コンピューター研究部の一番長い日 その①
※
大会当日。
我らコンピューター研究部は、駅前の大きな会場に現地集合することになっている。
会場の入り口前に到着すると、既に炭原さんが待っていた。
「おはようございます、先輩」
「おはよう。今日はよろしく。ウチのエースとして頼りにしてるよ」
「はい、ご期待に沿えるよう頑張ります!」
そう言ってグッと親指を立てる炭原さん。
よしよし、緊張はしてなさそうだな。気合十分って感じ。
「あとは牛山先輩だけですね」
「ああ、あいつが来たら受付して――お、来た来た…………って、え?」
遠くから俺たちを見つけ、小走りでやってくる牛山。
しかし、その表情は遠目から見ても分かるほどに暗い。
距離が縮まるにつれ、やがて、その理由も分かってしまう。
牛山の右手は――包帯でグルグル巻きになっていた。
「ど、どうしたんだそれ!?」
「お恥ずかしい話だが、帰宅中に転んでしまってね。まあ、見事にフラグ回収というやつだ、はは……」
「牛山先輩、その怪我じゃ操作は……」
「なに、これくらい問題な――ぐっ!」
気丈に手を振って見せようとした牛山だったが、激痛が走ったらしく、すぐにその動きをやめてしまった。
「牛山……」
「すまない。僕が言い出しておきながら、こんなことになってしまって……」
「だ、大丈夫だって! 俺と炭原さんで無双するから、牛山は部長らしくドンと構えてるだけでいい」
「そうですよ。私たちに任せてください!」
「しかしだな、数的不利の重要さは君たちが一番理解しているだろう」
「そ、それは……」
核心を突かれ、炭原さんは言葉に詰まった。
牛山の言う通り、致命的ではある。
最初から最後まで一人欠けた状態では、どれだけ頑張っても優勝などできないだろう。
けど、このまま諦めたくはない。
「せっかくここまでやってきたんだ。ダメ元でいいからやってみよう、もしかしたら勝てるかもしれないし――」
「――絶対に勝つんじゃなかったの?」
と、そこで。
不意に背後から声をかけられた。
非常によく聞き覚えのある――透き通った声。
「……匂宮」
振り返ると、そこには匂宮の姿があった。
「来てくれたのか」
「ええ、又野くんは一時間ぶり、牛山くんはお久しぶり、新入部員ちゃんは初めましてね」
「うむ、お久しぶり。元気そうでなによりだ」
「あ……どうも。はじめまして。炭原です、よろしくお願いします」
「匂宮よ、こちらこそよろしく」
匂宮は軽く会釈をしつつ、それぞれに別々の挨拶を済ませる。
一応、炭原さんには匂宮のことを話してあるが、実際に会うのは今日が初めてだ。
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