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会合 その④


「この件について事前に匂宮マテリアルの役員数名に聞き取りをしたところ、みなさん正直に答えてくださいました。社内で谷津咲社長を中心とした極秘の会議が行われていると。そしてスクリーンに表示されているこのデータは、その会議内で使われたとされる、匂宮マテリアルの本来の収支をグラフにしたものです」


 会社の経営なんて全く分からない俺が見ても、その数値が年々右肩下がりになっているのが見て取れた。


 つまり―――谷津咲は経営データを改ざんして公表していたってことのなのか?


「だ、代表はそのデータをどうするおつもりですか?」

「もちろん外部に公表し、匂宮グループの代表として謝罪を行うつもりです」

「そ、そんなことをすれば、あなたの地位もただではすみませんよ!」


 谷津咲が震える指を匂宮に向ける。


 それでもなお、匂宮は動じなかった。


「……データの改ざんを認めるということですね?」

「なっ、いや、そ、それは……しかし、匂宮マテリアルは経営の改善に……」

「グループの代表として、率先して不正を行うような人物を経営に参加させるわけにはいきません。近日中に新社長候補を数名提示してください。その選任はもちろん、谷津咲社長以外の方が中心となって行うように」





『この不祥事により、匂宮マテリアルの谷津咲元社長は解任され、社長には新たに那珂川が就任することに―――』


 大画面のテレビから、アナウンサーの声が流れている。


 俺は匂宮と、ダイニングルームで朝食を取っていた。


 あの会合から既に数日が過ぎ、匂宮マテリアルに関する諸問題は既に解決へと動き出している―――らしい。


 その中心人物となったのは言うまでもなく匂宮だ。


『なお、今回のデータ改ざんによって、匂宮グループの現代表である匂宮来夢代表の進退が問われているとの情報も入っております』

「……そうなのか?」

「ええ、そうよ」匂宮が答える。「もうグループ内では決定事項。私はもうすぐ代表を引退するの」


 代表引退って、スポーツか何かみたいだな……なんてことを考えていると、匂宮は、どうして? と俺の顔を覗き込んだ。


「いや、聞いてなかったからさ。もちろん、あの会合以来匂宮がずっと忙しくしているのは知ってたけど」

「ごめんなさい、伝えるタイミングがなかったの。でも安心して。あなたが私のパートナーであることに変わりはないし、私が代表を辞めるからと言って今の生活が大きく変わることはないわ」

「そう――なんだな」

「ええ。いつまでもこうして一緒にいられるのよ」


 と、匂宮は俺の腰の辺りに回した手を支えに、俺に身体を密着させた。


 あの会合以来、匂宮は屋敷に居る間いつもこうして俺に抱き着いている。


 トイレに行くときでさえも、ドアの前で待っていて欲しいと言う。その間はずっと匂宮に話しかけていなければならない。


 屋敷に居る間、もし俺が少しでも匂宮から離れてしまうと、彼女は口を固く結んだまま大粒の涙を流すのだ。


 そしてもちろん、匂宮は学校へは行っていない。



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『お前のように怠け者で醜い女は必要ない』と婚約破棄されたので、これからは辺境の王子様をお支えすることにいたします。
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