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プロローグ
私は本音が言えない。
言わないのではなく言えない。
いつのことだったか
垂れ流しのテレビで見た本音と建前の話。
幼いながらに何か感じたのか
それがいつも頭の隅にある。
家庭環境にもそれなりに恵まれて
自分で言うのもなんだが容姿も悪くはないし、
なんでもそれなりにこなしてきた。
興味もないのに流行りに乗っかって
周りの空気や期待を読んで分け隔てなく振る舞う。
そんなことを繰り返していくうちに、自然と本音が言えなくなって言った。
建前で塗り固めた私の世界にはいつも自分だけ
そんな虚しさとは裏腹に周囲から持て囃された。
それを壊さないようにまた取り繕うそんな滑稽で退屈な毎日
それで不都合もなかった。
誰にもそんな心の内を知られることもない。
『お前、本当につまらなそうな目してるね』
その日までは-----