コンピューター研究部の存続を懸けて その②
「このゲーム、牛山くんにオススメされたの?」
「あー、いや、話すと長くなるんだけど、今度部活でゲームの大会に出ることになってさ、負けると来年以降の顧問がいなくなっちゃうから、みんな割と必死に練習してる」
「みんな……牛山くん以外にもいるの?」
「最近入って来た後輩の女の子が一人ね。それでちょうど三人」
「……ふぅん」
ポスッ、と。
どこか含みのある相槌を打って、匂宮は俺の肩にもたれかかる。
「……どうした?」
「別に」
「狙いが定めにくいんだけど」
「そう。又野くんもつくづく不幸ね。私みたいな面倒なペットに目を付けられてしまって」
「ペットって……そんなことないさ。匂宮に出会わなかったら今の俺はいない。だから感謝してる」
「ふぅん?」
「こんなに可愛い女の子と暮らせてるんだ。不幸なわけないだろ?」
「ふーん。ならまあ、いいけど」
先程よりも明るいトーンの相槌が出た。
よし、なぜか崩れてしまった機嫌が直ってきている。
「さぁ、わかったならどいてくれ」
「それは嫌」
「な、なんで? ……あぁ、もしかして、三人目が自分じゃなかったことを怒ってる?」
「怒ってないわ。なんかちょっと仲間外れにされたような気分になったからって、怒るわけないじゃない」
「…………」
怒ってるな、完全に。
弁明タイムだ。
「今の匂宮に無理させたくないんだよ。大会は会場でやるから外出しなくちゃならないし」
「なるほど。それは確かに……参加は難しそうね」
「誤解が解けたなら何よりです」
「でも、そういうことなら……このゲーム、今みたいに又野くん一人で遊ぶんじゃなくて、実際に三人で一緒にやった方がいいんじゃないの?」
「そうなんだけどさ、まあ、夜に時間を合わせて一、二時間やるのが限界だろうな」
「どうして? 部活の時間は練習できないの?」
「ああ、部室にはこのゲーム機が一台しかないから」
「……なぁんだ、そんなこと」
匂宮は拍子抜けしたようにそう言って、キッチンの方へ声を掛ける。
「麻里、お願いしていいかしら?」
「はい、手配しておきます」
※
後日。
部室には、追加のモニターとゲーム機が二台ずつ届いた。
「わー、すごいです……!」
「ふむ、ここまでお膳立てされた以上、負けるわけにはいかんな!」
「…………」
いやいやいや。
そこまでしてくれなくていいのに……。
お嬢様の本気ってすごい。
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