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会合 その①



 校門のところまで戻ってくると、周囲には誰も居なかった。


 振り返って屋上を見上げても、そこには理事長の気配すらなかった。


 沈みかけの夕日のノスタルジックな日差しも相まって、この世界に存在する人間は俺独りなんじゃないかなんて錯覚さえした。


 もちろんそんなことはないし、遠くに見えるビルの明かりの下では今日も残業に勤しんでいる方々がいらっしゃるのだと思うと、それはそれでやるせないような気持ちになった。


 とにかく。


 俺は匂宮の屋敷に帰らなければならない。


 校門の外へ一歩足を踏み出したとき、俺の前に一台の黒い高級車が停まった。


 後部座席の窓が開き、匂宮の丸い瞳が現れる。


「お待たせ、又野くん」

「いや、待った覚えはないけど――迎えに来てくれるとは思わなかった」

「あなたは私の大切なパートナーよ。一人寂しく徒歩で帰宅させるなんて真似、匂宮家の名において許さないわ」

「それはどうも……」


 言いかけて、匂宮の服装がいつもと違うのに気付く。


 華やかなドレスらしき服装で、髪型もテレビの中の芸能人みたいに綺麗な編み込みになっていた。


「どうしたの?」

「なんか、いつもと雰囲気違わないか?」

「当たり前でしょう。今日は匂宮家の会合なのよ」

「そうなのか。なんか悪いな、そんな忙しいときに迎えなんか来てもらっちゃって」

「いいのよ」


 匂宮が答えるのと同時にドアが開いた。


 運転席の方を見ると、ハンドルを握る麻里さんの姿があった。


「あなたもこれから一緒に行くのだから」

「……え?」

「聞こえなかった? 又野くんもこれから一緒に会合へ出席するのよ」


 匂宮の言葉に、俺はドアを閉めようとしていた手を止めた。


「……俺学校の制服なんだけど、こんな格好で行って大丈夫なのか?」

「大鳥学院は経済界にもつながりのある由緒正しい学校よ。問題ないわ」

「でも俺、財閥の会議になんて出席したことないし」

「心配はいらないわ。あなたは私の後ろに座っているだけで良いの。それに」


 匂宮が俺の腕を握り、こちらを見上げ、言葉を続ける。


「傍にいて欲しいの。あなたがそうしてくれたら、勇気が出るような気がするから」

「……後ろに座っておくだけだぜ、俺に出来るのは」

「それで充分よ」


 俺はドアを閉め、匂宮の隣に座った。


 麻里さんがアクセルを踏み、車が走り出した。


 匂宮は俺の腕を掴んだまま車の進む方向を見つめていた。


 そんな匂宮に何か話しかけようとして、その手が震えているのに気が付いた。


 俺は口を閉じ、匂宮と同じように車の進行方向に顔を向けた。



連載再開を待ってくださっていた皆さん、お待たせしました。お待たせしすぎたかもしれません。

またご愛読、よろしくお願いします。

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『お前のように怠け者で醜い女は必要ない』と婚約破棄されたので、これからは辺境の王子様をお支えすることにいたします。
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