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【完結】冤罪で高校を退学させられた俺、大富豪の美少女令嬢に拾われ溺愛生活が幕を開ける。  作者: 抑止旗ベル
第一部「痴漢冤罪で借金まみれの俺がお嬢様にゲッチュされた件」
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この又野さわるには過去がある その②



 すべて秋川という男の言う通りにことが進んだ。


 養護施設に入れられた俺は、中学を卒業すると同時に迎えが来て、そのまま秋川が理事長を務める学園に入学することが決まった。


 俺に用意されたのは6畳一間とアパートと家具一式、そして口座に毎月振り込まれる生活費……。


 すべてが虚しく感じた。


 あの男は本当に俺が死ぬまで金を振り込み続けるだろう。


 そして俺はこれから、ただ生きているだけの人生を送るのだろう。


 漠然とそう思っていた―――。


「あんたいつまで寝たふりしてんの? もう昼休みよ」


 その声に、机に突っ伏していた俺は顔を上げた。


 俺を見下ろしていたのは秋川大彌(あきかわ だいや)―――母の葬儀に来ていたあの少女だ。秋川の娘であり、同じクラスの同級生でもある。


「お前には関係ないだろ」

「関係ないわけないでしょ。あんたがそういう風に暗い感じだと、クラスの雰囲気が悪くなるって言ってんの」

「そんなの別に……」


 俺の言葉を遮るように、大彌は大きなため息をついた。


「あーあ、あんたっていつもそうよね。二言目には、関係ないだろ、とか別にどうでもいいだろ、とかさ。あんたみたいなのを陰キャって呼ぶんでしょうね」

「うるさいな……」


 大彌はいつもこうだ。


 俺が頼んだわけもないのに、休み時間のたびにこうして話しかけてくる。


 初めて会ったときはこんな感じじゃなかったと思うんだけど……とにかく、鬱陶しいことは間違いない。


 俺は通学バッグから昼飯の入ったコンビニの袋を引っ張り出し、席を立った。


 一人になりたかったからだ。


 しかし大彌に腕を掴まれ、立ち止まるしかなかった。


「どこ行くのよ」

「どこでもいいだろ」

「お昼食べに行くんでしょ。待ちなさいよ。一人はかわいそうだから、あたしが一緒について行ってあげる。感謝しなさいよね」

「余計なお世話だよ」


 俺が言うと、大彌はあからさまに嫌な顔をした。


「はあー? 人が優しくしてあげてるのに、何よその態度。少しは直さないと友達出来ないわよ」

「それこそ余計なお世話だよ。大体お前、あの理事長の娘だろ。なんで俺に構うんだよ」

「……別に良いでしょ。なんで教えなきゃいけないのよ」


 ダメだ、話が通じない。


 俺は大彌に構わず、その場から立ち去ろうとした。


 しかし大彌は俺の手を握ったまま放そうとしない。


「おい、放せよ」


 手を解こうとすると、大彌は俺を睨みつけた。


「どうしてもあたしの言うことが聞けないのね」

「なんで俺がお前の言うことを聞かなきゃいけないんだよ」

「あ、そう。あんたあたしにそんな態度取るんだ」

「は?」

「分かったわよ。どうしてもいうこと聞けないなら、無理やりにでも聞かせてあげる」


 嫌な予感がした。


 が、その直後にはもう、大彌は掴んだ俺の手を掲げ、声を上げていた。


「又野くんが私に痴漢しましたー!」


 ……は?


 教室にいた生徒たちの視線が一斉にこちらを向く。


「い――いやちょっと待てよ。俺がそんなこと」


 するわけない。


 するわけないんだ。


 だけど、それを言ったところでこいつらは、俺の言うことなんて信用しない。


 大彌は理事長の娘でありクラスのリーダー的な存在。対する俺はいつも教室の隅で黙っているだけの人間。


 どちらの言っていることが受け入れられるかなんて、比べるまでもないことだった。


 ああ、はいはい。分かってたよ。


 このクラスにとって俺は邪魔な存在。


 いや、クラスにとってというだけじゃない。この学校にとって――ひょっとすると世界そのものにとって。


 今すぐ世界滅びねえかなあ、なんて思っていると、教室に駆け込んできた教員たちに無理やり立ち上がらせられ、俺は理事長室へ連れていかれた。






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『お前のように怠け者で醜い女は必要ない』と婚約破棄されたので、これからは辺境の王子様をお支えすることにいたします。
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