表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/93

外の世界へ… その②


 一階へ降りるためのエレベーターすらも、彼女にとっては久しぶりの体験である。


「私の牧場にはエレベーターなんてなかったから、久しぶりに乗ったわね」


 なんて冗談を言う余裕はあるらしい。一安心だ。


 マンションのエントランスを出て、ひとまず、あまり人通りの多くないエリアへと歩き出す。


「私、部屋着のスウェットで来ちゃった」

「それでも十分可愛いよ」

「そう? だけど又野くんと一緒に歩くのなら、やっぱりちゃんと制服を着てきた方がよかったかも……」

「ちょっとキツくなってるかもな」

「どういう意味?」


 ぎゅうっ、と匂宮は手に力を込める。


「痛い痛い痛い……」

「自堕落な生活をしてたからって太ってないし、万が一、体重が増えていたとしても、それは太ったんじゃなくて成長よ」

「わかったって…………ん?」


 手に思いっきり力を入れられたことで、ふと違和感を覚えた。


 なんか、匂宮の手の感触が今までと違うような。


 これは……。


「匂宮、手にマメできてない?」

「……えっ?」

「俺もあるよ。FPSのやりすぎで、親指のところに」

「あ、えっと……そうね。私も牧場を満喫しすぎたみたい。エベレストたちに夢中になっていたから、そのせいね」

なんて、どこか取り繕うようなぎこちなさを見せる匂宮。


 それが少し引っ掛かりはしたものの。


「あ、ところで……大会、もう明日よね?」


 と、彼女が話題を転換したので、それ以上特に深入りすることなく、そちらに付き合う。


「早いよな。匂宮が支援してくれたおかげで三人での練習もかなりできたよ。ありがとう」

「又野くん、お礼を言うのは勝ってからでしょう?」

「……ん、確かに」


 俺も牛山と同じことしてるわ。


「どう? 優勝できそう?」

「どうだろうな。周りの人と比べると俺たちはやっぱ歴が浅いわけだし、そう簡単には行かないと思う」

「まあ、競技である以上はどの世界でもそうよね」

「ああ。けどな、なんと俺には、必ず優勝できる秘策がある」

「なぁに?」

「匂宮が応援に来てくれたら勝てるよ」

「本当?」

「本当だ」

「……絶対に?」

「ああ、絶対」

「ふふっ、そう」


 俺の頑なな返事を聞いて、匂宮は吹きだした。


 そして、その楽しげな表情のまま、俺の目をまっすぐに見つめて――言う。


「じゃあ行くわ」

「お、本当に? 絶対?」

「えぇ、絶対に。なにせ、久しぶりに登校したら自分の部活がなくなってました――なんて、嫌だから」



   ※




読んでいただきありがとうございます!


「続きが気になる!」と思っていただけたら、後書き下部の評価欄の☆を☆☆☆☆☆から★★★★★にしていただけると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
*:・゜✧*:・゜✧☆評価、ブックマークでの応援、よろしくお願いします!! *:・゜✧*:・゜✧
↓↓↓ちなみに新連載です↓↓↓

『お前のように怠け者で醜い女は必要ない』と婚約破棄されたので、これからは辺境の王子様をお支えすることにいたします。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ