ラブコメみたいな日々 その⑦
「同志諸君、今日は良いトピックスを仕入れてきた」
「おぉ、なんですか?」
「それはだな……むむ、なんという奇跡。もう練習に取り組んでいたか。感心、感心」
「……? どういうことです?」
「早く教えてくれ」
「ふっ、いいだろう。見たまえこれを」
牛山がグッと突き出したスマホの画面を、俺と炭原さんは覗き込む。
そこには、高校生のみ出場可能なeスポーツの大会の公式サイトが表示されていた。
競技として表記されているタイトルの中には、ついさっきまで俺たちが遊んでいたFPSもある。
なんか薄々、話が見えてきたな……、
「あの、牛山先輩。つまり?」
「つまりだな。この大会に我々も出場しようというわけだ!」
「今日、来るのが遅かったのはそれのせいか」
普段は絶対に俺より先に来てるから、何をしてるんだろうと不思議に思っていた。
しかし。
「こういうってさ、それこそゲームを専門にしてる部活の人たちが出るんじゃないか? ウチにだってそういう部があるわけだし」
「だからこそだよ! その専門でやってる部活よりも我々がいい結果を残せば、来年の入部希望が増えるって寸法さ!」
「ああ……そういうこと」
「そういうことさ! いやぁ、コン研の未来は明るいなー!」
「じゃあまず、顧問の先生の許可をもらわないとですね」
「顧問の先生……⁉」
炭原さんの言葉を聞いて、牛山は雷に打たれたような動揺を見せる。
いやまあ、そりゃ顧問の許可は要るだろうね。
あ、でも待てよ。
「そういえば顧問の先生が部室に来てるの見たことないな。誰がやってるんだ? その動揺から察するに、こういうのには厳しい先生がやってるみたいだが」
「……いない」
「はい?」
俺が拍子抜けした声で聞き返すと、牛山は苦悶の表情で語りだす。
「ほんの数分前の事だ。僕は許可をもらいに職員室へ行った。だがそこで恐るべき事実が判明した。なんと、この部活には顧問が存在していなかったのだ!」
「そ、存在していなかったって……」
牛山の言葉に困惑している俺に、炭原さんが小声で耳打ちをしてくる。
「あ、ありえます? そんなこと」
「信じがたいよな……?」
「はい」
「俺も同感だけど……牛山が言っている以上、受け入れるしかないよな。なぁ、今まではどうしてたんだ? なにも創設時からフリーなわけじゃないだろ?」
「ああ、つい一年前まではいたらしいが、今年、何かの手違いで前任からの引継ぎがなされなかったのだろう」
「なるほどな」
あれ?
ということは。
「この部活って、新入部員がどうこう以前に、このままだと廃部じゃないか?」
「その通り、先程、職員室の先生にも同じことを言われた。『顧問がいない部活は存続できない』とね」




