の花嫁  作者: 篠田葉子
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歴史のターニングポイント

この流れは書き出した当初から決まっていたのですが、書こうとした11月はほぼ丸々風邪を引き、治ったと思ったら心臓の調子が悪くなり、12月はパソコンが調子を悪くし、身内が事故に遭いました。

そんなにこの展開を書かせたくなかったのかと泣きそうになりましたが、書き上げました!

当初の予定と内容がちょっと変わってますが。

新キャラのことを掘り下げるのは次回に回します。

とりあえず投稿しないと・・・!

頑張りましたのですよ、りんの馬鹿!!

忍城攻めはその後、史実とさほど変わらない展開を経て開城となった。

関東征伐で唯一落城しなかった城として名誉を得た忍城と、戦下手の評価を得た三成。


この件で秀吉は三成に限らず、忍城攻めに関わった諸将に特別ボーナスのようなものを与えている。

三成が読んだ通りの意図があったのだとそこからも察せられ、上司を尊敬するが故の買い被りではなかったのだなと思うと同時に、いい主従関係だなと感心した。

つまり、アフターケアはできていたし、両者合意の上であったのだ。あの実現不可能な水攻めは。



しかし内情を知らなければどうだろう。


三成は派手な水攻めにこだわり失敗した戦下手だったり、上司の政治的パフォーマンスのために無茶ぶりをさせられた可哀そうな人になるのだ。


前者ならば三成を軽んじるだろう。

そのことを三成自身は特に気にしないだろうし、三成と親しい者も見くびってくれるのであれば扱いやすいだろうなと考える程度だろう。

しかし後者ならば。

場合によってはとても面倒なことになる。

例えばこれを機に三成が秀吉を見限るのではないだろうかと考えたり、付け入る隙になるのではないだろうかと画策したり――等。


しかも厄介なことに単なる噂でしかないのだが、三成の妻の伯父が秀吉によって手打ちにされたという話がある。

噂だと知っていても知らなくても、そんな話があるという事実は利用できる。

例えば「妻の身内にそんなことをするなんて酷い主君は見限ったらどうだ?」とか「ただの噂?そうだな。今の秀吉公ならばそうすることも可能だな」だとか。


傍から見ると秀吉と三成を引き離す、千載一遇のチャンスだった。

単なる誤解でしかないが。


最もそんな内部事情など知る余地もないから、秀吉と三成を引き離そうなどと画策するのだが、この時の判断がこの先の歴史を決定付けたといっても過言ではないと後世の歴史家たちは語る。




寝返らせたい時やスパイ行為を行いたい時に有効な手段とはどのようなものがあるだろうか。

一般的であり、いつの時代でも効果が保証されているもの――いわゆるハニートラップが三成に仕掛けられたのだった。

最も政略結婚で嫁いでくる場合などは嫁ぎ先よりも実家を重んじるパターンもよくあるため、間諜や工作要員でなかったとしても無防備に受け入れられるということはまずないが。



そんなわけで三成に側室ができることになった。

もちろん三成が望んでというわけではない。

三成にとって嫁とは暴走するものとしてカテゴライズされており、身近に暴走要員が増えるのか。という感想を抱いたほど、自らの意思で娶るのではない。

その認識に異を唱える者もいたが、三成の周辺の既婚女性がほぼそんな感じだったので逆に三成に説得されてしまった。


この時代、褒美のような形で嫁を貰うことはよくある話だ。

むしろある程度の地位と身分にある男の妻が一人だけの方が珍しい。

その珍しい男の一人である三成は特に女嫌いだとかいうわけではなく、優先順位が仕事であるだけだ。

そんな三成に先の忍城攻めでは貧乏くじを引かされたね。と三成を憐れんだとある方が三成にりんよりも容貌とスタイルの優れた女性を紹介してきて、側室にするといいと言ってきたのだ。

三成は自分よりも地位も身分も上の相手からに断れず、秀吉たちに判断を仰いだが、善意でしている(との態である)相手との間にあえて亀裂を生じさせることもないし、できれば相手との関係は維持しておきたいし、嫁が複数いるのなんて普通だし。という運びだったのだが、一応娶ることになったからには相手には誠実に対応しなくてはという考えと、りんには悪いことになったな。という想いから、そのことを一足先にりんに伝えることにした。


今までは嫁と言えば一人しかいなかったため、りんのことを指していたのだが、これからはそうもいかなくなるな。と、三成の嫁と呼ばれ嬉しそうにしていた自分の妻を脳裏に描き、ほんの少し申し訳なく思いながら、説明をした。


動揺し、騒いだりするかと思いきや、意外にもりんは落ち着いて話を聞いていた。

三成は自分が妻にものすごく愛されているという自覚があったので怒り狂ったり嘆き悲しんだりするんじゃないかと思っていたが、(一応)愛する妻のそんな姿を見たくなかったのでほっとした。


そんなホッとしている三成の近くに控える配下たちは、真顔で冷ややかな空気を放つりんに怯えていた。

『なんで三成様気付かないんですか~?!』

『すげぇ怖いんですけど!?』


三成がりんに伝え終わり、仕事へと出るのを見送ってから、りんは地を這うような低い声で「おのれ家康・・・!」と呟いた。


とある人物が誰かはあえて(りんが暗殺しようとか目論んだら困るから)黙っていたのに、なぜその名を!?と家臣の中には驚きを露にし、慌てて取り繕った者がいたが、りんの視界には入っていない。


そもそもりんは三成に側室をあてがったのが家康だとわかったり知っていたわけではなく、三成の敵=家康でインプットされていたので三成が好きで娶ったわけでも、相手が自分から望んでやってくるわけでもないのでやり場のない怒りを向ける矛先にするには手っ取り早い相手だったというだけなのだが。

女性は浮気をされた時、浮気をした男よりも相手の女を恨むという。

しかしこの場合はそれに当てはまらず、平成の価値観を持つりんからすれば「君可哀そうだからこの子あげるよ」みたいに嫁がされてくるなんて酷い話だし、そんな女性に酷いことはできない。

ましてや三成が受け入れるというのだから。




三成を秀吉の陣営から引き抜いたところで勢力図に大きな影響はない。

が、三成を取り込むことができれば確実に役に立つ。

家康の周囲には三成のような文官的能力に優れた人材が少なく、また陰でこそこそ動いて裏切るくらいならば堂々と敵対してくるであろう性格も相まって、家康に限らず意外かもしれないが三成は欲しがられる人材であった。


そして家臣たちはりんの言葉から確信した。

この側室の一件、背後には家康の存在があるのだと!


何故か妙に家康のことを警戒していたりんの存在と以前三成に自分の下に来ないかというような意味合いのことを言っていた家康の存在がその想いをより深くした。

三成に側室を持つよう勧めてきた人物は家康と直接的にそこまでつながりがある人物ではないが、それもきっと家康が自分が背後にいることを気付かせないためだったのだ!

おそらくは直接的にそうするよう言うのではなく、疲れた様子で「三成殿のような部下がいればなぁ・・・」とでも言って、相手が自ら動くよう誘導したのだ!

それならば後で何と言われようとも命令したわけではないので言い逃れられる!

何か企んでそうな顔をしているし、間違いない!と。



・・・実に酷い言いがかりである。



「おのれ家康おのれ家康おのれ家康おのれ家康おのれ家康・・・・!」と丑の刻参りでも始めそうなりんの様子に、家臣たちはこれからは徳川に対し、最大限の警戒をもってあたらなければならない。と胸に刻みつけた。


・・・りんが暴走して大変なことをしでかしてしまわないように。という意味でも。





後の歴史家たちは語る。

「おそらく石田三成が側室を取った時期が歴史のターニングポイントになるのではないだろうか」と――



「これで嫁って呼ばれなくなるからって抵抗されてる」と友達に愚痴ったところ「名前で呼んでもらえる機会が増えるよ!」と言われました。

その後すらすらと書けるようになりました。

・・・やっぱり邪魔されていたようなのです。

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