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0年生

作者: 藤乃花

ユウタとトシは一番初めに出来た親友。保育園でも休みの日もいつも二人揃って遊んだり、たまには小さく争ったりして毎日を過ごしていた。そして今日もまた、森の奥にある秘密基地で会っていた。秘密基地は元々在った洞穴を木の枝や落ち葉で隠し、通り易くする為木の板を足元に敷いた簡単な仕上がりになっている。「何ねんも集めてきたから、持ちかえるのたいへんだな」「おもいでの品、ってゆうヤツだね。記念にトシくんに半分あげるよ」ユウタがトシにあげると言った物……セミの脱け殻。夏にはセミが飛び交うこの森は、セミの脱け殻が拾い放題となる。「これだけ多いと、母さん悲鳴あげるよ」「そっか……土に返そう」流石にセミの脱け殻を家に持ち込む事は出来ず、二人は彼らを土に返す事にした。タンポポが咲く近くに脱け殻を埋めて、しばらく土の盛り上がりを見ていた。「この土のお山、砂場のお山みたいだね」「ユウタ、山つくるの上手かったよな。保育園で一番だったな」「お山作りの名人だからね」セミの脱け殻が眠る土の山。小さいような大きいような、そんな真ん中辺りの山。「ユウタは、大人になったら何になりたい?」かすれそうな声で、トシが聞いた。何となく聞いてみただけの事が、この先とても大事な気がした。「ん-とね、ぼくは保育園のせんせいかな?トシくんは?」「ボクの夢は写真家……かな?いろいろ撮るの好きだから」「お休みの日なんか、鳥やお空を撮ってたもんね」「写真コレクション、ラックにいっぱい貯まったさ!」まだ先の夢を語り、ユウタもトシも笑う。「もしぼくたちの夢が叶って再会したら、保育園の行事の写真お願いね」「もっちろん!行事のたび依頼してくれよな!」未来の約束を交わし、ユウタもトシもどちらからともなく歩き出した。「母さんも父さんもあわててるだろうね。卒園式終わって、黙ってここに来たから」「言ったら引き止めてたもんな。この森取り壊しになって工事が始まるから危ないって」二人の秘密の場所は、きょうでなくなる。小学校は二人とも別々になるため、会えるのはきょうで最後。進学の準備、入塾への手続きが忙しくて、遊ぶ時暇はない。もうすぐ一年生。0年生でいられる時間は、あと少し。いままでなら走って帰った下り坂を、今日はゆっくりゆっくり歩いていく。「夢を叶えて……」「絶対、また会おうな!」近いの言葉が空に響いて、二人の胸にも思いが響いた。











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