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宇宙世紀に転生した元おっさんは、幸せな家庭を築きたい  作者: 隣野ゴロー
自由都市ケレス

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57話 空間突撃騎兵

大変お待たせいたしました。

「て、てめぇ! あの時の!」


「それはこっちのセリフだ」


「あんたねぇ、命を助けられておいて、恩人を指して”てめぇ”呼ばわりはどうなのよ!」


「まあまあ、落ちつくのじゃ皆の衆」


「ほう、なかなかイイい筋肉してんじゃねぇか」


 順に、救助された男、俺、サーシャ、リシュア、そしてアマゾネス……もといヒルダの言葉が続く。


 彗星を改造した新種のネメシス、その中から発信されていた救難信号。そこには破壊された宇宙船の残骸と、脱出ポッドが囚われていた。


 船に搭載している各種機材を駆使することで、無事に脱出ポッドから生存者の救出に成功した。しかし、相手はよりによってあのカリストⅨで絡んできた改造人間、元特殊部隊員の筋肉だるまだった。確か、元空間突撃騎兵とかいう宙兵の精鋭だったか。


「あの時の決着を今ここでつけてやってもいいけど、ヨアヒム管理官によろしくと言われてるからな。とりあえず名前を聞こう。俺はこの船のキャプテン、ジーフォースのレイだ」


「ああ、くそっ。すぐカッなっちまう、悪い癖だ。俺の名前はセルゲイだ。セルゲイ・ストレリコフ。すまなかったな、レイ。救助……感謝する」


 左手で頭を掻きながら、右手を差し出してきたので、しっかりと握り返した。今回は、力比べのようなことはしてこなかった。


「なあ、その上腕二頭筋、触っても良いか」


 そこへ、横から声がかかる。視線を向けると、ヒルダが涎を垂らし、だらしない顔をして近づくとセルゲイの腕に手を伸ばした。


「あ、ああ。触るくらいはかまわんが……」


「レイ、セルゲイ、もうちょっと力を入れてグッと握ってくれ。筋肉が膨らむように――そうだセルゲイ……この卑猥な筋肉をあたしの前で膨らませるんだ、ほら!」


 セルゲイが困ったような顔をして、耳元に顔を寄せて静かに囁いた。


「大丈夫か、こいつ。えらい美人だが――なんか危ない薬でもやってんじゃんねぇのか?」


「火星の元騎士だ、メディカルチェックで薬物の反応はなかった。確かに少し変わった奴ではあるな」


 ヒルダに聞こえないように、そっと囁き返した。


「なにおしておるか、愚か者! 貴様、火星騎士の品位を下げるような真似ばかりしくさりおってぇ!」


 靴を脱いで右手に持ち、サーシャに両脇を抱えられたリシュアが、思い切り手に持った靴でヒルダの頭を叩いた。


「お、お嬢」


 ヒルダは頭をさすりながら、恨めしそうな視線をリシュアに向けた。その隙にセルゲイと視線をあわせて小さく頷き、握手を解く。


「はいはい、そこの変態筋肉娘とリシュアちゃんはコッチ」


 サーシャが間に割って入ると、名残惜しそうな視線をセルゲイに向けるヒルダと、頬を膨らませたリシュアを連れて離れていく。


「あれも強化人間だな、それも相当な金がかかってる。恐らく格闘能力は俺の方が上だが……それよりあの目だ、パイロットか」


「ああ、艦載機のパイロットだったらしい」


「で、あの二人はお前のハーレム要員か? あれだけの美人がいながら、羨ましい奴だ」


「いや、あれは客だ。カリストまで連れて行く」


「へー、そうかい」


「立ち話もなんだ、そこへ掛けろよ」


 そう言って、ブリッジの空いている席を指さす。


「すまんが、準戦闘態勢なんでな」


「はい、キャプテン。全戦闘システム即時待機、全周警戒中です」


 天井から優し女性の声、ハルの言葉が降って来た。


「いい声だろ、艦の運営支援AIのハルだ」


「初めまして、セルゲイ。運用支援AI、FO-3077HAL、通称ハルと呼ばれています」


「あ、ああ、こちらこそよろしく」


 セルゲイは声のしたほう、天井を仰ぎ見るようにして応えた。


「それでセルゲイ、何があった。あのネメシスは何だ?」


 コンソールに肘を付き、少し身を乗り出して聞いた。


「いや、俺にも皆目……ケレスの仕事を受けて、向かう途中でいきなりやられたんだ。まさか、彗星がそのままネメシスになってるとは思わねえからな」


 セルゲイは腕を組んで目をつむる様にしている。恐らく襲撃されたときの記憶をたどっているのだろう。


「メインベルトの真っただ中だ、まさか単独行動じゃなかったんだろ?」


「ああ、一〇隻で移動中だった。中型の特型巡洋艦が二隻いたよ。俺たちは陸戦が専門のチームでな、宇宙船での戦いはあまり得意ではないんだ。だから、しっかり船団を組んでいてたんだが」


 瞑っていた目を開くと、真剣な眼差しを向けて来た。


「他に生存者はいなかったか?」


「ああ、軍に情報を売るために、あらゆるセンサーを駆使して内と外を調べたんだが……残念ながら、生存者は確認できなかった」


「そうかい……手間をかけさせたな」


「いや、遭難者を助けるのは宇宙船乗りの義務みたいなもんだ、明日は我が身だからな」


「そう言ってもらえると助かる」


 セルゲイは深々と頭を下げ、鼻をグスッと一度だけ啜ると、再び顔を上げた。


「八年だ、こないだのあいつらと宇宙を駆けまわって。気のいい奴らだったが……別れってのは随分と唐突で、あっけないもんだな」


「まあ、そんなのばかりじゃないさ。今回は運が無かった、そう思うしかない」


「だな」


 拳を突き出すと、こつんとぶつけて笑顔を見せた。


「よし、ハル。急いでカリストに向かうぞ、第三戦速。とにかくメインベルトから出る。追ってくる船は?」


「了解、キャプテン。追跡を受けている形跡は、今のところありません。リシュア、何か感じますか?」


 僅かな時間ですっかり観測員席に馴染んでいるリシュア。今回はハルですら気づけなかった違和感を感じ取り、見事に敵を見つけることが出来た。彼女には才能というよりも、なにか特殊な感覚が備わっているように見える。


「いや、世はなべて事も無しじゃ。平穏そのもの、異常はみられん」


「存外、ケレスマフィアの防諜ってのは、しっかりしているのかもしれんな」


 マース帝国の侯爵家といえば、皇帝に次ぐかなり高位の貴族家のはずだ。私兵の数も多ければ、国軍や情報部にも太いパイプがあるはず。もちろん裏社会においても同様だろう。


 だから、こちらの動きは早々に察知され、何かしらの妨害を受けるだろうと覚悟していた。しかし――間もなくメインベルトを抜けるというのに、何の異常も見当たらない。ケレス方面からの追撃は、ムラサメの速度を考えれば心配する必要はない。


 恐いのは待ち伏せだ。だが、木星方面に突き抜けた公宙域で待ち伏せするのも、相当に難易度が高いのではないか。この広い宇宙では、よほど正確にこちらの行動を把握していなければ、網を張る事などできはしない。


 俺の心配をよそにムラサメは順調に航行を続け、気が付くとメインベルトを離脱していた。


「なんか拍子抜けぇ……」


 サーシャがつまらなそうに口を尖らせ、頭を腕の後ろに組んで背もたれに寄りかかる。


「まだ、カリストまでは二週間近くあるんだ。そういうことは言うもんじゃないよ、サーシャ」


「そうですよ、余計な一言が思わぬ展開を招く。それはそう、過去の歴史で幾度となく繰り返されてきたのです。言霊であったりフラグであったり、呼び方は様々にありますが」


 何もなければそれに越したことはない。ハルも同様に、サーシャの軽口を窘めた。


「わしは楽観しておるがの」


 サーシャとリシュアを連れて、リラックスルームでくつろいでいる。無重力に近い状況でも、磁力スーツと磁力シューズを使えば、かなり重力下に近い動きが可能だ。数百年に渡る研究と、試行錯誤のおかげで、この快適な宇宙生活が成り立っている。


「なんで?」


「嫌な事が起きるときは、嫌な予感がするものじゃ。しかし、今はそれが無いんじゃよ」


 サーシャの問いに対して帰って来たのは、リシュアのなんとも曖昧な答えだった。


「んー、意味わかんない」


 こっちに視線を向けながら、チキン南蛮にタルタルをたっぷりからめて口の中に放り込み、幸せそうな顔をするサーシャ。


 この日はサーシャが自慢の腕を振るって、マニュアル調理でチキン南蛮とマカロニサラダを作ったのだ。


「サーシャ。おそらくリシュアは、ネオセンスの持ち主ではないかと思われます」


 いつものように、天井からハルの優しい声が降ってくる。


「新しい人類の感覚として、第六感と呼ばれる能力を持つ者がいるとされ、様々に研究が進められています。既に数多くの論文も発表されていますよ」


「そうなんだ、それは凄いね。進化した新人類ってことでしょ?」


「まあそうらしいの、それがどんな馬の骨かは知らんが――」


 すまし顔のまま、リシュアはマカロニサラダにマヨネーズを追加でかけ、スプーンでぐるぐると混ぜはじめた。ひとしきり混ぜ終えると、マヨネーズまみれのスプーンを口に入れ、満足そうに微笑む。


「こんなことをしたら、婆やにどやされるところじゃが……ここにはそんな口うるさい女官もおらん。自由とはすばらしいの」


 そう言って、マヨネーズの味を確かめるように小さく二度、頷いた。


「ところで、あの筋肉コンビはどこへ行ったんだ?」


「あー……部屋でヤってるよ、たぶん」


「またか、あいつら。思春期のガキじゃあるまいし……」


「まあ、いいんじゃない? こんな仕事してたら、いつどこで命を落とすか分からないんだし。楽しめるときは楽しまなきゃね」


 サーシャが意味深な笑みをこちらに向けて来た。


「そっか、そうだな」


 そう、俺たちも人の事は言えない。


 それにしても、サーシャの料理の腕は大したものだ。チキン南蛮の極意というか、味の秘訣は酢の飛ばし加減にかかってると思う。そこの微妙な調整が絶妙に上手い。


 酢が強すぎず弱すぎず、絶妙のバランス。そこへ、玉子たっぷりの特製タルタルソース。さらに言うと、とにかく食材がうまい。


 残りの分は、高温恒湿保存庫に入れておいてやる。しかしあの二人が、まさかこんな関係になっているとは……わからないものだ。 


 二組のカップルと一人の少女を乗せて、ムラサメは一路カリストを目指す。


 ひょっとして、この船はリシュアの教育上、非常によろしくない環境ではなかろうか……ふと、そんなことを考えた。


新作、あねご肌のかっこいいお姉様が無双する、戦国初期ごろの世界観で描く和風ダークファンタジー。


「元勇者の大悪党 ~商人無双、圧倒的な暴力と経済力で乱世を蹂躙する~」

https://ncode.syosetu.com/n8818lu/


この話と違って、重厚なハードボイルド作品です。


読んでいただけたら喜びます。

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ノクターンノベルズにて新作連載しています。 女傭兵ヘルガ ~初伝・爆炎の魔女~ エロ有り、濃密なバイオレンスシーン有り。硬派なシリアス系ダークファンタジーです。
― 新着の感想 ―
人の船で勝手におっぱじめるのは如何なものか……
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