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狐の花嫁  作者: 篠田葉子
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堺の町奉行就任

皆さんが気にしてらした前作のフラグについての回です。

といってもフラグの存在に気付いた回って感じで、進展としてはさほどないです。

そのため短くなってます。

天正14年。石田三成、堺の町奉行に就任。

その年、嫡男が誕生する。


第三子にしてようやくの男児ということで周囲は大いに喜んだが、産んだ張本人は自分似で夫に似ていないことを多少不満に思い、父親である三成はすでに二人の子供もおり、性別にさほどこだわりがなかったため、夫婦は母子ともに健康であることを喜んだくらいであった。



堺は戦国期を通じて南蛮貿易の最大拠点として博多と並んで大いに栄えていた。

特に堺は自由都市として戦乱の圏外にあって、豪商が競い興っており、三成は秀吉に堺の街の象徴でもあった堀を埋め、堺を豊臣政権に完全に取り込み、同時にこの町の商権を拡大して、町の繁栄を促進していくことを命じられた。

そして三成が秀吉の帷幕にあって不在の際は、父親である正継と兄である正澄が代官となることになった。



そのために必要な物資や経費を計上して――と忙しく家中総出で働いているのだが・・・


「~~だからこれだけ必要になる」

「待ってください三成さま!計算が追い付きません!」

「お二人とも早すぎます!紙に書いてもいいですか?!」


三成は計算の文章問題を公式を書かずに答えを導き出してしまうタイプで、どうやってその答えを出した?と驚かれるタイプであった。

嫁は公式を使い、その上で途中計算を暗算で出すタイプ。

部下たちも嫁に教わって公式を使うため、石田家の計算能力は異常に高かった。


また嫁は前世で事務方のOLをやっていたこともあり、簿記の資格も持っており、その知識を基に複式簿記を使って自分の資金の管理をしていた。

それを今回、堺の町の発展と掌握という大事業に伴い、石田家にも導入した。


この時代はまだ江戸時代のドラマなんかでよく見る大福帳が一般的で、資金・負債・純資金・収益・費用の増減を伴うすべての取引活動を帳簿の貸付・借入の二つの側面から分離し可視化する複式帳簿は導入されていなかった。


三成は今でいう社長秘書と経理部長を兼ねているようなものなので、この有用性と先進性を理解し、取り入れた。


そんな内情もあり、石田家が中心となって動いた豊臣政権のドル箱となっている南蛮貿易の直轄支配は命令を下した秀吉の予想をも上回る速さで行われていった。

その一因に三成の嫁が商人たちと元々親交があり、商人たちの反発が少なく、進めていくことが可能だったということがある。


そのため、彼女が三成について堺へと同行しても誰も咎めなかったし、疑問に思うことすらなかった。





嫁が皇室御用達、の錦の御旗を掲げて売り出した商品は中々の売れ行きだった。

しかし一方でレースと宝飾品は容易に売り出そうとはしなかった。


流行は移り変わるものであると、前世から女性であった嫁はよく知っていた。

たとえそれが平成の世で大流行していたデザインであっても、この時代のヨーロッパで受け入れられるとは限らないと。


そのため南蛮商人たちに皇室御用達ブランドの品を売りながら市場調査をしていた。

また、国内向けの販売も考え、堺の商人たちや近江商人たちという親しくしている商人たちとも話をした。


その結果――恐ろしい事実が判明した。


キリスト教伝来のために来日した宣教師たち。

その一部に人身売買を目的とした、似非宣教師がいるということ。

また、キリシタン大名の領国で領民に対して改宗が強要されたり、寺社の破壊や仏教徒の迫害がされていること。

そしてなにより――九州で軍事資金借入の担保となって、長崎がいつの間にかポルトガル領とされていたのだ!



植民地フラグが立ってた~~!!!と嫁は大いに慌てた。

思わず自分が動いた結果ではないかと振り返ったが、植民地となりかけているのは遠方の地である。

バタフライ効果も一瞬考えたが、さすがに関係なさそうだ。と胸をなでおろし――安心してる場合じゃない!と我に返った。


このまま計画通りレースや宝飾品を売ってもいいのか悩む。

あえて流行と少し外れたレースやアクセサリーを作って、そこそこの売り上げを得ることも考えた。

しかしこの時代、どうも宝石のグレードよりも加工技術の方に重点を置いているような気がするのだ。

それだと宝石があまり産出しない日本でも細工技術はかなりのものをすでにこの時代から有しているわけで、おまけに器用な職人気質な日本人がレース作りなんかを始めたら――


「ヤバい。植民地フラグが乱立している。

史実では神回避だったんだと実感なう」


内心冷や汗だらだらで、どう動くべきか必死で脳みそをフル回転させる。

そうして考えに考えた結果――時間を稼ぐことにした。


秀長様から聞いた話によると来年には秀吉様は伴天連追放令を発布するらしいし、確かこの時代の植民地を作ってた二大勢力のうちスペインはもうすぐイギリスに無敵艦隊沈められるはずだし。

ヨーロッパもこの辺から確かごたごたが続くはずだし。

世界史あんまり覚えてないけど。


「ひょっとして、秀吉さんの朝鮮出兵ってコレが原因なのかな~?

鶴橋があったから、在日の子が結構いて、話には聞いたことがあったけど・・・

そして島津さんが奄美・沖縄を侵攻したのもこの辺に理由があったり?

大正区の友人がそんな話を確かしてたような・・・

美人が生まれると島津さんとこに連れて行かれるって悲しんだとかなんとか・・・」


うわ~お!私関ヶ原フラグ以外は面倒見切れませんよ?

いやマジで。


※大阪の鶴橋は在日の人が多い。

大正区は沖縄の人が多い。


朝鮮出兵は秀長様に止めてもらおう!

いや、しかしそれがあったから植民地フラグを回避できたんだよ史実では。とかなってたらどうしよう。


「せ、せめて奄美と沖縄を平和的に併合できたら・・・それこそフランチャイズみたいな感じで日本の旗下に入ってもらうとか。

・・・・サツマイモを提供して芋焼酎で買収できないかな~。

奄美の人たち、お酒を買いすぎて家を破産させたことが多々あったってくらいお酒好きだって話だし・・・」


うふふ~と現実逃避をしては見るが、実際のところそんなの不可能なのはわかってる。


「というか・・・私の身分と立ち位置で、どこまで歴史に絡めるのか・・・」


関ヶ原は三成さまが中年くらいの時に勃発するはず。

周りと比べて若っ!って驚いた記憶があるし、秀吉さんが死んで以降の出来事だから、まだだいぶある。

多分10年以上はあると思うから、それだけあれば味方を増やしたり、細工をしたりと色々できる。

けど国内はともかく国外となると――


「ぜ、前途が不安になってきた・・・」


学生時代、もっと真面目に歴史の勉強をしていればよかった・・・



美人が生まれると悲しむエピソードとお酒で破産させたエピソードは実際に奄美の血を引く友人から聞きました。

飲の過ぎだよ!と突っ込みを入れたくなりますね。

そして彼女曰く「黒砂糖は奄美のほうが先だから!」だそうです。

この辺の時代に入ってきたらしいので使えたらいいなと思ってます。

次回は直江さん景勝さんが登場予定!

この年に入京して、秀吉さんに謁見しますので。

お楽しみに!

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