表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/93

事件の後 その②


「しかし君も大変だったみたいだね。治療の跡が生々しいよ」


 牛山は俺の頭の包帯を見ながら言う。


「まあ……軽傷で済んで良かったよ。どちらにしても匂宮は守れなかったわけだけど」

「君が気に病むことはないさ。人を車で拉致するなんてこと、普通は考えつかないよ。君に原因があるわけじゃない」


 カセット交換を終えた牛山が再びゲーム機の電源を入れる。


 モニターにゲームのタイトル画面が表示された。


「…………」


 俺は右手に匂宮のてのひらの感覚を思い出していた。


 あの手を放さなければ匂宮は怖い思いをせずに済んだ―――そんな考えが四六時中、俺の頭の中に浮かんだり消えたりしていた。


「君は匂宮さんを助けようとしたんだろ。君は出来ることをやった。もう自分を責めるのはやめた方が良い」

「そう言ってくれると……少しは気が楽だよ」


 俺はコントローラーを握り直した。


 匂宮の泣いている顔を忘れるように、ゲーム画面に集中した。


 色を揃えてブロックを消していく、俺も知っている有名な落ちものパズルゲームだ。


「それよりカフェの感想を教えてくれ。率直に言ってどうだった? 気になるところはあったかい?」

「いや、居心地のいいカフェだったよ。お客さんも多かったみたいだし、料理も美味しかった。ただ……」

「ただ?」

「カフェのメニューに牛丼っていうのはどうなんだ? 注文する人いるのか?」


 俺の言葉に、牛山は気が抜けたように笑った。


「こだわりなんだよ。ただカフェをやるだけじゃつまらないだろう? もちろんカフェに牛丼が似合わないのは知ってるさ。それでも、捨てられないプライドってものがあるんだろう―――僕の父親にはね」

「親父さんの意思ってことか」

「意外と頑固なところがあって困るよ」


 牛山が対戦モードを選択し、画面が切り替わる。


 やったことはないけれど、まあ、普通のパズルゲームだ。全く敵わないってことは無いだろう。


 そんなことを考えていると、牛山は落下してくるブロックを凄まじいスピードで組み始めると、あり得ない数のコンボを繰り出してきた。


 マジか、と思っている間に俺の画面には『YOU LOSE』の文字が表示されていた。


「初心者相手に15連鎖って……どうやったらそんなスコアが出せるんだ?」

「ちょっとしたコツがあるんだ。教えてあげるよ、又野くん」


 そう言いながら、牛山はポケットから取り出したクロスで眼鏡を拭き始めた。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
*:・゜✧*:・゜✧☆評価、ブックマークでの応援、よろしくお願いします!! *:・゜✧*:・゜✧
↓↓↓ちなみに新連載です↓↓↓

『お前のように怠け者で醜い女は必要ない』と婚約破棄されたので、これからは辺境の王子様をお支えすることにいたします。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ