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狐の花嫁  作者: 篠田葉子
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新たな人生の始まり

生まれ変わった彼女はそのうち記憶が無くなって、普通の子供になるもんだと思ってます。

前略、前世のお父様お母様。

お元気でしょうか?

私は元気に――赤ん坊をやっております。



トラックに轢かれて死んだと思ったら、ほぎゃあほぎゃあと泣いている赤ん坊に生まれ変わってました。

どうも私は出産直後の時に記憶が戻ってきた模様です。

その後産湯につかり(これがなかなか気持ちよかったです)正直かなり抵抗のある初めてのお食事を行い、漏れ聞こえる会話に必死で耳を傾けた結果・・・どうやらここは昔の日本の様です。


しかも私はどうもそれなりの家に生まれたようで。

父親が殿と呼ばれ、母親がお方様、奥方様と呼ばれています。

おまけに私は姫と呼ばれています。

ということは将来は政略結婚でもさせられるんですかね?


しっかし未だに食事に慣れませんが、それ以上に羞恥プレイなのはおむつですよね!

母上の胸に吸いつくのも侍女の人たちにおむつ替えてもらうのも恥ずかしくて恥ずかしくて!

赤ん坊なもんで涙腺も緩いからいっつもその度に泣いてますよ。


前世の記憶って小さい頃は皆持ってる、みたいな話を聞いたことあるんですけど、ひょっとしてそれで皆泣いてるんでしょうか・・・?


赤ん坊だから体力もあんまりなくて、長い間起きてられなくて寝てばかりの毎日を送ってます。


多分前世の記憶ももう少し大きくなったら忘れちゃうんだろうなぁ。

保育士やってた友達が何年かに一度変わった子を見ることがあるって言ってたけど、その子たちって大体小学校入るころには全部忘れて普通の子と同じになっちゃうって言ってたし。


まだハイハイも出来ない赤ん坊なので、暇でしょうがないのでこんなことを考えては時間を潰して、気付けば寝てるような状況です。

もし記憶があるまま成長したら、前世の記憶を活用したいなぁと思う今日この頃です。


ぐぅ・・・


「あら、姫様。いい子でおねんねしてますわ」

「さっきお乳も飲んだしねぇ。あまり泣かないいい子だわ」

「どんな姫君に育つのでしょうね」





月日は流れ――ようやく寝返りが打てるようになりました!

時代が時代なので、ベビーベットなんて当然なく、布団で寝かされているので寝返りさえ打てればごろごろとかなり移動ができるので、ご~ろごろと移動をしていたら・・・目が回りました。

おぇ。気持ち悪ぅ・・・


ごろごろ、ぴたっ。ごろごろ・・・と止まったり転がったりを繰り返していた私を微笑ましそうに見守っていた侍女さんたちでしたが、危ない場所に近付くと抱き上げてくれました。


ちょっと前までは赤ん坊過ぎて眼がよく見えなかったのですが、最近はわりと見えるようになってきました。

おかげで羞恥プレイ度が進んだような気がします・・・

恥ずかしいので授乳時は母親の顔を見るようにしてます。

・・・そういえば赤ちゃんって授乳の時、母親の顔を見るんだよ~って保育士の友達から聞いたなぁ。

やっぱり赤ん坊は皆前世の記憶持ちなんだわ。


ごろごろ転がりながら大人達の会話を聞いていましたが、未だにここがいつごろなのかよくわからないのが悩みです。

年号なんて聞いても、そこまで歴史に詳しくなかったですし、父親の名前も織田信長!とか徳川家康!みたいな有名人でもないので判断する手掛かりがないんです。

近隣の武将も超有名人がいたりするわけでもないので、わかんないんですよね。

服装とか物とか見てる限りでは、日本に間違いはないと思うんですけど、日本によく似た異世界とかっていう可能性も無きにしも非ずですし。


とりあえず現在までに分かったことは私の父親の名前は尾藤久右衛門びとうきゅうえもんという名前で、姉がいるようです。


そして転がれるようになったところで、乳児に変わりはなく、暇な毎日を送ってます。





ハイハイができるようになりました。

これが意外に疲れます。

べしゃっと潰れるんですよね、長時間やってると。

おまけに体力があんまりないので、そのまま眠っちゃったりとかするんですよね。


それでもハイハイができるようになると行動範囲が一気に広がります。

それで気付きました。

前世の記憶持ちってことは、この人生イージーモードになってるんじゃない?!なんていうのはただの錯覚だったと――


第一の理由。

字が読めません。

父上の読んでいる書物を背後から見たのですが、正直何が書いてあるのかさっぱりでした。

そうですよ、この時代がいつなのかはわかりませんが、父上がまだチョンマゲなんですよ!?

当然使ってる文字も変体仮名ですよ!旧字体ですよ!!

読めねぇよ!!!

漢字の部分ならまだ何とか・・・読める個所もありますが、続け字とかムリ!

達筆過ぎて読めない!っていうか上手いのか下手なのかすらわからないから!!


第二の理由。

竈の使い方が分からない。

大きくなったら転生モノの王道にのっとって料理でも・・・と思ったんだけど、当然この時代ってコンロないんだよね!

竈の火力調整ってどうやるの?!

そしてスパイスの類がほとんどないんですけど!?

おまけにどうやら醤油がまだないっぽい!!

醤油の作り方なんて知らないよ?!


注:醤油は戦国時代の書物『節用集易林本』(1597年刊行)に初めて登場する。

戦国時代後期からあったか、そこくらいに広まったと思われる。



とりあえず今が徳川の時代じゃなくて、せめて戦国時代でありますように。

徳川幕府の間は確か肉食が禁止されてたはず。

戦国時代は精が付くからといって、食べてもOKだったはず!


・・・ていってもこの時代ブタとかいるのかしら?

イノシシを家畜化したのがブタってことは、イノシシ育てたらブタになるかな?・・・ならないか。

ジャージー牛もホルスタイン牛もいないだろうしなぁ・・・



なんだか前途はなかなかに多難のようです。


0歳児から8か月くらいですかね?

普通の赤ん坊よりは成長速度が速いと思われます。

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