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世界を革命する力を その③


「どうした? 匂宮を取り返す方法、何か考えついたか?」


 炭原さんはこちらに駆け寄ると、俺の方へ顔を寄せながら言った。


「行って会うだけじゃ、匂宮さんは取り返せませんよ」


 その瞳からは、いつもクールな炭原さんにしては珍しく、強い意志みたいなものを感じた。


 そして、やっぱりどこかで見たことがあるような……いや、さすがに気のせいだ。仲の良い後輩なんて今までいたことなかったし。


「じゃあ、どうすれば良いんだ?」

「秋川は異常です。異常な人間は正攻法じゃ倒せません」

「秋川を……倒す?」

「そうです。徹底的にやらなきゃ、あの男を殺しきれませんから」

「な、何言ってるんだ? 炭原さん、あいつの何を知ってるんだ?」

「私も秋川家の血を引く人間―――そう言えばあなたにも伝わりますか、又野先輩」

「……え」


 唐突な発言に、一瞬何が何だか分からなくなる。


 が、同時に納得できたこともある。


 炭原さん、大彌に似ているんだ。


 誰かに似ているような気がしていたけれど。大彌と同じ秋川家の人間だというのなら、声や雰囲気が似ていても不思議じゃない。


「秋川家にとって秋川――あなたの遺伝子上の父親は、本家を裏切った反逆者なんです。あの男を消したいと思っている人間も少なくありません。彼らの力を借りれば、秋川を実力で排除することも可能です」

「殺すってことか」

「今でこそ一大企業の元締めのようになっていますが、秋川家は暗殺を生業とする一族ですから。秋川家の人間が数名あの男に雇われてはいますが、些細な問題です」

「本気なのか?」

「こんなときに冗談は言いません。秋川の排除は私が担当します。ですから一つ、お願いを聞いてもらえますか?」

「お願い……?」


 一体何だろう。


「もし匂宮さんとの面会の中で、今回の事件を引き起こしたあの男と会うことがあれば―――彼の娘をどう思っていたのか、尋ねてください」

「秋川の娘って……大彌のことか?」


 炭原さんが頷く。


「個人的に頼まれていることなんです」

「頼まれたって、大彌から?」

「そんなところです。お願いできますか?」

「あ、ああ。出来る限りやってみるけど……そもそも秋川を殺すなんてこと出来るのか?」

「できますよ。私たちはプロですから」炭原さんは事もなげに言う。「それにあなたも憎いんでしょ、あの男が」


 炭原さんは相変わらず無表情だったが、その目はすべてを見透かしているようだった。


「炭原さん……君、一体何者なんだ?」

「私が誰かなんて、又野先輩は知らなくて良いことですよ。ま、ちょっとだけバラしちゃったのは私の方ですけど。とにかく先輩は匂宮さんに会いさえすればいいんです。その他の面倒くさいことは全部私が引き受けてあげますから。私が秋川家の人間だってことも忘れてくださいね」


 俺に右手を振って、炭原さんは踵を返し理事長室の方向へ戻っていった。


 その様子は、どこか寂しそうに見えた―――が、その理由が何なのかは、俺には思いつかなかった。



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『お前のように怠け者で醜い女は必要ない』と婚約破棄されたので、これからは辺境の王子様をお支えすることにいたします。
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