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ラブコメみたいな日々 その⑨


「校内は禁煙ですけど」

「理事長室は喫煙OKなんです」

「マジですか。こ、ここが俺の母校になるのか……」

「誇らしいことですよ。時代は多様性です。ふぁようせい」

「タバコを加えながら喋らないでください」

「ま、ふぉかふぉあたってくらはい」

「他を当たってくださいって……そんな悲しいこと言わないでくださいよ」

「……聞き取れちゃうんですか」


 俺が謎のリスニング力を発揮したことに理事長はたじろぐ。


 よくわかったな、我ながら。


「せめて理由、ダメな理由を教えてください」

「そんなの決まってます。面倒くさいじゃないですか」

「よりによってそれを言いますかね」

「だって特別手当とかが出るわけじゃないんですよ? 顧問って」

「生徒がより良い学校生活を送れるようになる――それが理事長にとって、なによりの報酬なんじゃ?」

「より良い学校生活を送りたければ、遊んでないで勉強でもしなさい!」

「教育者が言うことですか、それ……!?」


 ビシッ、とカッコよく指をさすポーズまで付いてたけど。


「いや、私だってそりゃ又野さんに協力してあげたい気持ちはありますけど、ちょっとメリットが無さすぎるっていうか。あ、そうだ。いっそアルコール研究部にしません?」

「根底を覆すのは辞めてください」

「仮にそうなったら毎日のように顔を出しますけど」

「ちなみになにするんですか、その部活?」

「飲用に適したアルコールの製造とか」

「…………」

「いや、犯罪なのは分かってますよ?」

「分かってないと困ります」


 目が割とマジだったから、本気かと。


 しかし、なるほど。メリットというものがあればいいのなら、勧誘の手立てはある。


「理事長、さっき俺が説明した大会はですね、優勝した賞金が出るんです。中々の」

「はい、それが?」

「もし理事長が顧問になってくださった暁には、その賞金全額でお酒を買いましょう!」

「なっ!? なんて魅力的な誘い文句なんでしょう……!?」


 理事長は衝撃のあまり、咥えていたタバコを床に落とす。


 いいぞ、一気に畳みかける!


「お酒だけじゃありません! おつまみもオマケしちゃいます!」

「そ、そんなのもう酒池肉林じゃないですか……!」

「いや、まあ酒池だけですけど。……ともかく! しばらくはお酒が飲み足りない、なんてことはなくなるわけです!」

「うぅ、心が揺さぶられる……やめてぇ……!」

「そしてなんと! ウチの部室、まったく人が来ないんでお酒とか飲んでてもバレません。顧問になったら好きな時に出入りできます!」

「うそ……楽園は校内にあったなんて……!? もうダメぇ……」


 理事長は椅子から立ち上がって駆け寄ってくると、その勢いのまま俺の両手を熱く握りしめた。


「いいでしょう、学生の青春を応援するのも大人の役目ですからね。顧問の件、この大鳥今宵が引き受けます」

「…………」


 なんか篭絡した。


 十秒前までは夢のような条件に身悶えしていたのに、今は大人っぽい凛々しい表情をしている。


 ありがたいけど、つくづくダメダメな大人だ……。


「えっと、じゃあ、まあ、これからよろしくお願いします、ってことで」

「あ、お待ちを。正式な手続きを済ませる前に、一つだけ」


 そこで、大鳥理事長はコホンと咳払いを打ちつつ、割合、真面目なトーンで言う。


「条件があります。又野さんたちは、今度行われるその大会で結果を出してください。もし達成できたら、来年以降も私が顧問を続けることをお約束します」

「も、もし達成できなかったら?」

「顧問をやるのは今年だけ。先のないモノに投資することはできませんから」

「それってかなり厳しくないですか……?」

「はい。大人の世界は厳しいのです。私、これでも理事長ですからね。板挟みなんですよ。学園の管理効率を上げるため、小規模な部活は減らせって声が多くてですねぇ」

「ああ……なるほど」

「とはいえ、もちろん、私個人としては応援していますからね? どうか頑張ってください、又野さん?」



   ※



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『お前のように怠け者で醜い女は必要ない』と婚約破棄されたので、これからは辺境の王子様をお支えすることにいたします。
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