ラブコメみたいな日々 その③
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このマンションには、以前、匂宮が屋敷で暮らしていたころの私物があらかた揃っていて、入りきらなかった分を置いておくため、隣にもう一部屋借りてあるという大判振る舞いっぷりだ。
とはいえ、まあ、匂宮はゲームを嗜む性格ではなかったので彼女の私物にはゲーム機がなかったのだが、そこは流石にお金持ちといった感じで、匂宮が麻里さんに連絡を入れたら、そこからものの数十分で最新のゲーム機たちが届いた。
うわ、すごい数だ……。P〇Pや3〇Sだけでなくネオジ○やセ○サターンまである。懐かし。
ま、今回はひとまずテレビに繋いで遊ぶ方にしとくか。
「最近、部活でよく牛山と遊んでるんだけど、それが結構楽しくてさ」
日々の学校事情を絡めながら、俺はゲームのセッティングを進める。
「だから匂宮も、部活だけでも来たらどうかなって思って」
「でも私、ゲームなんてやったことないわ」
「俺がサポートするよ。勉強を教えてくれたお礼だ。はいこれ」
コントローラーを手渡された匂宮は、まるで骨董品を鑑定するみたいに、様々な角度から不思議そうに眺める。
「これ、どうやって持つの?」
「両手でこう。親指がこのスティックにくる感じで」
持ち方を教えるべく、匂宮の手を包み込むようにして上から握り、その状態でコントローラーを構える。
「なるほど……しっくりくるわ」
「なんか遊んでみたいジャンルとかある?」
俺はソファに座っている彼女の横に腰を下ろしつつ、ゲームの好みを尋ねてみる。
「そうねぇ、会社を経営するゲームとか、あったりするのかしら?」
「……あるけどオススメはできないかな。今の匂宮には」
「そう? じゃあ、動物が好きだから、動物を育てるゲームとか」
「ああ、それならいいかも。さっそくやろう」
俺は匂宮の希望に沿ったゲームのダウンロードを済ませて、起動する。
主人公が田舎の町で畑や牧場を営むという、ほのぼのしたゲームだ。
自分の名前を決め、オープニングを見て、いよいよスタート。
匂宮のキャラが自由に動かせるようになった。
「これが匂宮の牧場だな」
「ここで、私は何をすればいいの?」
「なんでもいいよ。野菜を育てたり、動物を飼ったり。釣りに行ってもいいし、匂宮の好きなことをやればいい」
「私の、好きなこと……」
俺の言ったことを繰り返して、匂宮は画面を見つめる。
「じゃあまず、町を見て回ってもいいかしら?」
「ああ、もちろん」