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狐の花嫁  作者: 篠田葉子
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北野大茶会 家康視点

家康さんが書いてて若干暴走して慌ててたら、嫁も暴走しました。

暴走したけれども、家康さんはこの話の中での常識人枠にいます。

ただし、彼が持っているのはこの時代の常識だから・・・

家康のことを観察していたりんだが、家康の方でも同じくりんを観察していた。


・・・噂通り賢しそうではあるが、女としての魅力としてはそれほどでもないな。


目立った美人というわけでも、際立って愛らしい顔立ちというわけでもなく、愛嬌で補うタイプのりんだが、戦国時代で有名な美人である茶々たちのそばにいては当然見劣りして見える。


こちらを見てくる目に高い知性と理性を感じたが、しょせん女というものは高い地位や権力に目がくらみ、それに媚びる生き物だ。と感じたものを大したことはないと切り捨てた。


甥たちと親し気に話している三成をじっと見つめ、アレがあの石田三成の妻か。などと思う。


三成は会場中を気忙しく動き回っているのだが、歩く速度が異常に速いのでその様には見えない。

時折起こるトラブルにも迅速に対応している。

そんな三成を見ているとしみじみと「こんな部下が欲しい。というか三成が部下に欲しい」と思ってしまう。

引き抜けないかとも思うが、三成は秀吉に対して強い忠誠心を抱いているから、今の状況では無理だろうなと、声をかけたことはない。

しかし機会があれば引き抜きたいとも思っている。


何せ家康の下には(自分も含め)事務処理や内政が得意だったり好きな者がほとんどいない。

秀吉の配下にはそろばん勘定が得意な者は三成以外にもいる。

が、三成の場合、家臣たちも揃って高い事務処理能力を保有しているのだ。

この時代、主君を見限って変えるというのはよくある話で、藤堂高虎など主君を7回も変えている。

ちなみに7回目である最後の主が徳川家康で、そのひとつ前が豊臣秀吉である。史実では――

今はまだ、7人目の主を彼は得ていない。





江戸時代になってから女城主が禁じられたということからも察せられるように、この時代は女性が城主になることはそこまで珍しいことではなかった。

それでも女性の活躍の場は少なかった。

差別がまるでなかったとは言わない。

けれどどちらかというと役割を区別していたのだ。


家を、血を。守るということは大事なことであり、子を成すというのは女性の一番の仕事で。

平成の世ほど医療が発達していなかったこともあり、ある面においては女性は大事にされていたとも言える。


そんな事情もあり、女の役目は子を成すことであり、でしゃばるものではない。と考える男も多かった。


家康にも似たような側面があり、女の浅慮で三成の足を引っ張られでもしたら困るな。なまじ賢しいと自らの能力を過信することがあるからな。と、そのように思ったのだ。


家柄もそこまで良いものではなく、賢しさと子をたくさん成せる体が取り柄の女。

そう家康が思ったのはりんという実物を見てなのか、三成に対する感情からなのか・・・





「なんだか三成さまが誰かに狙われているような気がする!!」

「奥方様、めったなことを言わんで下さい。

というか、どこからそのような発想を?」

「いや、なんかこう・・・どっかから何かを受け取りました」

「・・・おかしな託宣を受け取らんでください」


深々とため息を吐く左近に、しゅんとうなだれながらも、愛する旦那様を狙う不届き者は誰だろうと思考と視線を巡らせる。

当の三成は甥の義理の父親である本多忠勝と楽しそうに会話している。

・・・ただし三成をよく知っている人物でないと楽しそうだとはわからないだろうが。


「あぁ、三成さま楽しそう」

「・・・会話、かみ合ってませんけどね」


三成はひたすらに秀吉様が、秀吉様は、秀吉様と・・・と秀吉について語り、忠勝は家康様は、家康様が、家康様に・・・と家康について語っている。

かみ合っていないが、盛り上がっている会話に、間に挟まれた信之は苦笑している。


忠臣同士気が合ったのか、信之を介して、いつの間にやらこの二人は親しくなっており、信之への私信に「~と忠勝殿に伝えておいてくれ」などと書くまでになっている。

ちなみに三成も忠勝も、そのやり取りについて「手続きが楽になったな」くらいにしか思っていない。


しばし歓談をした後、また三成は仕事へと戻っていった。






「北条とはやはり戦になるようだな」

「これほどの規模の宴を開けるだけの財力と権力を持つ相手に、敵うと思っているのでしょうか」

「意地か、それとも現実が見えていないのか」


華やかな宴の裏で、密やかに交わされる会話。

財力と権力を見せつけるために開かれた宴。という面しか知らない者たちには、これは北条氏へのけん制の一環だととらえられていた。


「しかしどれほど上り詰めようと、彼の者には養子ばかりで血の繋がった後継ぎはおりませぬ」

「血の繋がりがあると言えるのは姉の子どもくらいのものか?」

「あれだけたくさんおなごを抱えておりながら、子の一人もおらんとは」

「おなごたちが寵を激しく争っておるからの。

もしできたとしたらさぞかしもめるだろうよ」

「正室としても穏やかではないでしょうな」


現在秀吉の子は彼がまだ長浜にいたころに夭逝した子しかおらず、万が一を考えて一刻も早く子どもが欲しい。

自分たちの誰が産んでもいい。

秀吉様の子どもだという時点で無条件で愛せる。と皆が一致団結して子どもができることを渇望しており、その主体となってりんから聞いた妊娠しやすい時期の娘をあてがっているのがおねである。という事実は知られておらず、実際に聞いたとしても、女性はすんなりと信じても、男性はなかなか信用しない。


そのためこのまま秀吉が天下を治めたとしても、実子ができようとできまいと、後継者問題でもめるだろうというのが世間一般の考えだった。

ちなみに現時点では秀吉と奥方たちの間にその辺りを問題視している者は誰もいなかったりする。


ようやく宴が終わりました。

次回から北条征伐ですね。

甲斐姫が奥方陣営に加わりますよ(笑)

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