博多でのお仕事
ハリセンがパワーアップしました。
細川忠興さんとも出会いました。
小西さんは苦労人のようです。
・・・前書きに何書いたらいいかわかんなくなってきました。
りんは三成に呼ばれた理由を博多の商人たちや地元の有力者たちとの折衝役だと思っていた。
三成を筆頭に、都市計画や港町の復興などは慣れている人材が集められているだろうから、三成の不得手な面をフォローする人材として呼ばれたのではないかと考えていたのだ。
しかし実際三成の元に来てからというもの、外交面ではなく、実務面で重用されている。
「三成さま、わかってて呼ばれたのかしら?」
上洛してきた義久・義弘を初めて見た時、りんは「ドワーフに似てる」と思った。
人種が違うのか、この時代の日本人と比べても小柄でありながらがっちりとした骨格。太い眉。顔立ちも濃い。
りんが前世で見たドワーフのイメージそのものだった。
しかもその二人がたまたま似てるだけなのかと思いきや、島津領に来てみると他の人たちもドワーフに似ていた。
そのためりんの中で島津=ドワーフの方程式が成り立っている。
つい先日ぽろっと「島津さんマジドワーフ」と言ってしまい、島津家の家臣に「ドワーフとは?」と聞かれてしまったことがあった。
それに対し、りんは「すごく強いということです」と返事をしている。
閑話休題
そんな島津家の人たちを筆頭に、どうも九州の人たちは女の人に優しい?のだ。
三成たちに言われたら反発するくせに、りんが言うと渋々ながら従う様子に初めは「あれ?」と不思議そうにしていたが、しばらくするとどうも女の人を尊重する風土のようだとわかった。
「女に転がされるのも男の度量!」というスタンスなのか「女は守るもの!」でありながらも些細なことであれば譲歩してくれる。
あくまでも譲歩してくれるんであって、女性には甘いということではない。
りんが折衝役を担っていくうちに筋が通ってさえいれば男性であっても言うことを聞いてくれるようになった。
しかし納得すれば問題ない!というのと本で殴られても文句を言わない!というのはイコールで結ばれないと思うのだ。
「計算が間違っておる!!」
「ちょ、三成さま!巻子本で殴ったら本が傷みます!」
「そっちですか奥方!!」
「むぅ・・・どこで間違ったのだろうか」
「そしてあんたも少しは気にしてください!!」
島津家の経営は「よく今まで何事もなくやっていけてましたね・・・」とりんが呆れるを通り越して感心するほど、ザルを通り越したワク会計だった。
そんな彼らを巻子本でビシバシと時に殴りながら指南する三成に、音はすごいが衝撃はさほどでもないハリセンをりんが代わりにと与えたが――何を考えたのか攻撃を受ける側が「この程度の武器で倒れるわし等ではないわ!!」とハリセンに刃を付けたり鉄板を仕込んだりと凶悪化させてしまった。
「どうだ!これならば倒せるぞ!!」
「倒しても倒されてもらっても困るんですけど!?」
半泣きになって訴えるりんに、誇らしげに笑う島津。
その様子に外野は「うわぁ・・・さすが島津」とドン引きだ。
「自分を攻撃するための得物をどうして凶悪化させてしまうんでしょうか?
しかも改良いや改悪?が済んだ品物を三成さまに『攻撃するならばこれぐらいの威力のあるものでなくては!』って言って渡してたんですけど!?」
「あ、いや・・・さすがに三成殿も大人しく受け取ってはいましたが使うつもりはないようですので・・・」
「あったら大問題じゃないですか!!」
先ほど目の前で繰り広げられた光景に思わず同僚の小西殿に泣きつく。
三成さまはお忙しい方なのでこんな些細なことで煩わせてはいけません。
小西殿もお忙しい方だけど、ガラシャさんの旦那さんとの対面以来、なんとなくおしゃべりをする間柄になりました。
ちなみにガラシャさんの旦那さんとの初対面はこんな感じでした。
「ガラシャ様にこちらに来る前にお会いして~」
「誰だガラシャとは」
「え?自分の奥方の名前もお忘れですか?」
「私の室は玉という」
「その玉様です。洗礼されたとのことでそう名乗ってらっしゃいましたよ」
「・・・いつの間に洗礼など!!」
「ってか、普通洗礼名は名乗らないものなんですが・・・」
「あれ?そうなんですか?小西様」
「棄教するよう文を出さねば!」
「そうなんです。洗礼の時に聞かなかったんですかね?」
「・・・熱心に耳を傾けてそうでしたので、聞いたうえであえて名乗ってるとかでしょうか?」
「はっ!洗礼をしたのはまさか男なんじゃ・・・!!
玉の姿を見た男など殺してしまえ!!!」
「「少し落ち着け!!!」」
――というものだったが、思わず張り飛ばした私と小西殿は悪くないと思う。絶対に。
ちなみに旦那がいない隙にこれ幸いと洗礼をしたんだとか。
普通名乗らないってのも聞いたけど、洗礼したんだぜ!やっは~!!と自慢?したかったのでそう呼べと言ったんだとか。
旦那への返信に「洗礼名で呼ばせたら私の名前を呼ぶのはあなただけになりますよ。嬉しくないのですか?」と書いて棄教を断念させていたガラシャさんだが、誰かに入れ知恵されたのか、自分で考えたのかどっちだろう。
まぁ詳しくは戻ってから直接聞いてもいいし・・・それより今は――
「島津様たちは三成さまとは微妙に会話がかみ合ってなかったりもしますが気はあってるようです。
けれど三成さまは堺町奉行であり、各地で進行中の太閤検地の奉行でもいらっしゃったりと超多忙ですのでいつまでもこちらで指揮をとったりとかかわり続けてはいられません。
三成さまは都市計画を立案し、実行段階になった時に何事もなく後任の方に引き継ぐことができるのでしょうか・・・」
それが不安だ。
小早川隆景さんとやらが筑前名島城の城主になり、三成さまのプランを受け継ぐのだそうだが――どんな人か記憶にない。
教科書に載ってたっけ?
聞き覚えはあるような――ないような。
「博多の復興と島津家は別に直接関係はないですし、その辺は大丈夫だと思いますよ」
「入り江や湿地を埋め立てるような大規模都市計画の傍ら帳簿の付け方から教えてるって・・・落差の激しい仕事ですよね」
「三成殿は不満どころか疑問にも思っていないようですがね」
「島津さんたちも内政を指南してほしいってわざわざ出向いてきてるくらいですけど」
「仕事で忙しい三成殿にわざわざご足労頂くわけにはって言ってますけど・・・問題はそこですかねぇ?」
「違うと思います」
まぁ帰国することになったら宴会でお別れの挨拶をして、さっさと地元に帰りそうな気もしますけどね。
「そういえば三成さまの後任の小早川隆景様ってどんな方かご存知ですか?」
「えぇ。聡明なお人だと聞いてますよ。
もう死んでしまってますけど兄である隆元殿は『来世では是非ともいいところに生まれ変わりたい』とか文に書いちゃったり、厳島神社に『自分はどうなってもいいから父が長生きできますように』って願うような人だったけど、隆景殿はそんなこともなく・・・」
「・・・なんで細川忠興様といい、そんなアレな人ばっかり秀吉様の下には集まるんでしょうか」
「じ、時代のせいかな?」
「「・・・・・」」
「仕事戻りましょうか」
「そうですね」
ぺこりとお辞儀をしてそれぞれの仕事場へと戻る。
「まぁ天下を統べるってことは天下の変態も自分の支配下になるわね。自動的に」
人たらしの才能があって男女ともにホイホイしてる秀吉様だけど・・・変態ホイホイではないと思いたい。
きっと徳川家康の部下にも変な人や困った人がいるに違いない!!
――いや、いても困るというか嬉しくないんだけどね。
ここの島津さんたちは琉球・奄美と近いため、その影響を受けて女性に寛大だったりします。
が、いざ戦となれば普通にほかの武将達とかと同じようなことします。
琉球・奄美にはユタやノロといった祭祀を司ったり、シャーマン的な存在である女性がおり、普通の女性でもまれになったりするため、女性を大事にする傾向がある。としてます。