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【完結】冤罪で高校を退学させられた俺、大富豪の美少女令嬢に拾われ溺愛生活が幕を開ける。  作者: 抑止旗ベル
第一部「痴漢冤罪で借金まみれの俺がお嬢様にゲッチュされた件」
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俺と令嬢はひかれあう その②


 吸い込まれるような緑色の瞳と目が合った俺は、思わず声をかけていた。


「……雨宿りか?」

「ええ。あなたもそうなの?」

「ああ……まあ、そんなとこだ」

「そう」


 少女は再び道路の方に顔を向けた。


「……誰か、待ってるのか?」

「いいえ、違うわ」

「じゃあなんでこんなところに居るんだよ。家は?」

「今は――帰れない」


 どういうことだ?


 よく分からないけど、何か訳アリってことか。


「早く止むといいな、雨」

「……止んでも私、行くところなんてないわ」


 少女はアンニュイな声音で言った。


「どういう意味だよ?」

「色々事情があるのよ、私にも」

「ああ……さては家出だな?」


 うっ、と少女が呟く。


「優れた洞察力を持っているのね」

「ありがとう。気持ちは分かるぜ。勢いで家を出て来ちゃって引っ込みがつかなくなったんだろ?」

「何から何までその通り。まったく、嫌になっちゃうわね―――」


 その瞬間、少女は糸が切れたようにベンチへ倒れこんだ。


 さすがに俺は慌てた。


「ど、どうした!? 大丈夫か!? 病気なのか!?」


 俺に返事をするように、ぐう、という間抜けな音がした。


 まさかこれは――腹が鳴った音か?


 少女の顔が徐々に赤くなっていく。


「辱めだわ……」

「ひょっとしてお前―――腹減ってんのか?」


 少女が微かに頷く。


 行き倒れってことか? このご時世には珍しい。その割には高級そうな服着てるけど……。


「……仕方ない。俺の家で何か食うか? いつまでもこんなところにいるわけにもいかないだろ?」

「だけど……他人の施しを受けるわけには」

「気にするなよ。それともここで飢え死にする気か?」


 少女は少し考えるようなそぶりをして、それから覚悟を決めたように言った。


「あなたの言葉に甘えさせていただくわ」

「そうか。じゃあ……行くか」


 俺は少女の前に屈み、背中を向けた。


「……何?」

「いや、そんな調子じゃ歩けないだろ。おぶってやるから」

「で、でも……見ず知らずのあなたにそこまで甘えるわけには」

「じゃあ歩くか? 悪いけど、俺の家まで20分くらいは歩くぞ」

「20分は……歩けないわね。赤子にフルマラソンを走らせるようなものだわ」

「どんな例えだよ」


 そう答えつつ、俺の首に手を回した少女を背中に、俺は立ち上がった。


「そういえばあなたの名前を聞いていなかったわ。教えてくれるかしら」

「俺は又野さわる。君は?」

「私は匂宮来夢におうのみや らいむ。よろしくね、又野くん」


 いつの間にか雨は上がっていて、雲の切れ間から太陽の光が差し込んでいた。


 俺は匂宮を抱えたまま、家に向かって歩き始めた。


「……で、年齢は?」

「女の子に歳を訊いてはいけないって、幼稚園で習わなかった?」

「ごめん、俺、保育園だったから」

「君の口は余計なことを言うのね。意外だわ」

「うるせえよ」





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『お前のように怠け者で醜い女は必要ない』と婚約破棄されたので、これからは辺境の王子様をお支えすることにいたします。
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