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狐の花嫁  作者: 篠田葉子
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想定外の問題発生

大変長らくお待たせしました!

病院行って休んだのをいいことに更新なのです(笑)

本当は昨日上げる予定だったんだけどなぁ(´-ω-`)


今回は忍城攻めといえば甲斐姫様!と嫁の御父上の改姓の二本立てになっております。

忍城攻めは順調に進んでいるはずなのに、三成と吉継の顔色は冴えない。

ついには頭を抱えだしそうな様子だ。

その理由は彼らと近しい立場の者ならばすぐにわかっただろう。



水攻めとは直接的な戦闘行為を行わないという意味ではない。

揺さぶりをかけるためやパフォーマンス的なものなど色々な意味はあるが、この戦いでもすでに何度か戦闘行為は発生している。

ほとんどが小競合い程度の規模だが、それでも相手方の御輿とされている人物はわかった。

若く、美しい女性。

どうも忍城の姫らしい。

若く美しい姫のため戦う、なんて大いに兵士たちの士気の上がりそうなシチュエーション。

おまけに姫自身戦場に出向いて指揮も取っているし、敵を倒してもいる。

まるで物語のような展開に、三成たちの陣に食料などを売りに来ていた商人たちが面白がって話題にしたものだから、周囲にも広まり、姫は一躍時の人となった。


戦をする場合、終わり方や終わった後も考えておくのは当たり前だ。

三成や吉継は戦後処理なども秀吉の下、何度も行っているので、その経験が今回の戦いの最も反発の少なく、効果的な決着の付け方がわかってしまった。



「あぁ、また秀吉様に奥方が増える・・・」

「民衆に人気があるというのは下手な家柄よりも強力な後ろ盾だからな・・・」


城主が男であれば切腹して首を差し出して終わりだろうが、それが姫の場合事情が変わってくる。

しかも領民に慕われている姫だったのが、噂を聞いて周辺でも人気になっている。

下手をすると三成たちだけでなく、秀吉の評価にもかかわってくる。


しかし姫が御輿として振る舞っているならば、男の場合とは違う決着方法も導き出せる。

姫を秀吉様に差し出すならば、と交換条件にして降伏を引き出すこともできるかもしれない。

姫を秀吉に差し出すことで決着をつけるならば服従の証にもなるし、姫は天下人の奥方になることで名誉が与えられたのだと民も納得する。

姫をこちらサイドにつけられれば支配下に置いた後の統治もスムーズになる確率が上がる。


政治的に見ればいいこと尽くめだ。

もちろん豊臣軍からすればだが。


問題は秀吉を取り巻く女性たちがどのような反応をするかだ。

おねはどのような女が側室となろうとも揺るがないだろう。政治的な面倒さえなければ。

しかし他の女性たちは違う。

秀吉に迷惑のかかるような足の引っ張り合いはその高いプライドと秀吉に対する愛から絶対に行わないが、自分を磨き、少しでも秀吉のためになるようにと日夜努力し、火花を散らしているのだ。

そこに武に秀でた今までにいなかったタイプの女性を放り込んだら――色々な意味で荒れそうな予感しかしない。

まぁ武に秀でた女性なら前にも亀姫という前例があったが、彼女は秀吉の奥方の一員にはならなかったし、どちらかというと嫌われていたので・・・

武に秀でた女性だから嫌われていたのではなく、あまりにも積極的に秀吉に接したため反感を買ったのだが、それが武に秀でた女性共通だったらどうしよう。などと考えてしまい、秀吉の側近である二人は戦後処理とその後を思い、頭が痛い思いをしていた。


それでも姫が秀吉を嫌がったら。という状況を想定していない辺り、二人は秀吉の人たらしっぷりを微塵も疑っていないことがうかがえる。





一方で嫁であるりんもこの度の戦いで予想していなかった事態に面していた。

「え?伯父上が秀吉さまに手打ちにされた?」


知らせを聞いたりんはしばし考え込むと、父に訊ねた。


「あの・・・うち、伯父上ってお一人だけですよね?

そんな話ありました?」

「ないな。確かに死因は戦死ではないが・・・おそらくは秀吉様と三成殿との間に亀裂を生じさせたい者の策ではないか?」

「なるほど」


幸いにも正しい筋からの情報が先に来ていたため問題にはならなかったが、正確な情報が伝わっているとは限らないし、それが正しいという証拠もなければ疑心暗鬼になる可能性もある。

それを狙っての策。と父上は考えたようだ。

単なる伝言ゲームの結果、尾ひれや背びれが付いておかしな話になったという可能性もあるけど、楽観的に考えるよりは悪い状況を想定しておくべきだ。


問題はそれが誰かの策略だとするならば、誰がそれをしたのかということ。

可能性が高いのはやはり家康だろう。


「ただなぁ、兄とうちはあまり折り合いがよくなかったからな」

「そうですね」


表情を曇らせる娘に苦笑する。

元は武田の領地で暮らしていたのを、長篠の戦を機に兄である知宣を頼り、近江に赴き、その紹介で秀長の家臣となった。

娘のおかげで領地は彼女の暮らす地ほどではないが富み、幸いにも秀長の覚えもめでたく、それなりの出世を遂げている。

しかしそれが兄には気に入らなかった。というより娘を気味悪がっていたのだ。

娘自身も仕方がないことだと受け入れていたが、それを父親である自分も受け入れられるかというと別問題だ。

多少変わっていようとも、可愛い娘を疎む相手と仲良くはやれず、ここしばらくは縁遠くなっていた。

なので真実秀吉に手打ちにされたのだとしても父親である頼忠を筆頭に、家中は誰も秀吉に悪感情を抱くことはなかっただろう。


「その噂、どこまで広がっているのでしょうか?」

「さてなぁ。

しかしこれは面倒なことだな」

「え?」

「お前だけでなく我らも三成殿にとって利用価値があると判断されたということだ」

「それは――」


三成はただでさえ敵が多い。

その分彼と近しい人は彼を裏切ることはないと言い切れる人たちばかりだ。

だが直接的な攻撃ならばまだいい。

絡め手を使われたら――


「これを機にわしは改姓して三成殿の下に身を寄せようと思う」

「父上?!」

「近くにいた方が手伝えることも多いだろうし、使える手は多い方がいいだろう」

「っ!」


父の言葉にりんは息を飲み、黙って頭を下げた。




「でも義兄上に対する策略だとは思いませんでしたの?」

「あのお人にこのような手が有効だと思うか?」

「え~と・・・」

「だいたい三成殿の方が明らかに危なっかしいだろうが」

「確かに!!」



りんと聞いていた家臣たちは「ものすごい説得力だった」と後に語った。



りんが今やってる大河ドラマか、今流行りの日本刀ゲームでも知っていれば全体的に話がもう少しスムーズに色々動いたかなぁとか思いました。

村正集めはしてそうですけどね(笑)

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