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狐の花嫁  作者: 篠田葉子
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ガラシャさんとご対面

島津さんとご対面できませんでした。

その代りガラシャさんとご対面です。

正澄さんも登場します。

なぜりんが三成のもとにいたのかを説明するべく時間を少し巻き戻してみよう。

それはりんが三成の兄である正澄に呼び出されたことから始まる。


「三成から文が来たんだけど、無事征伐できたみたいだよ。

あと予想通り博多の町は戦火でだいぶ衰退していたから復興を任されたそうなんだ。

堺は私がやっておくから、弟を手伝ってきてくれるかい?」

「もちろんですわ、お義兄さま。

戦火で・・・ということはこの前の地震ではさほど被害を受けなかったのでしょうか?」

「どうだろうね。この前の地震はひどかったからなぁ・・・」



三成さまの兄上である正澄さまの下に三成さまから文が届いたということで、呼び出された。

兄が伝えてくれるだろうと三成さまはこういう場合一通しか文を送らないので。


送られてきた内容は私に博多の町を復興させるのを手伝うように、そして正澄さまにはその間堺の町をお願いします。というものだった。


博多の町が戦火で荒れているので、という内容にこの前の地震――といってもおととしのことだが――を思い出し、その被害は受けなかったのだろうかと疑問に思う。

三成さまの治めている領地も含め、報告を聞いた限りではかなり広範囲にわたって被害が出たようだったのに。



ついこの間の地震。

それはりんは知らなかったが天正大地震と呼ばれ、歴史に残る地震であった。


飛騨・越中・美濃・近江など広い範囲で被害が発生した。

さらに津波もあり、当然ながら民衆だけでなく戦国武将たちも被災し、犠牲者が多く出た。


三成の領地ももちろん被害にあっているし、堺の町も被害を受けた。

ただ、他の領地と比べ、災害対策が考えられていたのが功を奏した。


その災害対策はりんの発案によるものだった。



平成の時代、大地震や津波災害、ゲリラ豪雨や噴火など多くの自然災害が勃発していた。

その時代に生きていたりんはその恐ろしさを身をもって体感していた。

それだけに地震速報も津波警報も台風情報も何もない時代は彼女にとって暗闇の中にいるようなものだった。


それをどうこうすることはできない。ならばどうするか――

災害対策・対応は災害が起きるたびに話題になった。

それを覚えている限りこの時代に適応させることにしたのだ。


災害対策に毎年予算を出したりといったこともした。

いつくるかわからないのに?とも言われたが、災害は忘れたころにやってくるとも言うし、少なくとも台風は毎年来るだろうしと押し通した。


小さい地震が頻発していたこともあり、受け入れられたのだが、その後大地震が起こったため領民たちに「これを見通していらしたのか・・・!」と拝まれた。

その際には三成も税を減免するなど対応し、民衆の生活を支えた。

また、りんは阪神大震災などで救援活動を行った自衛隊が炊き出しをしていたことを覚えており、他と比べて収穫量の多いために備蓄も多い食料を支援するなどといったことも行った。


「秀吉様の部下を助けて何が問題なんだ?」という三成と「困ったときは助けるものでしょう?」というりんによって他の領地が支援を受けたこともあって、被災地の混乱が収まるのは早かった。


早かったが故に九州征伐に行けてしまったのだが、その遠征先である九州の方は地震による影響はなかったのだろうか。


「地震で地盤が緩んでいたりとかしてないといいんですけど。

戦で荒廃しているだけでも大変ですから」

「まったくだよ」


はぁ・・・と二人して溜息を吐く。

ふと文に視線を落とすと博多町割奉行に任命された人の名前が載っていた。


「あの・・・本当に私も行って大丈夫ですか?

小西様も任命されてますけど・・・」

「あぁ大丈夫大丈夫」

「でも最近南蛮商人や宣教師たちの態度が問題になっているじゃありませんか」


この時代の先進国が発展途上国に植民地を作ることも視野に入れた形で派遣されてきているからなのか、見下したような言動が見受けられるのだ。

おまけに堺町奉行の一人で折衝役でもある小西様がキリスト教信者なので、こちらの要求は当然呑むべきであると調子に乗っている奴らが出てきているのだ。


「それならこの前教えてもらった数式というのを渡して『うちの弟の嫁が作ったものなんですけど、当然このくらいわかりますよね?』って言ってやったら大人しくなったから、気にせず行っておいで」

「え?」

「ふふふ。教えてくれたものに多少手は加えさせてもらったけどね。

いやあ三成はいい嫁をもらったね。実にいい義妹だ」

「えっと・・・ありがとうございます?

・・・その数式、見せていただいてもよろしいですか?」

「はいどうぞ」

「・・・・・」


うん、さすが正澄さま。

三成さまのお兄様なだけはある。

こんな難しいのを考え付くなんて・・・


アラビア数字を用いて書かれたその数式は本国まで伝えられたが、解くことができるようになるまで時間を要した。

解かれたのち、作ったのが女であると言われ、先進国であるというプライドにかなりのダメージを受けたというのは余談である。




そんなやり取りを経て九州へと赴く前にと、りんは現在本名玉子――洗礼名ガラシャと対談中である。


ガラシャさんはさすがに知っていた。

詳しくは知らないけど。


光秀さんの娘さんで現在は大坂の細川邸に旦那さんによって軟禁状態。

おかげで女子会のメンバーに組み込むことができていなかったのだけど、旦那さんが現在九州遠征でいないのでこれ幸いとお邪魔させてもらったのだ。


「石田三成の妻のりんと申します。

おととしわが領地の方では地震がありましたがこちらの方では大丈夫でしたか?」

「ガラシャとお呼びくださいな。

こちらの方はさほど・・・そちらはひどかったのですか?」


うっわぁ美人!こりゃ旦那さんがヤンデレになるのも納得だわ。とか考えながら当たり障りのない世間話とかからスタートして、財力とかのアピールも兼ねて贈り物なんかも渡したりしながら会話をしていたら・・・いつの間にか旦那さんの愚痴になってました。

まぁ女子会では割とよくあることですけどね!


「私には人前に出るなとか言って束縛しておきながら自分はよそに女を作りまくってるんですよ!」


ダンッ!と力強く床を拳で殴りつけるガラシャさん。

正直イメージとだいぶ違います。


「え?他にも女作ってたんですか?

そんなヤンデレしてるのに!?」

「なんですかヤンデレって」

「え~っとヤンデレっていうのはですね・・・」


なんでこんな説明をしているんだろうとか思ったら負けだと思うんです。


「なんて的確な表現!

そうですそうです!うちの夫はやんでれなんです!!」


ますますヒートアップするガラシャさん。

美人の怒り顔って迫力あるなぁ。と現実逃避しつつ大人しく話を聞く。


「男のくせにネチネチと!言いたいことがあるならばはっきりと言えばいいのです!

ちょっと家臣と話をしただけでまるで不貞を働いたかのようにこちらを責めて!

だったらご自分はどうなのですか!」

「それはひどいですねぇ~」

「いつもいつも嫌だと言っても聞きやしない!

痛いんだと何度言えば覚えるのかしら!!

下手くそ!と怒鳴りつけて蹴り飛ばしてやりたいのを我慢してるのですよ!毎回!!」

「ナニをかはあえて聞きませんからね!」


聞きたくなかったかな!それは!

まだ旦那さんの顔を見ていないのは良かったのか悪かったのか。判断に悩むじゃないか。


「おまけに信仰によって心の安寧をやっと取り戻せたというのに止めろだとか言うんですよ!

冗談じゃありませんわ!」

「そうですね~」


ガラシャさんってぐっと我慢する芯の強い人だと思ってたけど、普通に強い人だわ。

どっちかっていうと割とカッとなりやすい人かもしれない。

で、宗教で精神のバランス取ってたっぽい?


「伴天連の神を信じることでやっと心が穏やかに日々を過ごせるようになって、あの人の言動も気にならなくなってきたのに!」

「それは・・・よかったですね?」


宗教が大事で旦那がスルーできるようになったって・・・いいのか?それ。


「りんさんは仏を信じてらっしゃるの?

このきりすとという神は偉大なのよ」

「そうなんですか~」


宗教の勧誘はお断りしたいなぁと思いつつもバッサリ断ることもできず、旦那さんの愚痴も併せてかなり長い時間話の聞き役をすることになった。

けれど頑張って聞き役に徹した甲斐あって、すっかり打ち解けてくださった。


「あなたと話していると心のもやもやが晴れるようだわ」と言って下さったが、それはカウンセリングを受けたようなだからだと思います。

カウンセリングって患者の話を聞くところから始まりますから。


そのどさくさに紛れて?しっかり女子会のメンバーにも組み込み、これから末永いお付き合いをよろしくお願いすることになった。


男性と会せるのは嫌がる旦那さんも女性と会うのはさすがに文句を言わないようなので、お抱えの芸人たちから女性を仲介役にするとか、女子会をこちらで開催させてもらうとかしてガス抜きをさせてあげよう。

このままじゃガラシャさん旦那さんにぶちギレそうな気がする。


夫婦仲を取り持つのは無理っぽい気がするなぁ・・・

とりあえず頑張れ、旦那さん。

浮気相手は神様であって人間でないだけマシだと思って。


侍女さんたちもガラシャさんが話している間うんうんと頷いていたし、彼女の味方みたいだし、上手くいけば腹立つ旦那より女友達を優先してくれないかな。

まぁこの時代の人だけあってお家と血筋は大事だっていうのは染み込んでるみたいだけど。


とりあえず他の嫁仲間たちから旦那さんの上手な転がし方を教えてもらって下さい。

千代さん辺りがお勧めですが、あそこは旦那さんが自ら転がされてあげてる面もあるからなぁ。


まつ様とかおね様とかお手本にされると修羅場が繰り広げられそうな予感がしますが・・・きっと会ったら気が合うと思うんです。


それにしても旦那さんに不満を抱えている奥方の多いこと多いこと。

もう少し皆様うちの三成さまを見習ったらどうなのかしら!


この後会いに行く島津さんたちはマシだといいんだけど。

・・・せめてヤンデレとか変な属性を持っていないことを祈っておこう。

三成さまは今、その島津さんたちのところにいるんだから。

手弱女なガラシャさんなんていなかったのですよ・・・

さすがの嫁もガラシャさんは知ってました。

美人で旦那がヤンデレの人!みたいな認識ですけど。

次回こそは島津さんとファーストコンタクトを!

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