エピローグ
※※※
空港のロビーのベンチに、俺は腰かけていた。
大きな窓の向こうにある滑走路へ、一機の飛行機が着陸しようとしているのが見える。
「炭原冬優という少女は、三年前には既に亡くなっていたそうですよ」
隣に座る麻里さんが言う。
「そうですか……」
答えながら、俺は搭乗口の方を見た。
秋川の一件から既に一年が経っていた。
結局俺は高校を辞めることは無く、今も大鳥学園に通っていた。
匂宮がグループの代表を続けることになったからだ。
短期間で代表が変わり続けるとグループに悪影響が出るから―――そう、匂宮は言っていた。
そうして匂宮は、グループ内に生じた混乱を鎮めるために世界中を飛び回る生活へと身を投じた。
「麻里さんは、匂宮についていかなくて良かったんですか?」
「又野さんをお守りするのも、私の仕事ですから。あ、お仕事と言えば」
「何でしょう」
「牛山さんのお店でのアルバイト、上手くいっているんですか?」
「ああそれは……」
まあ、それなり。
匂宮がマンションを出て行ってしまってすぐ、俺は牛山に紹介してもらい、カフェでのアルバイトを始めた。
始めはミスも多かったが、一年くらい経ってようやく慣れてきたような気がする。
その影響でコンピューター研究部にはあまり顔を出せなくなったが、牛山曰く今年は入部希望者も多かったらしく、しばらくは部も安泰らしい。
eスポーツ大会に出場したのが良い宣伝になったのだろう。
不意に搭乗口が騒がしくなる。
先程到着した飛行機の乗客が降りて来たのだ。
その人だかりの中に、見慣れた金髪の少女を見つけ、俺は思わず立ち上がった。
少女も俺に気付いたのか、勢いよくキャリーバッグを引きながらこちらに駆け寄って来る。
「又野くん!」
少し背の伸びた彼女は顔中に笑みを浮かべると、そのまま俺に飛びついた。
俺はその華奢な身体を受け止めながら答える。
「おかえり、匂宮」
グループの代表を引退し、ただの女の子になった匂宮が、顔を上げる。
「ごめんなさい。少し待たせてしまったかしら」
「このくらいなんてことないよ。俺はお前のパートナーなんだから」
俺と匂宮の物語は、これから始まるのだ。
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