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知らない、天井 その①


 目を覚ますと、俺はキングサイズのベッドに横になっていた。


「知らない天井だ……」


 天井といっても、部屋の天井じゃない。ベッドの天井――いうなれば天幕だ。


 一体俺はどうしてこんなところで寝てるんだっけ。

ふわっふわの布団を眺めながら思案していると、徐々に昨日の記憶が蘇って来た。


 高校退学になって、匂宮と会って、ヘリに乗せられて―――そうだ。


 ベッドから起き上がり、テニスコートくらいはありそうなバカでかい部屋の、バカでかい窓のカーテンを開けた。


 透き通るような窓ガラスの向こうにはすさまじい広さの庭園があった。左右対称に植えられた庭木は幾何学模様を描いており、ええと、なんかこういう庭を歴史の教科書で見たことある気がする……。


「そうか、俺、匂宮の屋敷に連れてこられたんだった……」


 ようやく記憶が戻った。


 夕飯はフルコースみたいなものを食べたような、食べてないような……とにかく現実味が無くて、昨晩はメイドさんに案内されるままこの部屋に通され、そしてよく分からないまま就寝したのだった。


 で、今に至るというわけだ。


 にしても広い部屋だな。俺が住んでいた部屋なら5~6個くらいは余裕で入りそうだ。


 家具はベッドと机と……ソファ? え、テレビもあるじゃん。壁に取っ手がついてるけど、あの向こうはクローゼットだったりするのだろうか。


 なんだこのスイートルームみたいな部屋。もちろん俺はスイートルームなんて泊まったことないから想像に過ぎないけど……。


 ルームサービスとか呼べるんだろうか。内線も探したらあるのかもしれない。


 新たな発見がありそうで部屋の中をうろうろしていると、ドアがノックされる音がした。


「又野くん? 起きているの?」


 匂宮だ。


 俺はドアを開けた。


 俺を見て、匂宮が微笑む。


「おはよう、又野くん」

「ああ、おはよう。それにしてもすごい屋敷だな。俺、本当びっくりしたよ」


 言いながら匂宮の姿を見て、俺は思わず息を呑んだ。


 匂宮は薄手のキャミソールにカーディガンを羽織っただけという服装だったからだ。


 細く長い脚が太腿まで露わになっていて、ゆるい襟元からは白い肌が覗いていた。


 俺の視線に気づいたのか、匂宮がかすかに頬を赤く染め、カーディガンの襟を握る。


「そ、そんなに見られると、さすがに恥ずかしいわ」

「あ、ご、ごめん。いやでも、良いのか? こんな立派な部屋に泊めてもらっちゃって」


 俺が言うと、匂宮は照れ隠しのように金髪を耳にかけ、


「何も気にする必要はないのよ。私はただ、あなたが幸せを感じてくれればそれでいいの」

「そうは言っても、俺はただカップ麺をあげただけ―――」


 俺の口を塞ぐように、匂宮は人差し指を俺の唇にあてた。


「誰かにとっては何気ないことでも、それが誰かにとって一生の恩になるということもあるのよ。ところで又野くん、昨日はお風呂に入る余裕もなかったんじゃないかしら」

「風呂?」


 ……言われてみれば確かに、風呂に入った記憶がない。


 ちょっと待ってそれって不潔すぎない? 女の子の家に泊っておいて、風呂入らずベッドで寝てたとか……。


 あまりの恐ろしさに、俺の背中を冷たい汗が伝った。


 その汗さえも不潔な感じがして少しイヤだった。



第二部の始まりです!!

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『お前のように怠け者で醜い女は必要ない』と婚約破棄されたので、これからは辺境の王子様をお支えすることにいたします。
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