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ラブコメみたいな日々のおわり その②


「そう騒ぐなよ。私もこいつの扱いに慣れていなくてね。ちょっとした衝撃で引き金が引かれてしまうかもしれない」


 視線を下に向けると、黒い金属の塊が見えた。


 ゲームでは見たことがあるけれど、これって拳銃とかいう……。


「拳銃所持は1年以上10年以下の懲役刑だぞ」

「法律なんてものは関係ないさ。絶対的な権力の前ではね」

「秋川家っていう後ろ盾を失くしたあんたにそんな権力があるとは思えないけど」

「どうだろうな。見せてあげよう」


 秋川は拳銃を持っている方とは逆の手で、俺にスマートフォンの画面を見せた。


 そこに映っていたのは記者会見の中継だった。そしてその中央の席には匂宮の父親が座っていた。


『本日をもって、私は匂宮グループの代表を辞任いたします』


 ……え?


 どういうことなんだ?


 何が起こっているんだ?


 カメラのフラッシュで画面が真っ白になる。


 同時に、俺は何も考えられなくなった。


「匂宮グループ代表のポストはまだ空席だよ。その座に就くべき人間が現れるまではね」


 秋川がスマートフォンを懐に押し込みながら言う。


「……まさかあんたが代表になるつもりなのか」

「同じ過ちを繰り返さないと言うのが私のポリシーでね。秋川家のときは自分が秋川家の当主となることにこだわりすぎて足元を掬われた。次は失敗しない」

「どういうつもりだ?」

「私を貶めたあの小娘に働いてもらう。私が匂宮家を手中に収めるためにね」

「意味の分からないことを言うなよ。匂宮があんたのために働くわけないだろ」

「自分の置かれた状況が分かっていないようだな、又野さわる君」


 押し付けられた銃口が俺の制服に皺を作る。


「待たせてしまって悪いわね、又野君。行きましょ――――」


 玄関に姿を見せた匂宮が、秋川の存在に気付き息を呑む。


 その瞬間、秋川は俺の首を絞めるように後ろから手を回し、拳銃を俺の側頭部に突きつけた。


「匂宮元ご当主。お久しぶりですね」

「あなたが……どうしてここに?」

「少々お暇を頂いておりました」

「又野君に何をするつもり?」

「何もいたしませんよ。元ご当主が私の指示に従ってくださるならね」

「……ダメだ、匂宮。こいつの言うことは何も聞くな……っ!?」


 乾いた音が響いた。


 直後、俺の足に激痛が走った。


 太腿を―――撃たれた。


 制服がみるみる赤く染まっていく。


 匂宮が小さく悲鳴を上げた。


「私は今、彼女と交渉している最中だ。余計な口を挟むな」


 脂のような汗が俺の額を伝った。


 痛い。


 俺は歯を食いしばり、声を上げるのを堪えた。


「……何が望みなの」


 匂宮が言うと、秋川は待っていましたとばかりに笑い声をあげた。


「その言葉をお待ちしていましたよ、匂宮来夢。有り体に言えばこういうことです。このガキの命が惜しければ、私の言うことを聞いてもらおう」



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『お前のように怠け者で醜い女は必要ない』と婚約破棄されたので、これからは辺境の王子様をお支えすることにいたします。
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