新入生 その③
「ゲーム、されてたんですか?」
「え?」
表情をあまり変えないまま、炭原さんが俺に顔を向けた。
「モニターがゲーム画面のままでしたから……」
「ああ、うん。コンピュータ研究部って言っても、俺と牛山がやってるのはゲームばっかりだ」
「もしかして炭原さんはプログラム関係に興味があったのかな? じゃあそのパソコン、好きなものを使って構わないよ。少し型は古いけどね」
「いえ、ちょっと質問しただけです。私も別にパソコンが得意なわけじゃないので」
「なるほど、興味が湧いて来たよ。炭原さんはどうしてウチの見学を?」
「数日前からなんとなくこの部室棟を見学していたんですけど、この部の雰囲気が良さそうだったので」
雰囲気が良さそう?
まあ、確かに楽しいけど……と、部室内を見回してみる。
薄汚れた絨毯、埃の積もったブラインド、そしてボディが日焼けしたパソコンにときどき点滅する蛍光灯。
少なくとも女子高生が好きこのんで入って来たくなるような雰囲気ではなさそうに感じるが、まあ、その辺りの合う合わないは人それぞれ。俺が不審に思う必要はないだろう。
「……炭原さん、やりたいゲームとかある?」
俺が訊くと、炭原さんはモニター台の脇に並んだ数台のゲーム機を眺め、言った。
「最近のゲーム機もあるんですね」
「え? ああ、言われてみれば」
「ここってインターネット環境あるんですっけ?」
「コンピュータ―研究部だからな。あると思うけど……なあ、牛山。ここってネット繋がってるの?」
「当たり前じゃないか。オンライン対戦でもやるのかい?」
「FPS、最近ハマってるんです。こっちの新しい機種、貸してもらえますか?」
「いいよな、牛山」
「ああ、もちろん」
炭原さんはモニター台の脇に置いてあったゲーム機の電源を入れ、モニターの入力を切り替えると、コントローラー片手に再びソファに座った。
タイトル選択画面から、最近流行りのバトルロワイヤル系のFSPゲームを選択する。
「へー、これなら俺も知ってるよ」
「又野先輩もやったことあるんですか?」
「いや、やったことはないんだけど」
「プレイ動画は見たことある、みたいな感じですか」
「そうそう」
このゲームは3人一組でチームを組み、フィールドに落ちている武器を拾って対戦相手を倒し、数十名のプレイヤーの中で最後まで生き残るというものだ。
炭原さんは慣れた手つきでキャラを選択し、マッチを開始する。
読んでいただきありがとうございます!
「続きが気になる!」と思っていただけたら、後書き下部の評価欄の☆を☆☆☆☆☆から★★★★★にしていただけると嬉しいです!