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ラブコメみたいな日々 その④


 匂宮は初々しい手さばきでスティックを操作し、町中を観光していく。


「なるほど、ここは作物の種を売ってるのね。で、こっちは動物みたいだけど……やっぱり高いのね、飼いたいけど、今はまだ手が出せないみたい」


 目につくお店や風景を、一つ一つ、興味深そうに見ていく匂宮。


 今日に至るまで、常に、自分の取るべき行動を他者に決められていた彼女にとって。


 それは割合、新鮮な体験かもしれない。


 それから。


 彼女は畑を耕して種を植え、春の野菜を育てていった。


 毎日水を上げて、枯れていないかを確認して、やがてゲーム内で数十日が経つと、収穫の時期が訪れた。


「又野くん、ついに収穫できたわ!」

「おめでとう。良い感じに育ってるじゃないか」

「ええ、そうね。よし、これを売ってお金を稼いで、動物を飼う資金にしましょう」


 これ以上なく嬉しそうに喜んだあと、匂宮はすぐさま次の目標を決める。


 この辺りはやはり、優秀な匂宮一族としての本能だろうか。


「夏に植える作物はどうしようかしら。春は同じ野菜ばかり育てちゃったから、今度はもっと色々な種類を育てたいわね。今の畑の規模だと……」


 もはや常連になったショップで、次に育てる作物の吟味をしている。


 かなり熱中してるな。楽しそうで何よりだ。

 これならもしかすると……。


 ふと思い立ち、俺は何気なく匂宮に声を掛ける。


「ちょっとトイレに行ってきていい?」

「ええ、どうぞ。育てる野菜が決まったら報告するわ」

「……あ、うん。それじゃ」


 俺はソファを離れてトイレに向かう。


 最後の返事がちょっと挙動不審な感じになってしまったのは、いつもの匂宮なら間違いなくトイレまで付いてきていたからだ。


 俺が同じ空間にいながら――一人になることを嫌がらなかった。


「あんなに活き活きとしてる匂宮、久しぶりに見たな」



   ※



 次の日、一応、匂宮を学校に誘ってみたが、「今日は牛を買いに行くからダメ」とかなりレアな理由で断られた。


 まあ、最近の匂宮は俺が家を出る時間になっても起きていないことがザラだったので、ゲームのためとはいえ早起きするようになったのは良い傾向だろう。


 ただ、匂宮のいない学校生活はいまいち張りがなく、あっという間に時間が過ぎてしまう。


 というわけで、放課後。


 俺はいつものように部活に来ていた。



 相変わらず人口密度の低い部室だが、今回はメンバーが違う。


 モニター前のソファにて、俺の横に座っているのはいつもの牛山ではなく、炭原さんだ。


 

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『お前のように怠け者で醜い女は必要ない』と婚約破棄されたので、これからは辺境の王子様をお支えすることにいたします。
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