表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/93

令嬢とデート その⑨


「匂宮!」


 車から飛び降りた俺はワゴン車に駆け寄った。


 ドアノブに手をかけ引っ張る――と同時に中から現れた男の拳が、俺の顔面にクリティカルヒットした。


「っ……!」


 ヤバい、敵に攻撃されることを何も考えていなかった。


 そりゃあ相手は誘拐犯なんだから、抵抗の一つや二つもやってくるか。


 男の背後で、両手をバタバタさせながら暴れる匂宮の姿が見えた。脇に座る男に押さえつけられている。


 車を降りて来た男が俺めがけて拳を振り上げた。


 俺は反射的に、相手の股間めがけて思いきり右足を振った。


「―――ッ!」


 直撃した感触。


 蹲る男を尻目に、俺は車内へ飛び込んだ。


「匂宮!」


 さっき殴られたせいか、口の中で出血していた。


 鉄の味を感じながら、俺は匂宮に手を伸ばした。


「又野くん!」


 こっちに気付いた匂宮が、泣きはらしたような目でこちらを見る―――が、その傍らの男の方が速かった。


 男は俺を見ると、両手でこっちに掴みかかって来た。


 大柄な男だ。体格差を考えると全く勝ち目がない。


 そのまま俺は車内から押し出され、男にのしかかられた。アスファルトの地面に後頭部をぶつけ、目の前がチカチカした。


 や……ばい、さすがに。男子高校生一人でどうにかなる状況じゃない。


 だけど匂宮だけは逃がさなきゃ―――。


 そのとき、俺は、ワゴン車の上に黒い影が落下してくるのを―――見た。


 がしゃあん、と派手な音を立てながら現れたその影はゆらりと立ち上がると、長い丈のスカートをはためかせながらこちらを見下ろした。


「………あなたたち、死にたいみたいですね」


 強烈な殺気を放ちながらこちらを見下ろすその女性は、麻里さんに他ならなかった。


 麻里さんはワゴン車の天井を蹴り、一瞬でこちらに肉薄すると、僕に馬乗りになっていた男の腹部に蹴りを入れた。


 男は身体をくの字に折りながら、白目をむいてその場に倒れた。


「麻里……さん?」

「あとでお怪我の治療をしてさしあげますね、又野さん」


 一瞬だけいつもの笑顔を浮かべた麻里さんは、すぐに冷酷無比な殺し屋のような表情に戻り、車内に飛び込んでいった。


 そして車が二、三度揺れたかと思うと、ドアが蹴り開けられ、中から運転手らしき男とその仲間が外へ放り出された。


 男たちは腕や足が変な方向に曲がっていて、地面に倒れた体勢のままピクリとも動かなかった。


「に……匂宮!」


 俺は最後の力を振り絞って立ち上がり、車内へ駆けこむ。


 同時に、俺の目の前へ小さな影が飛び出してきた。


「又野くん!」


 匂宮だ。


 その身体を俺は両腕で受け止めた。


「大丈夫だったか、匂宮」

「うん。でも、でも、怖かったよぉ……っ!」


 そう言って匂宮は、俺の胸に顔を埋めたまま、肩を震わせて泣き始めた。



読んでいただきありがとうございます!


「続きが気になる!」と思っていただけたら、後書き下部の評価欄の☆を☆☆☆☆☆から★★★★★にしていただけると嬉しいです!

執筆の励みになりますので、ぜひお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
*:・゜✧*:・゜✧☆評価、ブックマークでの応援、よろしくお願いします!! *:・゜✧*:・゜✧
↓↓↓ちなみに新連載です↓↓↓

『お前のように怠け者で醜い女は必要ない』と婚約破棄されたので、これからは辺境の王子様をお支えすることにいたします。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ