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屋上にのぼって その③

 俺と匂宮は顔を見合わせた。


「何の音だ?」

「さあ……?」

「他に誰かがいる可能性って考えられるか?」

「どうかしら。鍵は閉まっていたから……」

「ちょっと待ってろ、見てくるから」


 俺は立ち上がり、音のした方へ向かった。


 そちらはちょうど給水タンクが設置してある箇所だった。


 もし誰かがいるのだとしたら、この裏―――。


「ひ、ひいいいっ! 許してください許してください、勤務中にお酒なんて飲んでいませんからああああっ!」

「……は?」


 給水タンクの裏側。


 そこには散乱した空き缶と、ロングヘアをピンク色に染め、全身花柄のワンピースを着た女性が土下座している姿があった。


「か、仮に飲酒していたとしても少量ですからっ! 業務に支障のない範囲ですからっ! クビだけは、クビだけは勘弁してくださいぃっ! 鍵を閉めていたのも偶然で、誰も入って来られないようにしていたわけじゃないんですうううう!」


 空き缶をよく見ると、全部チューハイとかビールのものだった。


 そういえば若干酒臭いような気もする。


「ええと……あなた誰なんですか?」

「え?」


 ピンク髪の女性がようやく顔を上げた。


 かなり若く見えるが、俺達よりは少し年上のようだ。大学生くらいだろうか。


「いや、部外者の人なら通報した方が良いのかな、とか思ってて」

「つ、通報はやめてください! 私は大鳥今宵おおとりこよい。この学院の理事長なんですから!」

「り――理事長!? あなたが!?」


 しまった、という顔をする大鳥理事長。


「あ、いや、飲酒も理事長の職務なんですよ。生徒に飲酒はいけないと指導するために、お酒がどんなに悪影響なのかということをこの身をもって確かめる必要があるんです」

「へえ、なるほど。理事長も大変なんですね」


 俺が言うと、大鳥理事長はうんうんと頷いた。


「そうなんですそうなんです。理事長は大変なんです。飲酒も仕事の一環なんですよ」

「―――そんなわけがないでしょう、大鳥理事長」


 冷静な声が俺たちの間に割って入る。


 振り向くと、そこには匂宮が立っていた。


「ひいいいいっ! 匂宮オーナーっ!」

「その呼び方はやめてください。この学院では、私は一生徒に過ぎないのですから」

「は、はあ、匂宮さん」

「あなたの仕事ぶりは聞いています。あなたの優秀さも。しかし勤務中に飲酒をするのはやめてくださいと何度もお伝えしているはずです」

「も、申し訳ありませんっ! 二度とお酒は飲みません!」

「その台詞は二週間前にも聞きました。これが最後のチャンスですよ」

「は――はいいぃ!」


 何度も頭を下げる大鳥理事長。


 俺が昨日見かけたピンクの髪の人物は、もしかするとこの人だったのかもしれない。


 ってことは昨日言ってた急用って、まさか酒を飲むために屋上へ行くことだったのか?


 お酒がどんなに悪影響なのか、たしかに身をもって示してくれてる……。



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『お前のように怠け者で醜い女は必要ない』と婚約破棄されたので、これからは辺境の王子様をお支えすることにいたします。
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