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狐の花嫁  作者: 篠田葉子
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千利休と徳川家康

北野大茶会、まだ終わってなかったのです。

前回から続いてます。

サブタイトル通り、三成さんのある種キーマンなお二人の登場です!

秀吉主催の北野大茶会は大成功と言ってもいいであろうものだった。

多少のトラブルはあったものの、あちこちで楽しげな様子が繰り広げられていた。


盛り上がっている場の一つに、りんが持ってきたゲームをしているところもある。

トランプやオセロなど色々持ってきたのだが、意外に受けたのが百人一首である。

歌自体は当然ながらすでにあったが、競技かるたの発祥は江戸時代初期で、教養を競うという意味でも盛り上がった。





宴とは外交の場であり、社交の場である。

今回の茶会もそうである。


そのためりんはも今まで会ったことがなかった人物と儀礼的な挨拶から始め、色々な方々と色々な意味でためになるお話などをした。


最も出席者の名前は事前にわかっていても、写真などがないため、顔と名前を一致させるのに一苦労だった。

おまけにりんは日本史が得意ではなかったため、読み方がわからない人物も多く、会った人物が増えると印象が薄れていく者も多くいた。


そんな彼女でも強く印象に残った人物が二人――千利休と徳川家康だ。



千利休さんとは実は顔を合わせたことはあっても、私たちが出合うと面倒くさいことになりそうだということ言われ、あまり親交はなかったのでどんな人なんだろうとちょっとワクワクしていた。


(知っている)歴史上の有名人と会う時はワクワクドキドキする。

まぁ大抵「あ~、こんな人だったんだ・・・」と遠い目をしたくなるような人が多いのだけれど。

そして千利休さんもその例にもれなかった。



彼はたくさんの人を相手に、真剣な面持ちでお茶を点てていた。

真剣そのものの表情なのに、どこか嬉しそうで、本当に茶の湯が好きなんだなぁと思い、客が途切れるのを待ってから声をかけた。


「お久しぶりです。利休様」

「――あなた様でしたか。

こちらへどうぞ」

「え?」

「一服点てて進ぜましょう」

「あ、ありがとうございます」


一応前世では(お茶菓子目当てではあったけれど)子どもの頃(役所主催の無料のところで)お茶を習ってたこともあったし、今世でも嗜みとして教わっているので、ありがたく頂戴することにした。



茶室は密談に向いている。

密談をするような人は地位や身分がそれなりの人だ。

故に茶菓子は権力者とつながる手段でもある。

りんは今回の茶席に手製の茶菓子を何種類か持ち込んでいた。


甘味などの嗜好品はいつの時代も贅沢品だ。

材料自体もそうだ。

だから気軽に作れるようなものではないため、新しい菓子はそう簡単には生まれない。


りんはこの時代にはまだない和菓子や洋菓子、洋菓子のテイストを盛り込んだ和菓子などを用意した。

その中に抹茶を使ったものがあったのだが、それがりんにとって思わぬ展開をもたらせた。



「――ふむ。石田殿の妻女はこのようなお方であったか」

「え?」

「私ほど茶の道を深く愛すれば、茶の場にてその人を感じ取ることもできるようになるのです」

「ナニソレコワイ」


ヤバい。この人目がマジだ。


「しかし此度の茶菓子、いくつかをお持ちいただいたということですが・・・これはいただけませんな」

「え?美味しくありませんでしたか?」


抹茶を使ったお菓子だから気に入ってもらえると思ったんだけど・・・


「何をおっしゃいます!

茶を使っていて美味しくないわけがないでしょう!!

しかし茶は点ててこそ。点ててこそなのです!!」

「は、はぁ・・・」


この人今いくつだっけ?

血管切れないだろうかと不安になってくる激昂具合だな。


「確かにあなたは茶というものをご存知のようだ。

しかし私もまだまだ未熟者!

茶の道を究めて見せます!!

茶菓子は必要ですが、茶を菓子にするのは邪道!!」

「美味しければいいんじゃないでしょうか」

「何をおっしゃいます!そのような心持では茶の道は究められませぬぞ!」

「究めるつもりないですけど・・・」


あまりにも興奮されるので、秀吉様の部下に「これ以上この場にいたらますます興奮しますので・・・」と退席を促された。

正直助かった。


「なんと申しましょうか、あの方とりん様はこう・・・美学が違う?感じで、会うと絶対面倒なことになると石田様が仰っておりまして・・・」

「痛感いたしました」


退席する私を別の場所へと伴う秀吉様の配下の人に、冷や汗をかきながらの説明を受けた。


道理で今までほとんど接触しなかったわけだ。

三成さま、ありがとう!愛してます!!!


「あの方も悪い方ではないんですが・・・」

「なんといいますか、茶道バカ?ってカンジの方でしたね」

「そうですねぇ。天才となんとかは紙一重と申しますし」

「紙一枚の差は大きいですわね」

「真に」


私たちはしみじみとため息を吐いた。その時――



「おや、石田殿の奥方ではないですか?」

「え?」


声がかけられた。

うつむいていたため、誰に声をかけられたのだろうと顔を上げると――立派なお腹の男性の姿。


「まぁ!ご挨拶が遅れてしまい申し訳ありません!」

「いやいや。先ほどのやり取りはこちらまで聞こえてきておりましたからな」

「ほほほ。利休様は茶の道を深く愛されておりますから」


とりあえず笑ってごまかす。

私の失態ではないのだけれど――目の前の人物、徳川家康の前で弱みを見せるのは怖い。


「養女の関係で縁戚関係ではありますが、お会いするのは初めてですな」

「そうですわね。

その機会に恵まれませんでしたから・・・ですが今日お会いできて光栄ですわ」


笑顔でそう言われ、にっこりとそう言ってやる。

お互いに笑顔で牽制しつつ、相手に探りを入れている状態である。


その後当たり障りのない会話を少々して、その場を離れた。





ようやく三成さまの(未来の)敵の姿を目にすることができた。


秀吉様は中小企業の社長が一代で大企業まで上り詰めたってカンジの人で、皆から慕われている。

営業とか会議でOLさんが喜んでお茶を持っていくタイプの人だ。


家康様は大企業の役員さんとかタイプで、油断すると利益をガッツリ持っていかれそうな、気を張っていないと怖いカンジの人だ。

会議室とか空気凍ってるからってOLさんにお茶持っていくの怖がられそう。



ちょっと接触しただけだけど、あの人とあまり関わり合いになりたくないな。

なんか色々読まれそうで怖い。



今日ちょっと話してみた結論としては家康様は目が笑ってないタイプで腹黒属性っぽい。

まさに狸親父!



・・・正直言って、三成さまのラスボスとなる徳川家康が割とまともそうで安心した。


利休さんはちょっとアレでしたが、家康さんは(今のところ)普通のお人でした('◇')ゞ

りんは未だに平成の時代で例えたりしてしまうようです。

いや~、しかし登場するまで長かったですね(;^ω^)

(出てもちょっとだけとか言ってはいけない)

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