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狐の花嫁  作者: 篠田葉子
19/39

阿国と信繁の飲み会

前回の最後にフラグを立てましたので、それの回収です。

重要人物なので早く出したかったのですが、こんな初登場(笑)

昌幸さんたちもちょっとだけ出てます!

「うわ~・・・行きたくないなぁ・・・」

「どうしたのよ?」

「叔母上から文が届きました・・・

『先日上杉殿たちがうちにいらっしゃいました。あちらの方々もあなたのことを気にしていましたよ。

ところで、私のことを話していたようですが、どんなことを言っていたのでしょうか?

それからせっかく今は秀吉様の下でお世話になっているのだからうちにも遊びにいらっしゃいね』って書かれてて・・・」


ひらひらと疲れた表情で文をはためかせる男の顔を見てなるほどねぇと納得する。


「何言ってたのか言いに来いってことね」

「そうです。だから行きたくないな~って」

「でも遅くなればなるほど状況は悪くなるだけでしょ。

さっさと顔を出した方が身のためだと思うけど」

「ですよねぇ・・・」


そんなことを言いながら二人してお酒を呑み交わす。


阿国は酒を呑みながらやれやれと溜息を吐いた。


秀吉様に奥方たちの機嫌取りのために呼ばれたのはいいけれど、予定よりも早く着きすぎてどうしようかと思っていたら、目の前の男に酒宴に誘われ、何を言い出されるのかと思いきや、単に愚痴をこぼしたかっただけとは――



彼の叔母上は私の雇い主でもあり、その縁で目の前の男とも知り合ったので、愚痴が言いやすかったのだろう。

彼女は夫の方が有名過ぎてあまり知られていない人だし、中途半端に知っていると妙に崇められたりしていて、彼女に対する不満や愚痴は言いにくい。

おまけによく知っている家臣たちなんかは「だって奥方様だもんなぁ」「奥方様だからしょうがない」という態度だ。


私はわが雇い主ながら変わった人よねぇと思っている。

ちなみに自分の父親と叔母に全力で振り回されて苦手意識を持っており、自分は彼らとは違う!と主張している目の前の男とその兄は、比較対象が悪いだけで十分変わり者だし、敵に回したくない人種という意味で類友である。


「いいお酒ねぇ、これ」

「あ、これ叔母上から文と一緒に届いたんですよ。

『今年の新酒です。なかなかいい出来なので一緒に送ります』だそうですよ。

阿国さんなら言えばもらえるんじゃないですか?」

「・・・あの人本当に色んなことしてるわねぇ」


私たち芸人を何人も抱え込んで興行をさせたり、芸人に商品である衣装や飾りを身に着けさせて宣伝させたりしているというのは知っていたけど、それ以外にも色々しているようだ。




もう何年前になるだろうか。

そのころ私はまだ駆け出しの芸人で、同じく河原者と蔑まれる者たちと身を寄せ合い、つたない踊りを披露することで日々の糧を得ていた。

そんな私たちに声をかけ、雇われたのがりん様だ。


待遇は破格で、きちんと賃金を払って下さる上に、見たことも聞いたこともない踊りや曲を提供してくださり、芝居の脚本を書いてくださるし、きちんと人として接してもらえる。

城のお抱え芸人だってこんな上等な待遇を賜ったことはないだろう。


しょせん芸人。河原者と無意識のうちに態度でそう語られることがほとんどだ。

おまけに女である私は芸ではなく身体を望まれることも多い。


そんな扱いに慣れた私たちは素晴らしい芸は身分の貴賤にかかわらず、心を動かすことができる。と名誉や金銭よりも芸の上達を望むようになった。


だから、身体を要求せず、私たちに芸を追求する術を与えてくださるりん様は都合がよすぎるくらい都合のいい雇い主だった。

だから雇う見返りとして興行先の情報収集および提供などをしてほしいと言われた時にはむしろほっとした。

なんの見返りもなく善意のみでこんな待遇を受けるなんて、恐ろしすぎる。


情報収集をするにしては各地で興行をするというのは目立ちすぎるのではないかと思ったけれど、城の内部を調べてほしいわけじゃないのでそれでいいとのことなので、そういうものかと納得した。

むしろ有名になってほしいと言われ、雇われた芸人全員で奮起した結果、各地で有力な大名に呼ばれるまでになった。

まぁ今回のように雇い主の人脈でというのもよくあることだけど。



「姉御と叔母上のお抱え芸人たちに慕われてる阿国殿ならば何か知恵はありませんか?」

「とりあえず文でも出しておけば?

あんまり反応悪いと向こうから押しかけてくるんじゃないの?」

「あり得そうですね。おね様たちとも仲が良いようですし・・・

部下に持って行かせましょうか」

「あぁ、真田十勇士?」

「叔母上のお気に入りですから」



信繁はそう言って遠い目をした。

阿国殿にもしっかり知られている真田十勇士。

それを名付けたのは叔母だった。


「うちには真田衆という諜報活動や奇襲などを行う集団がおる。

その中でも指折りのものが十人ばかしおってな」

「おぉ!真田十勇士ですね!」

「なんじゃソレ!格好いいな!使ってもいいか?!」

「どうぞどうぞ!」


きゃっきゃとはしゃぐ父と叔母の姿を呆れたように見守る兄と自分、そしてその様子を微笑ましそうに見ている母。

父と叔母が兄妹ではないのかと何度思ったことか。


「その方たちのお名前は何と?」

「聞かれておるぞ」


興味津々という様子を隠しもせず問いかける叔母ににやりと悪戯っぽく笑った父はどこへともなくそう声をかけた。

すると方向も定かではないが、確かに返事があった。


「影に生きる者に名はありません」


しかしその返事に納得する叔母ではない。その上で斜め上に突き進むのが叔母である。


「ならば私が名前を付けても問題ないですよね!?」

「はっはっは!ないな!」

「「「!??」」」


混乱する気配が伝わってくるが、気にする父ではないし、そんなものを感じ取れる叔母でもない。


「じゃあ――」


そして十人全員名付けることができないのも叔母である。


「うぅ~・・・」


叔母が名づけたのは「猿飛佐助」「霧隠才三」の二人だけ。

残りの名前は父と母が楽しそうに付けていた。


「子供たちがお腹にいた時のことを思い出しますわね」

「そうだな」


・・・夫婦仲が良くて何よりである。


結局真田衆の中でも優れた実力者が真田十勇士で、その者達には叔母と父たちが付けた名前が与えられる。

ただし個人に与えらた名前ではないので一人の人間が何通りもの名前で呼ばれたりもするのだが、そもそも基本的に誰も名前でわざわざ呼ばないので、付けた意味はあるのかないのか不明である。



「彼らが文を届けたら彼らをいじって遊んでいるうちに色々忘れてくださらないですかね~?」

「あんたもさらっと外道な台詞吐くわよね~」

「しょせん私も真田の人間なんですよ・・・」

「それこの前お兄さんも言ってたわ」

「じゃあ兄も言われたのかな?

いやこの前『所詮お前も真田の人間だな!』って言われましてね」


さばさばした姉御肌の阿国と、色を要求してこない信繁は気付けばすっかり飲み友達で

「阿国殿はやっぱりいいですね~。

叔母上のためではなく真田のために働きません?」

「あら?りん様以上の楽曲と芝居の脚本と見たことも聞いたこともない舞を提供してくださるのなら考えて差し上げてもよくってよ?」などと軽口を叩き合うまでになった。

他のものがそんなことを言えば冷ややかな眼差しが送られることだろう。


なので、今度顔を出しに行くときには阿国殿に一緒に行ってもらおうかなぁと信繁は考えた。

真田十勇士で幾分機嫌を和らげて、お気に入りの阿国がいれば何とかなりそうな気がする。


しっかし直江殿、叔母上に何を言ったんだろう。

まさか景勝殿が何か言うわけあるまいし、きっと直江殿が言ったんだろうけど・・・


真田十勇士が二人しか思い出せなかったのは私です(笑)

でも嫁もきっとこんな感じだろうなと逆にリアルでいいじゃん!とそのまま使いました(笑)

残りのメンバーが名前が一緒かどうかは嫁にはきっと判断できないでしょう(笑)

ちなみに一緒の設定です!

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