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【完結】冤罪で高校を退学させられた俺、大富豪の美少女令嬢に拾われ溺愛生活が幕を開ける。  作者: 抑止旗ベル
最終部「あなたの人生の物語」

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相対の時 その③


 俺はため息みたいな深呼吸をして、受付窓口の女性に声を掛けた。


「すみません、大鳥家の代理として来たんですけど」

「大鳥家の……?」


 女性は、一瞬俺たちを怪しむような顔をした。


 いや、無理はないだろう。俺は高校の制服姿だし、麻里さんはメイド服だし……むしろ怪しまれるのが当然だ。っていうか白昼堂々メイド服を着ていられる麻里さんって結構ハート強いよな。


「ええ。大鳥学園の理事長の代理です」

「承知いたしました。確認しますので少々お待ちください」


 受付のお姉さんはそう言うと、手元の端末に視線を移した。


 確認に時間がかかりすぎると段々不安になってくる。大鳥理事長、本当に俺たちのこと事前に言っておいてくれてるんだよな……?


 俺が理事長を疑い始めたとき、女性はようやく顔を上げた。


「確認が出来ました。大鳥様の代理の、又野様でいらっしゃいますね? そちらの方は?」


 女性が麻里さんに片手を向ける。


「……ええと」


 メイドさんですと答えるのは容易いが、その答えもどこか間違っているような気がした。


 返事に迷う俺の横で麻里さんが口を開く。


「私は阿麻里と申します。又野様の秘書のような存在とお考えください」

「さようでございますか。では、あちらのエレベーターで8階までおあがりください。係の者がご案内いたします」


 ……秘書のようなものか。強ち間違いじゃない、と言えなくもない。


 とにかく、俺と麻里さんは受付のお姉さんの指示通り、エレベーターに乗り込んだ。


「お嬢様、お元気でしょうか……」


 エレベーター内で二人きりになった瞬間、麻里さんが呟いた。


「匂宮が連れ去られたのは昨日ですよ。多少疲れたりはしてるかもしれないですけど……」


 大丈夫ですよ、と言いたかったけれど、この一日のストレスで急激に老け込んでいるかもしれない。昨日は元気だったから今日も元気、というわけではないのだ。


 というかさっきから俺、余計なことばかり考えすぎだよな。もっと匂宮との面会に集中しないと―――とは言っても、集中しきれないのも事実。


 匂宮と再会してまず一言目は何というべきだろうか。久しぶり……というのも変だよな。


 麻里さんの方を見ると、彼女も落ち着きなくエレベーターの中を見回していた。


「緊張してるんですか、麻里さん?」

「べ、別に緊張なんてしていません。監視カメラが無いかチェックしていただけです!」

「そうですか。カメラ、ありましたか?」

「そ、それは今から探します。どこかなー、カメラ。怖いなー」


 ヤバい、麻里さんも正気を失いかけてる。やっぱり匂宮が連れ去られたショックから立ち直れていないんだ。


 頼れるのは自分だけ。


 何としても、匂宮を秋川の手から取り戻す。


 秋川の――――。


 よし。


 あの男の顔を思い浮かべたら、途端に落ち着いて来た。


 俺はここへ遊びに来たわけじゃない。


 あの男と決着をつけに来たんだ。


 エレベーターのドアが開く。


 その向こうにはスーツ姿の女性がいた。


「お二人とも、こちらへ」


 女性はそう言って歩き出し、長い廊下の突き当りで立ち止まった。


 そこには重苦しい雰囲気の扉があった。


「……ここに匂宮がいるんですか?」

「はい。代表がお待ちです」


 女性が扉を開ける。


 全面ガラス張りの窓以外には特に何もないその部屋の中心に置かれた椅子に座っていたのは、匂宮だった。


 黒いドレス姿の彼女は、感情が読み取れない表情でこちらを見つめていた。


 その姿はまるで、俺の全く知らない人みたいだった。


「……大鳥理事長の代理で来た、又野です」


 つい敬語になる。


 匂宮は動じることなく、答えた。


「こんなところまでご苦労様、又野くん。それから麻里も」

「匂宮……」

「大鳥家にはこれまで通り、学園の運営を任せるつもりよ。あなたたちの生活は何も変わらない。あのマンションも遠慮なく使ってちょうだい」


 部屋は、窓から差し込む陽の光で暗くは無かったが、辺りに満ちている空気には言葉に表しづらい独特の息苦しさがあった。


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『お前のように怠け者で醜い女は必要ない』と婚約破棄されたので、これからは辺境の王子様をお支えすることにいたします。
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