コンピューター研究部の存続を懸けて その①
※
「――という感じで、一応、顧問の問題は解決したわけだが、また新たな問題に直面してしまった」
「首の皮がつながっただけでも恩の字だ! よくやってくれた! 又野くん!」
「すごいです先輩! 理事長を説得するなんて!」
俺の報告を聞いた二人は、ハイテンションでパチパチと手を叩いて喜んでくれた。
拍手喝采である。
「だけど条件は厳しいぞ。出場するゲームは三人一組での連携が重要だ。つまり俺たち全員の練度が高くないと優勝はできない」
「ふっ、ならば我々がやるべきことは一つだな」
「ですね!」
「おぉ、なにか秘策があるのか?」
「決まっているだろう。練習あるのみだ!」
「…………」
ま、そりゃそうか。
※
「ただいまー」
「おかえりなさい、又野くん」
「……おお、ただいま」
帰宅した俺を玄関先で出迎えてくれた匂宮は、俺が靴を脱ぎ終わるまで笑顔でジッと待ってくれていた。
いつもは帰るとすぐに抱き着いてきていたのに。
良い感じだ。
依存度が下がっているのは回復の兆候なので、素直に嬉し――
「はい、ぎゅー」
「…………」
抱き着かれた。
まあ、靴を脱ぎ終わるまで待てただけ進歩はしている、ってことで。
例によって匂宮を引き連れたままリビングへ入ると、キッチンで夕食の用意をしていた麻里さんと目が合う。
「又野さん、おかえりなさい。今日もお疲れ様です」
「あ、どうも。ただいま帰りました」
「ねぇ又野くん、来て来て。見せたいものがあるの」
帰宅の挨拶もそこそこに、俺は匂宮に腕を引かれてソファへと連れていかれる。
「おぉ、なになに?」
「見て、エベレストに子供が生まれたの」
「……エベレストって?」
「この子」
匂宮が指で示したのは、モニターに表示されている一頭の牛である。
「あー、今日の朝、買いに行くって言ってた子?」
「そう。可愛いでしょう?」
「いいね、子供の名前は何にする? チョモランマちゃんとか?」
「マナスルよ」
「……そっちの方が可愛いな」
センスないわ、俺。
「又野くん、今日も課題ある? また一緒に勉強できる?」
「いや、今日は何も出てないからエベレストたちの世話をしてていい……あ、待った。実は俺もやりたいゲームがあるんだけど、ちょっといいかな?」
「もちろん。昨日は私がプレイしているのを又野くんが見ててくれたから、交代ね」
俺は匂宮から譲り受けたコントローラーを操作し、例のFPSを起動する。
大会まであと一か月。少しでも練習しておきたい。
「これ、人型のキャラクターを撃ったりするゲームなんだけど、平気?」
「平気よ。心配してくれてありがとう」
匂宮も大丈夫そうなので、さっそく始めるとしよう。
キャラを選んで出撃。
俺がプレイしている間、匂宮は横で「そのボタンで撃つの?」とか、「ここは広くて戦いやすそうね」など、興味深そうに呟いていた。
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