僕はまあ、なんか色々少ない。 その②
「どんな部活があるんだ、牛山」
「そうだね、メジャーなところで言えば文芸部とか吹奏楽部、あとは奉仕部とか隣人部とかS〇S団とか電波新聞部とか何をやっているのかよく分からない部活まで、とにかく多種多様だよ」
「そんなに種類があると迷うなあ。ちなみに牛山のおすすめは?」
「なるほど。では、僕が所属している部活を紹介しよう。こっちだ」
賑やかな廊下を人を避けるようにして歩きながら、俺たちは一階廊下の隅にある扉の前に辿り着いた。
「ここは……?」
「僕が所属する部活、コンピューター研究部の部室さ」
「コンピューター研究部……」
扉の脇には、確かに『コンピューター研究部』と書かれた古びた標識が掲げられていた。
「まあ、中に入ってくれ。詳しく説明するよ」
そう言って牛山がドアノブを回すと、軋んだ音を立てながら扉が開いた。
窓にはブラインドが掛かっており、部屋の中は薄暗かった。
室内には机が数個と、その上に置かれたデスクトップ型のパソコンが数台。その光景は、部室というよりも何かのオフィスのように見えた。
座ってくれ、と牛山が部屋の隅のソファを指す。
俺と匂宮は並んで座り、牛山はその向かい側のソファに腰かけた。
「で、コンピューター研究部って何をする部活なんだ?」
「その名の通り、コンピューターの研究だよ。君たちをここに連れて来たのには理由があってね。実はこのコンピューター研究部、部員が入って来なくて廃部になるかもしれないんだ」
「そ、そうなのか?」
確かに活気があるようには見えない。
部室棟にはあれだけ人がいたのに、この部室に誰も居なかったのにも違和感があった。
「昔は人気があったんだけど、近年は『Eスポーツ部』とか『プログラミング部』なんかの部活が出来てしまってね。かつていたい部員たちもそっちに流れてしまったんだ。そもそもスマホの普及と同時に若者のPC離れが―――いや、まあ、とにかく今この部は廃部寸前ということさ。そして君たちをここに連れて来た理由と言うのはまさに――」
「私たちを入部させて、部の存続を図ろうということね」
匂宮の返事に、牛山が困ったように笑う。
「さすが匂宮さん、察しが良いね。……というわけで、どうかな。僕を助けると思って、コンピューター研究部に入部してくれないか?」
なるほど、人数が多い方がいいとか言ってたのはそういうわけか。
牛山も牛山で色々と事情があるわけだな。




