黒塗りの高級車で学校へ その③
「匂宮と?」
俺は匂宮を頭の先からつま先まで眺めた。
きれいな金髪と細い脚。そしてスレンダーなボディ。
「……何を見ているの?」
「いや、匂宮ってまだ中学生くらいだろ? 高校生の俺とどうやって同じクラスになるんだよ」
俺が言うと、匂宮は自分の身体――主に平らな胸部を見つめ、少し頬を膨らませた。
「一体私のどこを見て中学生と判断したのかは敢えて聞かないでおくのだけれど、別に気にしてないし、乳腺が未発達なのはステータスであり希少価値であるという名言があるということをあなたに教えておくわ」
「ああ―――そう。いや、質問に答えてもらってない気がするんだけど。俺と匂宮はどうやっても同じクラスになれないんじゃないのか?」
「答えはノーよ。私たちが向かっている高校――つまり、あなたが通うことになっている
学校は飛び級制度を採用しているの」
「飛び級?」
「つまり、高等部の試験をパスしている私は高校生ということになるのよ」
「高等部の試験をパス……!」
さすが匂宮財閥のトップ。
見た目は子供でも頭脳はそうじゃないってわけか。
「お嬢様は学院創設以来の秀才として、将来を期待されているのですよ」
麻里さんが俺の感情を代弁するように言った。
「そうだったのか。失礼なことを言って悪かったよ、匂宮」
「分かってくれればいいのよ。ほら、そろそろ学院が見えて来たわ」
匂宮が窓の外を指さす。
その向こうには、おとぎ話に出てくるような巨大な城があった。
城の周囲には大小さまざまな建物が――近代的なものから伝統のありそうな古風なものまで――立ち並んでいた。
「……え、あれが学校なのか?」
「そうよ。元々は匂宮家の研究施設だった場所を学校として改修したの。小学校から大学院までがあの敷地内に備わっているわ」
へえー、すごい。
あの敷地全体の光熱水費とか、どのくらいになるんだろう。
まあ、戦前から続く匂宮財閥なら、その程度の費用なんて子供の小遣い程度にしかならないか。
「ちなみに何て名前の学校なんだ?」
「『大鳥学院』―――理事を務める大鳥家の名前を冠した学院よ」
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