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事件の後 その①

「匂宮……」


 一体誰が匂宮の誘拐なんてことを……?


「申し訳ありませんお嬢様、又野さん。私たちのミスです」


 麻里さんが両手でスカートの裾を払いながら言った。


「ミスってどういうことです?」

「お嬢様には常時、厳重な警備体制が敷かれているのです。又野さんに黙っていたことは謝りますが、今回の外出にも相当な数の警備が居たのです」

「……マジっすか」


 言われてみれば確かに、財閥の代表を護衛もつけずに外出なんかさせないよな。


 ということは、カフェでコーヒー飲んでるときも監視されてたってこと?


 怖い。


「今回の相手はその警備網をすり抜けてお嬢様に接触しました。どこの誰がこんなことを計画したのか――彼らに聞いても、恐らく有効な情報は持たされていないでしょうね」


 と、麻里さんはワゴン車の方を見た。


 そのすぐ傍らにはボロボロになったオープンカーがあって、理事長がドアにもたれるようにしながら煙草を吸っていた。


 俺と目が合った理事長は慌てた様子で煙草を踏み消し、誤魔化すように大げさな咳払いをして、こちらに歩み寄って来る。


「あのお、とりあえず一件落着ってことですか?」

「理事長、ありがとうございました」


 俺が言うと、


「い、いえ、困っている生徒を助けるのが私の役割ですから。それよりも」


 理事長は一度言葉を切って、オープンカーを見た。


「車の修理代、請求書はどちらに送ったらいいですか?」





「なるほど、そんなことがあったんだな」


 液晶モニターの中で、二人の男が激しい格闘戦を繰り広げている。


 弱攻撃の連打が片方を襲い、逃れようとジャンプしたところを上段の蹴りに捉えられた。


「それで今日、匂宮は休みなんだよ」

「そうか……。サービス券を渡した身としては申し訳ないな。すまない、又野くん。匂宮さんにも伝えておいてくれ」

「謝る必要はないだろ。誘拐事件が起こるなんて誰も想像してなかったんだから」


 そう言って俺はコントローラーにコマンドを入力した。


 必殺技が発動し、牛山が操作してしているキャラをノックアウトする。


「……容赦ないな、君は」

「意外と得意なんだよ、格ゲー」

「じゃあ次は僕が得意なゲームをやろうじゃないか」

「望むところだ」


 放課後。


 コンピューター研究部部室。


 ソファに座る男子生徒が二人――俺と牛山だ。


 そして俺たちの真正面にあるモニターから伸びるケーブルの先には、古いゲーム機があった。


 牛山はソファから立ち上がるとゲーム機の電源を切り、カセットを交換した。


「誘拐犯は捕まったのかい?」

「ああ。警察が大勢来て大変だったよ。……だけど捕まったのは実行犯だけで、誘拐を計画した人間は別にいるらしいんだ。麻里さん――ええと、メイドさんが言ってた」


 あの事件の後、パトカーや救急車が現場にやってきて一時は騒然としていた。


 警察の事情聴取なんかは麻里さんが全部対応してくれたから、俺が警察のお世話になるようなことは無かった。ただ、大鳥理事長はスピード違反で警察の人に注意されてたみたいだけど……。


 匂宮は屋敷に帰っても泣き止まず、今日は学校を欠席していた。あれだけ怖い目にあったのだから当然だろう。




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『お前のように怠け者で醜い女は必要ない』と婚約破棄されたので、これからは辺境の王子様をお支えすることにいたします。
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