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【完結】冤罪で高校を退学させられた俺、大富豪の美少女令嬢に拾われ溺愛生活が幕を開ける。  作者: 抑止旗ベル
第一部「痴漢冤罪で借金まみれの俺がお嬢様にゲッチュされた件」
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この世のあらゆる残酷さから、あなたを守ってあげたい その②


「な、何よ!?」


 匂宮はそのまま、なぜか動揺している大彌に歩み寄る。


 一方の大彌は怯えたように一歩後ろに退いた。


「あなたが又野くんを退学にしたのは、そうすれば彼があなたを頼ってくれると思ったから。そしてあなたが退学を取り消しにすれば、又野くんはあなたに一生分の恩ができる。そうすれば又野くんを思いのままにすることができる―――一生あなたの傍に置いておくこともね」

「な――な――何言ってんのよ、何の根拠があってそんなこと……っ!?」


 珍しい。


 大彌が焦っている。


「あら、違ったかしら。当たっていると思ったのだけれど」


 匂宮が話し終えるのを待っていたかのように、突如として轟音が響き始めた。


 なんだこの音―――? プロペラ?


 音は徐々に近づいてくる。


 アパートが微かに揺れ始めた。


「大体あんた何者なの? 名前くらい名乗りなさいよ!」

「人に名前を訊くときは自分から名乗るものだと習わなかったの? まあいいわ。私は匂宮来夢」

「匂宮……? まさか、匂宮財閥の……!?」


 呆気にとられたような表情の秋川。


 そんな彼女に構わず、匂宮は玄関で靴を履き始めた。


「お、おい。どこ行くんだよ?」

「家に帰るの。あなたも一緒に来るのよ、又野くん」

「え、俺も?」


 ピンポーン。


 轟音の中、古びた呼び鈴が鳴った。


 一体誰なんだ、こんな時に?


 俺が玄関のドアを開けると、そこに立っていたのは―――メイド服を着たお姉さんだった。


 ベージュの髪色をしたお姉さんは、俺を見て小首を傾げる。


「……あら、どちら様ですか?」

「それはこっちの台詞だ! あんた誰なんだ!?」

「そろそろ来るのではないかと思っていたところよ。お出迎えご苦労さま」

「家出も大概になさってください、お嬢様」

「え、匂宮の知り合い? どういうこと―――」


 また轟音が近づいたような気がして、俺は顔を上げた。


 上空から徐々に近づいてくる影――それはヘリコプターだった。


 な、なんでヘリがこんなところに!?


「行きましょう又野くん。今日から君は私と一緒に暮らすのよ」

「俺が……匂宮と一緒に?」

「そう。匂宮財閥第18代当主(・・・・・・・・・・)、匂宮来夢のパートナーとしてね」

「匂宮……財閥……?」


 ヘリコプターがアパートの駐車場に着陸した。


 匂宮は大彌の方を見て、言う。


「さようなら、大彌さん……だったかしら。さあ又野くん、手を」


 俺は茫然としたまま、匂宮へ手を伸ばそうとした。


 が、直前でやめた。


「いや―――そういうわけにはいかない」

「どうして?」


 匂宮は不思議そうな顔で俺を見つめた。


「借金があるんだ」

「借金?」

「ああ。1000万円の借金だ。それがある限り俺は……」

「あら、そうなの」


 そう言った後、匂宮はこともなげに言葉を続けた。


「そのくらいなら、大したことないわ」

「大したこと――ない?」

「ええ。だから行きましょう、又野くん」


 匂宮が俺の右手を握る。


 その柔らかい手に引かれるまま、俺はヘリコプターに乗り込んだ。


「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! 1000万円って何の話!? まさかお父様が―――」


 大彌の言葉を遮るように乗降口が閉まり、ヘリが上昇を始める。


 大彌がこちらを見上げながら、顔を真っ赤にして叫ぶのが見えた。


「なんでいつもあたしを置いていくのよぉっっ!」


 その声はヘリのプロペラの音にかき消された。


 ヘリが高度を上げるにつれアパートが小さくなっていく。


「さて、まずはその1000万円を返さなければならないわね」

「さすがにそれは悪いって。理由はどうあれ、俺の借金だし」

「何かそれを証明する書類、あるかしら」

「え? ああ、まあ……」


 俺はポケットに突っ込んだままの借用書を取り出し、匂宮に渡した。


 匂宮はそれを眺め、一瞬何かを考えた後、口を開いた。


「麻里、ヘリの進路を変えさせて。それから秋川家に連絡を取ってくれるかしら。今から私が向かうと」

「承知しました、お嬢様」


 麻里と呼ばれたメイドさんは携帯でどこかへ電話をかけ始めた。


 同時にヘリが回頭し、今までとは逆の方へ進み始めた。


 あっけにとられている俺に、匂宮が微笑みかける。


「大丈夫よ又野くん。すべて私に任せておけばいいんだから」






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『お前のように怠け者で醜い女は必要ない』と婚約破棄されたので、これからは辺境の王子様をお支えすることにいたします。
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